13 雪を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
△名称
冬嵐にふかれてちるか六花の 手折袖にも雪のかゝれば(蔵玉和謌集 冬)
やすみしゝ わが大王オホキミ 中略 たまかぎろ 夕去り来れば み雪ふる あきの大野
オホヌに 下略(萬葉集 一雑歌)
松かげの浅茅アサヂの上の白雪を けたずておかむ言へばかもなき(同 八冬雑歌)
わがそのゝすもゝの花か庭にちる はだれのいまだのこりたるかな
(円珠庵雑記 萬葉十九)
はだれ雪あだにもあらできえぬめり 世にふることや物うかるらん
(夫木和歌抄 十八雪 主殿)
△沫雪アハユキ
しはすにはあは雪ふるとしらぬかも 梅の花さくつゝみてあらで
(袖中抄 十六 萬葉集八)
沫雪のほどろほどろにふりしけば 平城ナラの京ミヤコしおもほゆるかも
(萬葉集 八冬雑歌)
あわ雪のたまればかてにくだけつゝ 我物思ひのしげき比かな
(古今和歌集 十一恋 よみ人しらず)
△雪気
またれつる雪げかと社思ひつれ いまだ時雨の雲にぞ有ける(頼政卿集 冬)
はれくもりふりもつゞかぬ雪雲の あふさきるさに月ぞさえたる
(夫木和歌抄 十八雪 後一条入道関白)
△初雪
はつゆきはちへにふりしけこひしくも おほかるわれはみつつしぬばむ(萬葉集 二十)
初雪にかきあつめてぞきこえあぐる おほみや人のけさのありかず
(夫木和歌抄 十八雪 家長朝臣)
△降雪
わが里に大雪ふれり大原の ふりにしさとにちらまくは後ノチ
わが岡のおかみに言ひてふらせたる 雪のくだけしそこにちりけむ
(以上 萬葉集 二相聞)
天下アメノシタすでにおほひてふる雪の ひかりを見ればたふとくもあるか(同 十七)
大宮の内ウチにも外トにもめづらしく ふれる大雪なふみそねをし(同 十九)
数ならぬ身は水のうへの雪なれや 涙のうへにふれとかひなき
水のうへに雪は山ともつもりなむ うきてのみふる人のかいなさ
(以上 空穂物語 菊の宴)
おもひきや花こそ雪とちるうへに かさねて雪の積べしとは(看聞日記)
ながめにはあかぬ箱根のふたご山 誰がこす嶺のみ雪なるらん(雲萍雑志 三)
△雪吹フブキ
雪つもるみねにふゞきや渡るらん こしのみ空にまよふしら雪
(千載和歌集 六冬 二条院御製)
ひとりぬる宿はふゞきにうづもれて いはのかけみちあとたえにけり
(夫木和歌抄 十八雪 俊頼朝臣)
△雪棹
こしの山たてをくさほのかひぞなき 日をふる雪にしるし見えねば
はつ雪のしるしのさほはたてしかど そことも見えずこしのしら山
(以上 夫木和歌抄 十八雪 大炊御門右大臣家佐)
△以雪作雑物形
なでしこは秋咲くものを君がいへの 雪の巌イハホにさけりけるかも
雪島ユキジマの巌にたてるなでしこは ちよにさかぬか君がかざしに
(以上 萬葉集 十九)
わたつみも雪げの水はまさりけり をちの島々みえずなりゆく
(拾遺和歌集 十七雑秋 中務のみこ具平親王)
いにしへの鶴の林のみゆきかと 思ひとくにぞあはれなりける
(新拾遺和歌集 十七釈教 瞻西上人)
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