09 霧を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△名称
真十鏡マソカガミ照るべき月を白妙の 雲かかくせる天津アマツ霧キリかも(萬葉集 七雑歌)
 
秋山のふもとをこむるうす霧は すそ野の萩の籬なりけり
                         (千載和歌集 四秋 藤原伊家)
 
思ひ出づる時はすべなみ佐保山サホヤマに 立つ雨霧アマギリのけぬべくおもほゆ
                              (萬葉集 十二相聞)
 
むら雨の露もまだひぬ槙の葉に 霧立のぼる秋の夕ぐれ
                        (新古今和歌集 五秋 寂蓮法師)
 
△霧以時為名
山里の哀をそふる夕ぎりに たちいでん空もなきこゝちして
山がつのまがきをこめてたつ霧も 心空なる人はとゞめず
                         (以上 源氏物語 三十九夕霧)
 
ぬばたまの夜霧ぞ立てるころもでの 高屋タカヤのうへにたなびくまで(萬葉集 九雑歌)
 
しぐれにも雨にもあらぬ初霧の たつにも空はかきくもりけり
                         (古今和歌六帖 一天 みつね)
 
心みに我恋めやはをともせで ふる秋ぎりにぬるゝ袖かな
                         (夫木和歌抄 十三霧 謙徳公)
 
春霞かすみていにしかりがねは 今ぞ鳴なる秋霧の上に
                       (古今和歌集 四秋 よみ人しらず)
 
九月ナガツキのしぐれの雨の山霧の いぶせきわがむね誰を見ばやまむ
                              (萬葉集 十秋相聞)
 
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに 顕れ渡るせゞのあじろ木
                        (千載和歌集 六冬 中納言定頼)
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