05 月を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△名称
月読ツキヨミの光りに来ませあしひきの 山をへだてゝ遠からなくに(萬葉集 四相聞)
 
山のはのささらえをとこ天原アマノハラ とわたる光り見らくしよしも(同 六雑歌)
 
天にます月読をとこまひはせむ 今夜コヨヒの長さ五百夜イホヨつぎこそ(同)
 
み空ゆく月読をとこ夕さらず 目には見れどもよるよしもなし(同 七譬喩歌)
 
夕星ユフヅツもかよふ天道アマヂをいつまでか 仰アフぎて待たむ月人ツキヒトをとこ
                                (同 十秋雑歌)
 
天の海に月の船うけかつらかぢ 懸けてこぐ見ゆ月人ツキヒトをとこ(同)
 
△三日月
椋橋クレハシの山を高みか夜ごもりに 出で来る月の光りともしき(萬葉集 三雑歌)
 
月立ちてただ三日月の眉ねかき け長く恋ひし君にあへるかも(同 雑歌)
 
振りさけて若月ミカヅキ見れば一目見し 人の眉ひきおもほゆるかも(同)
 
みか月のわれては物を思ふとも 世にふたゝびは出るものかは(古今和歌六帖 一天)
 
山のはにあかで入ぬるゆふ月夜 いつありあけにならんとすらん
                       (金葉和歌集 三秋 大江公資朝臣)
 
宵のまに仄かに人をみか月の あかで入りにし影ぞ恋しき(同 七恋 藤原為忠)
 
夕暮の雲にほのめく三日月の はつかなるより秋ぞ悲しき
                       (風雅和歌集 五秋 権大納言公宗)
 
△弦月
てる月を弓はりとしもいふ事は 山べをさしていればなりけり(大和物語 上)
 
ほとゝぎす名をもくもゐにあぐるかな
ゆみはり月のいるにまかせて(平家物語 四)
 
△望月
鏡なす 見れどもあかず 三五月モチヅキの いやめづらしみ おもほしし 君とをりをり
いでまして 遊びたまひし 下略(萬葉集 二挽歌)
 
望月の 満ちるおもわに 花のごと ゑみて立てれば 下略(同 九挽歌)
 
十五日モチノヒに出でにし月のたかたかに 君をいませてなにをかおもはむ
                           (同 十二古今相聞往来歌)
 
ゆきむかふ 年のを長く 仕へ来て 君が御門を 天ソラのごと 仰ぎて見つゝ かしこ
けど 思ひたのみて 何時しかも 日たらしまして 十五月モチヅキの たゝはしけむと 
下略(同 十三挽歌)
 
難波潟塩みちくれば山のはに 出る月さへみちにけるかな
                         (古今和歌六帖 一歳時 貫之)
 
△十六夜月
ゆくりなくあくがれ出しいざよひの 月やおくれぬかたみなるべき(十六夜日記)
 
△立待月
我門をさしわづらひてねるをのこ さぞ立待の月もみるらん(新撰六帖 一 家良)
 
△居待月
わたつみは あやしきものか 淡路島アハヂシマ 中に立ておきて 白浪を いよにめぐら
し ゐまち月 あかしの門トゆは 下略(萬葉集 三雑歌)
 
我のみぞねられざりけるかるもかく ゐまちの月の程はへぬれど(新撰六帖 一 家良)
 
△寝待月
昨日こそねまちもせしか春のよの こよひの月をいかゞ見るらん(空穂物語 梅の花)
 
君まつとおきたるわれも有ものを ねまちの月のかたぶきにけり(古今和歌集 一天)
 
ねてまちしねまちの月のはつかにも あひみしことをいつかわすれん
                            (古今和歌六帖標注 一)
 
君をのみ起ふしまちの月かげは やちよもこゝに有明をせよ(古今和歌六帖 五雑思)
 
いかにせん山のはにだにとゞまらで 心のそこにいでん月をば
                     (後拾遺和歌集 十五雑 大納言道綱母)
 
さもこそは寝待の月の頃ならめ 出でもやられぬ雲の上哉
                      (続古今和歌集 十七雑 承仁法親王)
 
夜がれそむる寝待の月のつらさより 廿日の影も又やへだてむ
                      (風雅和歌集 十一恋 前大納言為兼)
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