03 方角ハウガクを詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△名称
やすみしし わご大王オホキミ 中略 日本ヤマトの あをかく山は 日の経タテの 大御門オホミ
カドに 春山と しみさび立てり 畝火ウネビの このみづ山は 日の緯ヨコの 大御門に
みづ山と 山さびいます みゝなしの おをすが山は そともの大御門に よろしなへ
神カムさび立てり 名ぐはし 吉野エシヌの山は かげともの 大御門ゆ 雲井にぞ 遠くあ
りける 下略(萬葉集 一雑歌)
 
やすみしゝ わが大王の きこしめす そともの国の 真木マキ立つ ふは山越えて こ
ま剣 わざみが原の かり宮に あもりいまして 天下アメノシタ 治め賜ひ をす国を 定
め賜ふと 下略(同 二相聞)
 
△東
東ヒムカシの野ヌに炎カギロヒの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ(萬葉集 一雑歌)
 
月も日もまづ出そむる方なれば あさゆふ人のうちながめつゝ
                       (夫木和歌抄 十九東 後京極摂政)
 
△西
百モモしぬの みぬの王オホキミ にしの厩ウマヤ 立てゝ飼ふ駒 ひむがしの 厩立てゝ飼ふ駒
下略(萬葉集 十三挽歌)
 
おなじえをわきて木のはのうつろふは 西こそ秋のはじめなりけれ
                       (古今和歌集 五秋 藤原かちおむ)
 
秋風も入日の空もかねの音も あはれはにしにかぎる也けり
                       (夫木和歌抄 十九西 後京極摂政)
 
△南
おほなむち すくなひこなの 神代より 中略 南吹き 雪げはふりて いみづがは 
流る水沫ミナワの よるべなみ さぶるその児コに 中略(萬葉集 十八)
 
たちのぼるみなみのはてに雲はあれど てる日くまなき北のおほ空
                         (夫木和歌抄 十九南 定家卿)
 
△北
きた山にたなびく雲の青雲アヲグモの 星離れゆき月も離れて(萬葉集 二挽歌)
 
日かげみぬかた枝は雪にとぢながら かつがつにほふまどの梅がへ
                             (夫木和歌抄 十九北)
 
△艮ウシトラ
百敷や大内山のうしとらに 織部の司あやたてまつる(夫木和歌抄 十九艮 光俊朝臣)
 
△巽タツミ
わが庵イホリは都のたつみしかぞすむ よをうぢ山と人しいふなり
                       (古今和歌集 十八雑 きせん法し)
 
△坤ヒツジサル
みちのくの白河こえて別にし ひつじさるさる行どはるけし
                        (夫木和歌抄 十九坤 恵慶法師)
 
△乾イヌイ
はるかなる都のいぬゐわが宿は 大内山のふもとなりけり
                       (夫木和歌抄 十九乾 衣笠内大臣)
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