083 「高見山」 ○吾妹子ワギモコを いざ見の山を 高みかも 大和の見えぬ 国遠みかも 石上大臣イソノカミノオホマヘツギミ・巻一 − 四四 高見山は大和と伊勢の境に聳える気品ある山で、万葉の「いざみの山」の山はこの高 見山かと云われています。 「わが妻を見ようと思うが、そのいざみの山が高いであろうか、国が遠いからであろう か、大和の国の見えないことよ」。伊勢から大和を見るのに、美しい山が障害となった のでしょう。 この歌の左注には朱鳥六年、中納言の三輪朝臣高市麿が、伊勢にお出でなる持統女帝 を「農作の先に動くべからず」と二度も諌め留めたとあります。天皇が農繁期に伊勢に お出でになることは街道の農民に大きな負担を掛けると云うのです。 しかし女帝は高市麿の諌めを振り切って伊勢に幸しました。女帝は二十年毎に行われ る伊勢神宮の造営がありますので、その様子を目の当たりの見るため、無理を押して行 かれたとも云います。そご後数年後に始まった藤原宮建設のために、宮殿作りの技術者 を探しに行かれたとも云います。[次へ進む] [バック]