40 日本人の創った色(緑)
 
〈緑〉
 見わたせば柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける(素性法師)
 
と『古今和歌集』にあります。柳の色は動く色です。葉の表を柳色、葉の裏の白っぽい
色を葉裏色(裏柳、裏葉柳とも)と云います。
 新緑の季節は、萌黄モエギ色、若葉色、若草色、若緑色、浅緑色、また田圃に植えられ
た早苗は若苗色、苗色となります。
 
 筍はやがて瑞々しい若竹色に生長し、更に青竹色、歳月を経て老竹色、囲炉裏端や天
井で燻されて煤竹色になります。
 常緑樹の代表が「松」です。不老長寿を意味する千歳緑、永久不変を意味する語句を
付けた常磐トキワ色とか、深い色を表す松葉色などがあります。
 緑色は藍と黄を掛け合わせます。薄い藍に黄を濃く染めると萌黄色、鶸萌黄ヒワモエギ、
鶸色、若菜色、若苗色、若草色、柳色、裏葉色と云う、春未だ浅い季節の明るい緑色を
表すことが出来ます。
 反対に濃く藍を染めたものに黄を加えると、木賊トクサ色、蓬ヨモギ色、青緑色、鴬色、そ
して千歳緑、常磐色、松葉色へ、更に苔コケ色、海松ミル色へと深くなります。
 
 麹塵キクジンとは、麹に生える黴カビの色とされ、緑青にくすんだ抹茶を混ぜたような色
で、別名青白橡アオシロツルバミと云い、未だ青い団栗の実の色のようです。この麹塵は、天皇
だけが着用できる禁色です。
 この色を太陽の光の下に置きますと、真に色合いの深い緑色に輝くのです。つまり天
皇がお出ましになる場面には、この上なく効果的な色なのです。
 
 青々とした草木の緑も、四季の移ろいの中で次第に色を変えて行きます。秋が近付き、
葉が朽ちて行く状態を朽葉色クチバイロ、この朽葉色にも青朽葉、黄朽葉、赤朽葉などと古
人は見立てます。
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