31b  《色いろいろ》
 
   61東雲色シノノメイロ/曙色アケボノイロ
     夜が明け始めるころの,東の空にような色。▽明るい黄赤。
   62赤丹アカニ/鉛丹エンタン
     赤丹は,赤い土,赤い顔料,また,その赤色。鉛丹は,明るい
     赤橙色の顔料。鉛に硫黄・硝石を加えて,焼いて製した酸化鉛
     で,鉛ガラスの顔料,陶磁器の釉ウワグスリ,錆止めの塗料などに
     用いられる。▽黄味の赤。
   63丹ニ・タン
     赤色の顔料。一般に赤土・辰砂シンサ,また鉛丹などともいう。▽
     黄赤。
   64黄丹オウニ・オウダン
     梔子クチナシと紅花ベニバナとで染めた色。古来皇太子の袍ホウの色で,
     禁色キンジキの一つであった。▽黄赤。
   65真赭・真朱マソオ
     「赭・朱ソオ」に対して,天然の朱,辰砂シンサ・シンシャの意で用いた
     語。▽黄味の赤。中古の中頃以降,元の意味が分からなくなり,
     類推,解釈されて,赤色,蘇芳色を指したこともある。
   66赭・朱ソオ/赭ソオ・赭土ソボニ
     色の赤い土。また,その色。▽くすんだ黄赤。
   67代赭色タイシャイロ
     赤色の粉末の顔料,代赭のような色。代赭は黄土を灼熱して水
     分を取り去ったもの。また,赤鉄鉱を粉砕したものを用いる。
     ▽くすんだ黄赤。「赭」は赤土の意。代赭は,中国の山西省代
     州産のものを上品とするところからいう。
   68錆色サビイロ
     鉄錆のような色。鉄錆色。▽暗い灰黄赤。
   69赤錆色アカサビイロ
     鉄などの金属の表面に生じる赤茶色の,酷ヒドい錆のような色。
     ▽暗い黄赤。
   70ベンガラ色(弁柄色・紅殻色)
     酸化第二鉄を主成分とする黄色味を帯びた赤色顔料ベンガラを,
     塗料・染料などとした色。▽暗い黄味の赤。ベンガラは,イン
     ドの「ベンガル」で産出したところから。ベニガラ(紅殻)と
     もいう。
   
   71赤銅色シャクドウイロ
     赤銅のような色。▽暗い黄赤。赤銅は,金を3〜6%含む銅合
     金。これに銀1%程度加えたものにもいう。古く奈良時代から
     工芸品,銅像などに用いられた。硫酸銅,酢酸銅溶液などで処
     理すると,青黒い色彩を出す。紫金,烏金ともいう。
   72煉瓦色レンガイロ
     赤煉瓦のような色。▽暗い黄赤。煉瓦は粘土に砂や石灰などを
     加えて練り固め,型に入れて窯カマで焼いたもので,普通,粘土
     中の酸化第二鉄によって赤色を呈する赤煉瓦を指す。土木建築
     材料として壁,道路,窯などに広く用いられる。
   73土器色カワラケイロ
     土器のような色。▽くすんだ黄赤。土器は釉ウワグスリを掛けない
     で焼いた陶器で,古くは食器として用いたが,後,行灯アンドンの
     油皿などに用いられた。
   74バーントシェンナ
     焼いたシェナ土の意で,シェナ土は酸化鉄,粘土,砂などの混
     合した顔料。その顔料による色をいう。▽くすんだ黄赤。
   
   〈茶系の色〉
   
   75茶色チャイロ/ブラウン
     茶の葉を蒸して使う,茶染の色を言ったところから。▽暗い黄
     赤。
   76葡萄茶・海老茶・蝦茶エビチャ
     茶色を帯びた葡萄ブドウ色。▽暗い黄味の赤。多く,この色の海
     老茶袴を着けたところから,明治三十年代の女学生を,葡萄茶
     式部などと言ったこともある。
   77焦茶コゲチャ/バーントアンバー
     ものが焦げたような色であるところから,濃い茶色,黒味がか
     った茶色をいう。バーントアンバーは,アンバー(褐色顔料の
     土)を焼いた色。▽暗い灰黄赤。
   78柿茶カキチャ
     茶色を帯びた柿色。▽くすんだ黄赤。
   79薄茶・樺茶カバチャ
     かば色を帯びた茶色。▽くすんだ黄赤。江戸時代,「樺茶染」
     が流行した。
   80江戸茶エドチャ
     薄い茶色の染め色。▽くすんだ黄赤。江戸時代前期の流行色で
     あったらしい。
   
   81丁字茶チョウジチャ
     茶色がかった丁字色。▽くすんだ黄赤。
   82枯茶・唐茶カラチャ
     黄色を帯びた茶色。▽くすんだ黄赤。
   83黄枯茶・黄唐茶キガラチャ
     丁字を煎じた汁に少量の灰汁アクを加えて発色させたもの。枯茶
     の黄ばんだ色の意から。▽暗い灰黄。
   84金茶キンチャ
     金色がかった茶色。古く,薄い赤味の白茶を言った。▽鮮やか
     な黄赤。
   85桑茶クワチャ
     茶がかった桑茶色。桑染色よりもやや暗い色をいう。▽くすん
     だ赤味の黄。
   86媚茶コビチャ
     黒味がかった濃い茶色。▽暗い灰黄。海松ミルと同じ楊梅ヤマモモの
     皮で染める。
   87鴬茶ウグイスチャ
     鴬の背の色に似て,褐色がかった黄緑色。▽暗い灰黄。江戸時
     代,女性に特に好まれた。
   88鶸茶ヒワチャ
     鶸色がかった茶色。▽灰黄。
   89藍海松茶アイミルチャ
     茶色の濃く黒ずんで藍色がかった色。茶がかった海松茶が藍色
     を帯びた色。▽暗い緑味の灰色。
   90御召茶オメシチャ
     鴬茶のやや黒ずんだ色。▽灰黄緑。「御召」は着物の意。
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