05 日本画への第一歩
《日本画の知識》06.09.23
〈日本画制作の手順〉
1 写生
○鉛筆,消しゴム,顔彩,筆など
写生は絵を描く手順の中で,最初に行う最も大切な作業です。
例えば,一輪の花の場合,花はどのような構造になっているか,
どのような向きで描くと美しいかなど,写生をすることによって
いろいろ分かってきます。
写生の段階でも,水彩又は顔彩で色を塗ってみたり,ときには
ある一部を細部まで描いて,細かいところの構造を確認したりし
て,自分の納得のいくところまで深入りすることもあるのです。
2 下図づくり
○薄美濃紙,筆,墨
写生をもとに,いくつかの構図を考え,色彩もつけてみます。
気に入る構図ができるまで描いてみます。この下絵がそのまま作
品になるといっても過言ではありません。
この下絵を本紙に臨写して,制作に取りかかることになります
が,臨写できないような細かいものを描くときは,下図シタズを作
ります。下絵に薄手の紙をあてて,墨の線で写していくのです。
3 本紙への転写
○念紙,硬い鉛筆又は編み棒,文鎮
下図ができましたら,念紙を用いて本紙に写し取ります。念紙
は,木炭をすり込んだもの,水干絵の具を塗ったものなどがあり
ますが,写す画面の色味,又は用途によって使い分けます。
下から,本紙,念紙(塗った面を下向き),下図の順に重ね,
硬い鉛筆などで,下図の線をなぞって転写します。
4 線描き
○筆,墨
念紙から写された線に沿って,毛筆で線描きします。筆は線描
き用の則妙筆,削用筆などを用います。普通,線は墨ではっきり
描きますが,後の彩色のことを考えて,薄墨や色の線で描く場合
もあります。
また線の種類も,鉄線描や肥痩線などがあります。乾いたら羽
根箒で,念紙から写された線を軽く払います。
5 地塗り
○胡粉,水干黄土,膠液,刷毛
地塗りとは,画面効果を考えて,紙地全体に下地色を塗ること
です。紙の地を生かしたいときは塗らないこともありますが,地
塗りをしますと,線描きの調子を柔らげたりする効果があります。
用いる色は絵に応じて異なりますが,一般に胡粉,黄土が使用
され,大抵平面的に刷毛で塗ります。
6 下塗り
○顔彩,水干絵の具,膠液,筆
一色で描く場合は別として,日本画ではあまり混色をしません。
これは絵の具の粒子や比重が異なるため,混ぜて塗っても分離し
てしまい,目的の色合いが得にくいからです。
このため,複雑な色彩を得たいときには重色といって,一色ひ
といろ色を重ねて塗っていく方法が採られています。例えば同じ
緑青を塗るにしても,下塗りを黄土にするか朱にするかでは,仕
上がりの効果が違います。この場合,黄土にしますと軽快な緑に
なり,朱にしますと重たい感じになります。
下塗りは複雑な色彩を得るためばかりでなく,発色をよくする
ために下塗りをするときもあります。例えば,直接紙の上に色を
のせるより,胡粉を塗ってから重色したりしますと,発色の効果
が一段とよくなります。濃色の場合,墨を塗ってから重色します
とずっと発色がよかったりします。描くものや目的に応じて,下
塗りの工夫をしてみて下さい。
7 上塗り
○顔彩,水干絵の具,岩絵の具,筆
下塗りの効果を一層引き出すために,重色をしながら濃度を上
げていく作業です。上塗りは,単色を重ねたり,複数色を重色し
て絵の具の濃度を高めます。単色の重色は,濃度が上がり強さが
増します。また複数色の重色は,微妙な色の変化や感じの違いを
出すことができます。絵の具の粒子の違いや,下地の紙のマチェ
ール(肌あい,材質),使う用具の違い,それに寝せて塗る場合
と垂らした塗る場合の違いなどによって,それぞれ異なる効果が
得られます。
このようにして重色をすることなより,いろいろな効果を引き
出して,絵を仕上げていきます。
8 仕上げ
○顔彩,水干絵の具,岩絵の具,墨,金箔,筆
初期の発想を具体化するために,ここまでいろいろな段階を経
てきました。最後に絵の中心になる部分を描き入れます。
線を用いない没骨仕上げにより,最終仕上げとすることもあり
ます。
線による最終仕上げは,最初,ものの輪郭を説明するためした
線描きとは目的を異にするもので,ものの構造,形や色彩を含め
たその人の生命感,精神性を表現した線にならなければなりませ
ん。また線は,装飾性を加味した線でもあるのです。
参考:「日本美術教育センター」
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