02a 日本画への第一歩
△絵の具
@岩ものの絵の具
岩石や岩石のようなものを砕いたもので,粒子が細かいほど色相
が淡く白っぽく,粒子が粗くなれば色相は濃くなる。水箕スイヒ
によって粒子を何段階かに分類する。
○天然岩絵の具
群青グンジョウ:岩群青のこと,古来よりあらゆる色の中で最も美
しく,原石は藍銅鉱で,天然の銅鉱が自然酸化して塩基性炭酸
銅になったもの。粒子の細かいものを白ビャク群青,続いて薄ウス
群青,粗いものを紺青コンジョウという。
緑青ロクショウ:緑青は,群青とともに古代から使われている,日本
画絵の具の中の代表的な一つで,主成分は群青とほぼ同じ,孔
雀石から採る。粒子の細かいものを白緑ビャクロク,粒子の粗いも
のを松葉緑青という。
群緑グンロク:群青と緑青とを混ぜたもの
焼群青・黒緑青:油気のないフライパンなどでかき混ぜながら強
火で焼くと,好みの色が得られる。
金茶石:茶色がかったくすんだ黄色の絵の具,焼くと美しい紅黄
色になる。
黒曜石コクヨウセキ:原石は黒色の透明な結晶体で,天然ガラスとも呼
ばれ,灰色の顔料
方解末ホウカイマツ:方解石を砕いたもので,白色の顔料
水晶末:水晶を細かくしたもので,透明な白色系の顔料
○盛り上げ絵の具
軽石を細かくしたもので,画面効果をきかすため盛り上げたり
するときに用いる。
雲母ウンモ:キラとも呼び,主に花崗岩に含まれ,薄い板状の結晶,
真珠色の光沢があり,胡粉や他の色に混ぜて使う。膠のききが
よくないので,剥落しやすい。
○新岩絵の具
新岩,合成絵の具,殆ど全色に近い不変色絵の具で,天然のも
のより色相に幅の広さを持ち,どんな中間色をも作られる。
美緑青・山吹・紅辰砂・岩群青・薄紫・岩緋・青茶緑・岩黒など
○水干絵の具
黄土オウド:古くからある絵の具の一つで,鉄鉱石,長石などが風
化した土から,水箕スイヒによって精製したもの。胡粉と同じく
乳鉢でよく空摺りカラズリし,膠液で練りながら溶いて使用する。
日本画では多用される。
朱土シュド:主成分は酸化鉄を多く含み,赤褐色の絵の具で,渋い
朱のような輝きのあるものが良い朱土
岱赭タイシャ:酸化鉄と少量のマンガンを含み,粒子が細かく溶けに
くい性質があり,粉末状のものと棒状に固めたものがある。
胡粉ゴフン:古代から日本画の重要な素材の一つ,白い色の表現と
して他の水干絵の具に混ぜて使われる。主成分は炭酸石灰で,
少量の燐酸石灰を含む。カキやハマグリなどから精製する。き
め細かく薄い小さな板状のものが上質で,最上品を飛切トビキリ
という。
○化合物顔料
朱シュ:朱は赤色絵の具の中でも最も古代から使われ,硫黄と水銀
の化合物で,粒子が細かいものほど黄味を帯びる。黄味の強い
黄口,赤味の強い赤口,茶味を帯びた古代朱,独特な色味の鎌
倉朱,焼いて黒色にしたものなど,用途の幅が広い。
朱は不変色として使われるが,銀箔,銀泥の上に朱を描くと,
硫黄と銀とが化合して硫化銀となるため,黒く変色する。
丹タン:硫黄と水銀の化合した赤土から作られた赤色で,橙ダイダイ
色系の顔料,空気に触れるだけで変色して,色相が一定しない
絵の具
その他:弁柄ベンガラ,辰砂シンシャ,鉛白エンパク,花緑青ハナロクショウ,洋
藍アイなど
○水絵の具
水絵の具には,顔彩棒絵の具,新日本画絵の具などがあり,粉
末の絵の具を膠で溶く面倒を省くために造られたもので,写生,
小品や,初心者向けの絵の具で,指又は濡れた筆で小皿に取っ
て水で適当に溶かして用いる。
顔彩カン゙サイ:小さな四角の陶器や鉄鉢の皿に,接着剤の入った顔
料を流し込んで乾かしたもの
緑青,群青,白緑ビャクロク,朱,胡粉ゴフンなど18種が市販されて
いる。
○レーキ顔料
体質顔料に定着させた顔料で,日光に当てると退色したり,次
第に変色していくものもあるが,安価である。水干絵の具とか
不変色顔料とかいっているが,通常の水干絵の具とは別もの
水干濃草,黄口若葉,水干紅梅,水干新橋,水干青紫など
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