38 文様のいろいろ〈様式〉
 
△果(穴冠+果)文カモン/帽額モコウ・木瓜モッコウ
 太い弧状の四弁で囲んだ文様で、中に唐花を描くものが基本形ですが、鳥などを描く
ものもあり、また五弁とするものもあります。
 外周の形が鳥の果(穴冠+果)(巣ス)の形とも、蜂の巣を象カタドったものとも、瓜を
輪切りにした形とも云います。
 
@果(穴冠+果)に霰カニアラレ
 織文で、霰文様の地に、果(穴冠+果)の文様を置いたものです。公卿の青年の束帯
 の表袴ウエノハカマなどに用います。
 
△八つ花形ヤツハナガタ
 円形の回りに花弁のような角カドが八つある形です。
 鏡は「八つ花前ヤツハナサキ」とも云い、「八つ花崎」とも書きます。また古鏡の形から「
鏡形」とも云います。
 
△卍・万字マンジ/紗綾形サヤガタ
 卍形の文様で、多くその連続模様を云い、「菱万字」「万字繋ぎ」「渦万字」など変
形、連続の文様が多い。
 江戸時代、舶来の絹織物の紗織サヤに多く用いられたところから「紗綾形」とも云いま
す。
 
△巴・鞆柄トモエ
 尾を長く引いた曲線の円頭を大きく表現した文様です。俗に波頭ナミガシラを図案化した
と云い、弓具の鞆トモの形象に酷似することによる呼称です。尾の曲線の方向によって左
巴、右巴があり、円頭の組み合わせによって二つ巴、三つ巴があります。巴の丸、巴波、
巴紋ハモンとも云います。
 
△安倍清明判アベノセイメイハン
 陰陽道の呪符の称を採った文様で、平安時代の陰陽博士安倍清明(921〜1005)の名に
よります。魔除けとして用いられます。清明鱗、清明九字、清明桔梗などとも云います。
 
△襷タスキ
 線などを斜めに打ち違えた文様で、「三重襷」「菱襷」「鳥襷」「竜胆襷」などいろ
いろの種類があります。
 
@三重襷ミエダスキ
 斜線の襷の中に菱ヒシを入れて三重とし、更に中央に花菱又は四つ菱を入れた文様です。
A鳥襷トリダスキ
 尾長鳥を唐花の周りに配して、輪違ワチガエとした文様で、公卿の若年者の指貫などに用
 い、近世は屏風の裏貼りの紙の文様に多く用いられました。
 
△立涌タテワキ・タテワク(タチワキ・タテワケ)
 縦に並ぶ曲線が、左右に膨フクらんだり凋シボんだりする空間を生み、それが段違いに並
ぶようにした縦筋タテスジ文様です。膨らませた中に雲や花を納めて、「雲立涌」「松立涌
」「菊立涌」「牡丹立涌」などと云い、袍ホウや指貫サシヌキの織文に用います。
 
△七宝シッポウ/輪違いワチガイ
 両端の尖った長楕円形を四つ繋ぎ合わせて円形状にしたものを七宝と称し、その連続
文様をも云い、「七宝繋ぎ」とも。中に花を配する「花七宝」が多い。また複数の輪を
重ねる輪違いの一種と見て、「輪違い」とも云います。
 因みに、輪違いの一形「四方襷シホウダスキ」が変化して「しっぽう」となったとも云いま
す。
 
△蜀江・蜀紅ショッコウ
 蜀江の錦の文様です。「蜀江の錦」(蜀江とも)は中国明代を中心にして織られた錦
で、わが国には多く室町時代に渡来しました。
 八角形の四方に正方形を連ね、中に花文・竜文などを配した文様を織り出したもので、
この文様を蜀江型と云い、種々の変型があります。
 
△繧繝・暈繝ウンゲン
 繧繝錦の畳の縁ヘリの文様で、連続する菱文が主で、その周囲にいろいろな色の筋を添
えます。菱文の他に縞文の繧繝縁もあります。
 
△高麗コウライ
 高麗錦の畳の縁の文様です。白地に黒の花文や襷タスキに花文の綾を用い、花文の大小に
よって大文ダイモン高麗、小文コモン高麗と区別します。
 
△絣・飛白・綛カスリ
 染めた糸(部分)と染めない糸(部分)を所々、一定の順序に従ってかすったように
して置いた文様です。経タテイトだけの縦絣、緯ヨコイトだけの横絣と、縦横絣とに分けられま
す。文様によって「十字絣」「井桁絣」「蚊絣」「亀甲絣」「絵絣」「矢絣」などがあ
ります。
 産地によって伊予絣、久留米絣、薩摩絣などと呼ばれます。
 
@蚊絣・蚊飛白カガスリ
 蚊が群がり飛んでいるような、極めて細かい絣の文様で、経緯の絣糸で十字形の文様
 を織りなすものが一般です。
A矢絣・矢飛白ヤガスリ
 絣の文様を矢羽根の形に表したもので、矢絣を崩して簡略にした文様を「矢絣崩し」
 と云います。
B亀甲絣・亀甲飛白キッコウガスリ
 亀甲形を織り出した絣の文様です。
C絵絣・絵飛白エガスリ
 線や幾何文様を主とする絣文様であって、特に花や鳥などの絵模様を織り出した絣を
 云います。
 
△小紋コモン
 布帛の地に星、霰、小花など種々の細かい文様を一面に染め出した小紋染の文様です。
 江戸時代の裃カミシモなどに行われ、現在も婦人の衣服地に多く見られます。
 小紋は大文に対する小形の文様で、言葉としては平安時代から見られますが、普通に
は小紋染のことを云います。
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