37a 文様のいろいろ〈幾何〉
△縞シマ
幾筋かの長い線が列をなした文様で、二種以上の色糸を用いて、縦又は横、若しくは
縦横に筋を織り出した織物の縞文様のことです。また、それに似た文様です。筋の現れ
方によって縦縞、横縞、格子縞に大別され、それぞれに様々な変形があり、固有の縞柄
の名称が与えられています。
①滝縞タキジマ
太い筋から次第に細い筋になっている縦縞文様です。また筋の太さを変えて大・中・小
と並べたものを間隔を置いて配する縦縞を「片滝縞カタタキジマ」と云います。
②子持縞コモチジマ
太い線に添って細い線を平行に配した、子持筋の縦縞文様です。太い縞の片側だけに
細い縞を添える「片子持」と、両側に添える「両子持」とがあります。
十六、七世紀頃に中国や南方から渡来した織物「間道カンドウ」が縞模様であったので、
縞のことを間道とも云います。
同じく舶来織物に「唐桟トウザン」があり、その文様に唐桟縞とか唐縞があります。
③大名縞・大明縞ダイミョウジマ
細かい縦縞の文様で、大名筋とも云います。また太い線に添って細い線を配した、細
かい縦縞の文様を「子持ち大名縞」と云います。
④棒縞ボウジマ/牛蒡縞ゴボウジマ
太い縞文様のことです。縞糸が三羽(糸六本)以上十羽(二十本)位までの太さの縦
縞で、その太さによって、大棒縞、中棒縞などと区別します。
⑤矢鱈縞ヤタラジマ
間隔や色の配列が不規則な縞文様のことです。縞織物のことで、残糸を用いて織った
ものが多く、また多くは縦縞物です。
⑥蹌踉縞ヨロケジマ
蹌踉織で織り出された縞文様です。蹌踉織は、経タテ又は緯ヨコの縞を織り出す糸を湾曲
させて、織物の表面に波状の瓢箪ヒョウタン様の形の縞文様(蹌踉縞)を織り出したもので
す。緯を湾曲させたものを緯蹌踉織、経を湾曲させたものを経蹌踉織と云います。
⑦御本手縞ゴホンテジマ/奥縞オクジマ
赤糸入りの縦縞の文様です。インドのサントメ(コロマンデル地方)から渡来した桟
留縞サントメジマの一種です。
⑧崩し縞クズシジマ
経タテイトと緯ヨコイトが、網代様に交互に表れる縞文様の呼び方です。一崩し、二崩し、三
崩しなどの種類があります。
⑨千筋センスジ
経タテイト一羽(糸二本)を一組とし、二羽(糸四本)隔てに配列する縦縞文様です。
⑩万筋マンスジ
濃淡二色の糸を、経一羽毎に交互に配列して織り出した、細かな縦縞文様です。
⑪金通キンツウ・キンドオシ
縞二本が一組となって、一定の間隔を置いて配される縦縞文様です。
⑫三筋立てミスジタテ
縞三本が一組となって、一定の間隔を置いて配される縦縞文様です。
△格子コウシ/格子縞コウシジマ
細い木や竹などを縦横に組み合わせた格子に因む文様で、碁盤の筋目のように筋を出
したものです。「格子筋」「格子柄」とも。
①大格子オオゴウシ
弁慶縞(後述)の大きいもので、小格子も参照。
大格子は、大きな角木を縦横に間を透かして組んだもの、またその間の升形の大きい
ものです。
②小格子コゴウシ
弁慶縞(後述)の小さいもので、大格子も参照。
小格子を織り出した地の厚い小袖を小格子厚板、小格子厚板の小格子に更に細目の筋
を縦横に織り込んだものを小格子目引と呼びます。
③三筋格子ミスジゴウシ/団十郎縞ダンジュウロウジマ
三筋の縞を縦横に組んだ格子文様です。歌舞伎俳優七世市川団十郎が定文三升ミマスを崩
して格子縞とした文様で、文化・文政(1804~30)期に流行した文様です。「団十郎格
子」「三升格子」とも。
④味噌漉し縞ミソコシジマ
味噌漉しの底の編み目に似て、細かな縦横の縞にところどころに太い縞を配したもの
です。味噌漉しとも。
⑤翁格子オキナゴウシ
太い格子の中に更に多くの細い格子を表した文様です。
⑥童子格子ドウジゴウシ
酒呑童子シュテンドウジの着衣の文様から出ました。太い格子に、細い平行した筋のある文
様で、子持縞の格子文様です。
⑦菊五郎縞キクゴロウジマ
江戸時代の歌舞伎俳優、三代目尾上菊五郎が用いて広まった格子縞の文様です。四本
の縞と五本の縞とを格子に組み、その目に「キ」の字と「呂」の字とを交互に置いて
「キ九五呂」とし、菊五郎の名を表しました。手拭や浴衣などに用いられる格子縞の
一種で、菊五郎格子とも。
⑧芝翫縞シカンジマ
四本の縦縞と鐶を繋いだ形を合わせた文様です。文化十一年(1814)、中村歌右衛門
(俳名芝翫)が狂言の衣装に用いてから流行しました。芝翫繋ぎとも。
⑨仲蔵縞ナカゾウジマ
江戸時代、歌舞伎の名優初代中村仲蔵が用い始めたことから一般化した縞文様です。
⑩鎌輪奴カマワヌ
鎌の形と輪(丸)と「ぬ」の字を配した文様です。「構わぬ」と読ませる洒落で、江
戸の町奴の間に流行しました。
⑪三津五郎縞ミツゴロウジマ
三筋の縞と大の字繋ぎの大形の縞文様です。歌舞伎俳優三代目坂東三津五郎が、家紋
の三つ大に因んでその衣装に用いたところから云います。三大縞ミツダイジマとも。
⑫六弥太格子ロクヤタゴウシ
三升ミマス繋ぎの格子縞の文様です。
⑬弁慶縞ベンケイジマ/碁盤縞ゴバンジマ
ほぼ同じ幅の縞と地を組み合わせた格子縞です。弁慶格子とも。
縞柄で、白と紺、紺と茶、又は紺と浅葱アサギなどの二種の色糸を、経・緯双方に使用
し、格子形に織ったものです。
○間道・漢島・広東カントウ・カンドウ
十六、七世紀頃、中国や南方から渡来した縞織物の文様、またその縞織物です。間道
織り、間道縞とも。
関連リンク [名物裂]
○唐桟トンザン/桟留縞サントメジマ
細番の諸撚モロヨリ綿糸で平織にした織物で、紺地に浅葱、赤、茶などの色合を縦縞に配
した文様で、羽織や着物に用いる色とりどりの縞柄を云います。
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