36b 文様のいろいろブック〈器物建造物など〉
 
〈自然〉
 
△雲クモ
 雲を型取った文様です。渦巻く雲を図案化した「霊芝雲レイシウン」や「雲立涌」「雲珠
ウンシュ」のほか,棚引く雲を図案化した「源氏雲」などがあります。雲文ウンモン、雲形クモガタ
 とも云います。
 
@雲立涌クモタテワキ・クモタチワキ
 立涌の間に雲形を配した文様です。上皇、親王、又は摂政の指貫サシヌキ、関白の袍ホウの
 文様に用いました。
A源氏雲ゲンジグモ
 州浜スハマ状に雲が棚引いている様を描いた文様のことです。また、大和絵で、画面の区
切りや装飾的効果、また遠近の表現などとして描かれる雲形をいいます。これを「絵雲
」呼ぶこともあり、また霞に見立てて「霞」と云うこともあります。
 平安時代の風俗を物語風に描いた源氏絵に多くみられるところから云います。
 
△稲妻イナズマ
 稲妻を型取り、屈折した直線によって構成した文様のことです。中国では雷文ライモンと
云い、特に、方形の渦巻状の文様を指すことがあります。
 また、菱形にした「稲妻菱イナズマビシ」もあります。
 雷文は、中国で古代から愛好され、特に土器、彩陶、銅器などに施され、今日も中国
料理の器によく見られます。
 稲妻は元「稲の夫ツマ」の意で、古代の農民の間では、穂が稲妻によって霊的なものと
結合し、穂を実らせると信じられていました。
 
△渦巻ウズマキ
 渦を巻いている文様や形、主に螺旋ラセン状に巻き巡る水の流れを云います。渦とも。
 
△水ミズ
 水が川に流れている様や、池などに溜まっている様を図案化した文様です。特に弥生
時代に盛行した文様の一つ「流水文」は、平行線の端部を屈折させてS字状に連ねた平
行曲線文様です。時代が下がるに従って「燕子花に水」「片輪車に水」「紅葉に水(竜
田川)」などいろいろな文様と組み合わされています。また、独特の様式を持った水文
様として「観世水カンゼミズ」があります。
 
@竜田川・立田川タツタガワ
 流水に紅葉モミジの葉を散らした文様のことです。「古今集-秋下・二八三」の「竜田河
 紅葉乱れてながるめりわたらば錦中やたえなむ〈よみ人しらず〉」によります。
 竜田川は、奈良県北西部生駒山地の東側を南流し、斑鳩イカルガ町で大和川に合流する川
 で、紅葉の名所として知られます。
A観世水カンゼミズ
 渦を巻いた水の文様です。能楽シテ方観世流の家元、観世太夫の紋所が渦巻文様であ
 るところから云います。
 
△波・浪ナミ
 波を図案化した文様です。おこりたった波が砕けようとして飛沫を上げているところ
 を描いたものが多い。静かな波は、への字形の連続文様です。
 
@立波・立浪タツナミ
 波の逆巻いている様子を図案化した文様です。江戸中期に流行し、町奴などの着物や
 食器などの絵柄として用いられました。
A波立涌ナミタテワキ・ナミタテワク
 立涌の中に波の文様を配したものです。
B青海波セイガイハ・セイガイナミ
 渦を四分したような形の文様を幾つも重ねたものです。雅楽「青海波セイガイハ」の舞楽
 のときに用いる、波形を描いた衣服の染文様に因む名称です。
 青海波は舞楽の中で最も優美華麗な曲とされ、舞人は二人、青海波の文様の下襲シタ
 ガサネに千鳥文様の袍ホウを着ます。
 
△海賦・海部カイブ/大海オオウミ
 海辺の様を図案化した文様のことです。また波や海松ミル、貝などの海岸の風物を図案
化して配したものをも云います。
 
△州浜・洲浜スハマ・スワマ
 州浜を上から見下ろしたような、周囲に出入りのある文様のことです。極度に図案化
したものを「州浜形」と呼び、特に近世では「三つ輪型」とも云います。
 州浜は、浜辺の入り込んだところ、州が出入りしている海岸を云います。
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