35 文様のいろいろ〈動物〉
△鶴ツル
ツル(鶴)を型取った文様です。
ツルは古、その端正な姿態から神秘的な鳥とされ、カメ(亀)と共に長寿の象徴とな
り、吉祥の鳥とされたところから、文様としても様々に用いられて来ました。
@松喰鶴マツクイヅル
ツルにマツ(松)の小枝をくわえさせた文様で、大陸伝来の花を口にくわえた花喰鳥
ハナクイドリの文様を和様化したものです。
A鶴菱ツルビシ
ツルの翼を広げた姿を菱形に図案化した文様で、鶴菱を繋ぎ合わせた文様を鶴菱繋ぎ
と云います。
B鶴の丸ツルノマル・ツルノマロ
翼を広げたツルの形を丸く環のように表現した文様です。
C雲鶴ウンカク
雲鶴とは、雲とツルを配した文様の名で、綾、錦などの袍ホウの文様に多く用いられま
す。一般に雲と鳥を配した文様を「雲鳥クモトリ」と云いますが、多くは「雲鶴」のこと
を指します。
その胴に雲と飛鶴の文様が象眼されていたことから、高麗時代の末期から李朝前期に
かけて焼かれた青磁の茶碗で、雲鶴青磁と云います。
△雀スズメ
スズメ(雀)を図案化した文様です。
スズメ、特に2羽のスズメが翼を広げた形を図案化した文様を「雀形スズメガタ」と呼び
ます。雀は竹と取り合わせて描かれることが多いようです。
屏風の裏絵に雀形の文様が多く描かれたところから、屏風のことを雀形とも呼びます。
@脹ら雀フクラスズメ
脹ら雀が羽を延ばした姿を、正面から見た形で図案化した文様です。
脹ら雀は,丸々と肥え太ったスズメの子、また寒気を防ぐため、全身の羽毛を脹らま
せてふっくらと見えるスズメです。
江戸末期以降の婦人の髪型の脹ら雀は、中央を締め、左右にもとどりを作るものです。
これは脹ら雀を型取ったもので、13、4歳から20歳位までの若い女性が結いました。
近代の若い女性向きの帯の結び方の脹ら雀も、これを型取ったものです。
中央を締め左右に輪を作る紐の結び方を、脹ら雀結びと云います。
A群雀ムラスズメ
飛んでいるスズメの姿を、数羽ずつ転々と染め出した文様です。
△千鳥チドリ
チドリ(千鳥)を図案化した文様です。
多数で群をなして飛ぶ様を表した文様を、特に「群千鳥ムラチドリ」とも呼びます。
「千鳥」は元々、多くの鳥、無数の鳥の意で、チドリが多数で群をなして飛ぶところ
からの名です。
列をなして飛ぶガン(雁)に対して、チドリは自由に群がり飛ぶ様が面白く、その様
が文様化されています。
△雁が音・雁金・雁カリガネ
ガン(雁)を図案化した文様です。
特に空遠く飛ぶガンの姿を型取った、「人」の字を逆さまにしたような文様を「遠雁
トオカリガネ・トオカリ」と呼びます。
「かりがね」は、「雁カリが音ネ」の意で、ガンのことです。「かり」はガンの鳴き声か
らの称と云われます。
△鴛鴦オシドリ・エンオウ
オシドリ(鴛鴦)を図案化した文様です。
雌雄が仲睦まじい習性から、二羽対で描かれることが多いようです。
△鸚鵡オウム
オウム(鸚鵡)を図案化した文様です。
特に2羽のオウムを向かい合わせにした丸文様を「向かい鸚鵡」と云い、近世、皇后
の唐衣の上紋ウワモンなどに用いられました。
わが国では通例、大形の白色種をオウムと呼び、西域の霊鳥とされました。
△孔雀クジャク
クジャク(孔雀)が尾を広げた姿を図案化した文様です。
また、雄の羽の上尾筒ジョウビトウの1本を文様化したものに「孔雀羽クジャクバネ文」があ
ります。
推古天皇6年(598)、新羅がクジャク1羽を貢献した記録があり、その後もしばしば
わが国に渡来していますが、数が少ないので珍鳥とされ、江戸時代、見せ物として客を
集めました。
△鶺鴒セキレイ
セキレイ(鶺鴒)を型取った文様です。
△山雀ヤマガワ
ヤマガラ(山雀)を型取った文様です。
ヤマガラは鳴き声もよく古来飼い鳥とし、馴らして「お神籤ミクジ引き」などの芸をや
らせました。
△燕ツバメ
ツバメ(燕)を型取った文様です。
古来、秋のカリ(雁)に対して春の代表的な渡り鳥として親しまれて来ました。
蝶と共に描かれる鳥は多くはツバメで、これを「蝶燕文」と呼びます。
△家鴨アヒル
アヒル(家鴨)を型取った文様です。
中国の陶器や銅器、またギリシャの陶器、ペルシャやジャワの更紗サラサなどにも見られ
ます。
△尾長オナガ
尾長鳥を型取った文様です。
ただし、今日オナガと特定される鳥ではなく、尾が長く美しい姿の鳥を抽象して創ら
れた文様で、鳳凰にも通じるものがあります。
△蝶鳥チョウトリ
蝶と鳥とを取り合わせた文様のことで、鳥は燕形をしたものが多く、それを多数散り
ばめた文様が、着物や典籍の表紙に多く使用されました。
△蝶チョウ
チョウ(蝶)を図案化した文様です。
その羽柄の美しいことから、特にアゲハチョウの文様が最も多く、また、芝や薄との
取り合わせが多いようです。形としては、丸く図案化した「蝶の丸」が多く、1匹の「
臥蝶フセチョウ」や2匹の向かい合う「向かい蝶」、3匹の「三つ蝶」4匹の「浮線蝶フセンチョウ
」などもあります。
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