34a 文様のいろいろ〈植物〉
 
△藤フジ
 フジ(藤)の花や葉などを種々に図案化した文様を云います。
 蔓、葉、花と全体を写実的に描き出した国宝「藤花文茶壷」(野々村仁清作)は有名
です。
 
@藤の丸フジノマル
 フジの花を円形に図案化した文様を云います。
 写実的な藤枝を丸く配したものや、図案化して2房に配するものなどがあります。8
 房を配するものを「八つ藤」と呼びます。
A八つ藤ヤツフジ
 フジの花の2房を対に組み合わせたものを4組配して、円形に囲んで図案化した文様
 のことです。
 中央に4弁花を配し、花房の付け根の捻れ方で「三ねじり」「四ねじり」などいろい
 ろあります。
 
△丁子・丁字チョウジ
 チョウジ(丁字)の実を型取った図柄の文様です。
 蕾を乾燥させたものを丁字、あるいは丁香と云い、古来、有名な香料の一つで、わが
国では正倉院御物に見られます。
 
@丁子唐草チョウジカラクサ
 チョウジの実と唐草を組み合わせた文様のことです。「長命草チョウメイソウ」とも云いま
 す。
 
△葵アオイ
 アオイ(葵)の葉、特にフタバアオイ(双葉葵)の葉を図案化した文様です。紋所は、
賀茂神社の神紋に由来し、種々の変形があり、徳川家の「葵巴アオイドモエ」はよく知られま
す。
 
@小葵コアオイ
 ゼニアオイ(銭葵)の花を図案化した文様のことです。
 
△松マツ
 マツ(松)の幹・枝・葉又は松笠を図案化した文様です。
 竹・梅と並んで吉祥文様の一つです。樹齢の若い小さい松の文様を「小松文」「若松
文」とも云い、正月の門松とするものを若松、正月の子ネの日に引いて遊ぶ松を小松と呼
んで区別します。樹齢を経た松は「老松オイマツ」と云います。
 マツは、わが国では神の依る木として門松などにされ、古くから長寿や慶賀を表すも
のとして尊ばれています。
 
@松唐草マツカラクサ
 マツの葉を配した文様のことです。狩衣カリギヌ類に使用します。
 3枝の松を四方に配し、間に唐草を入れた丸い文様を「松唐草の丸」と呼びます。有
 職文様で、小直衣や狩衣に用います。
A唐松カラマツ
 菊座状に群生するマツの葉を図案化した文様のことです。
 
△竹タケ
 タケ(竹)の幹、節、葉などを図案化した文様です。
 松、梅と並んで吉祥文様の一つです。また、梅・菊・蘭とともに四君子の一つです。取
り合わせの良いものとして、雀や虎と一緒に描かれることが多いようです。
 
@竹に雀スズメ
 竹に雀を配した文様です。紋所は、特に仙台伊達氏のものがよく知られ、「竹に雀」
 と云えば伊達家を指すこともあります。
A笹ササ
 タケの葉や枝などを型取った文様です。小形の竹笹類の笹は「根笹」と云います。ま
 た、雪を冠した「雪持ち笹」もあります。
 
△柳ヤナギ
 ヤナギ(柳)の木・枝・葉などを型取った文様です。
 「柳に燕」「柳に蹴鞠」「雪持ち柳」、また梅・桜など、様々なものと取り合わせた文
様があります。
 ヤナギのうち、シダレヤナギが特に文様として多く用いられます。
 
@柳に鞠ヤナギニマリ
 ヤナギに蹴鞠ケマリを配した文様のことです。蹴鞠の庭の東南にはヤナギを植えるのを通
 例としました。「柳に蹴鞠」とも。
 蹴鞠は古代以来、主に朝廷、公家の間で行われた遊技で、通常8人が皮の沓クツを履い
 て、鹿皮の鞠を足の甲で蹴り上げ、地に落とさないように受け渡しをするものです。
 庭の四隅には柳のほかに桜、楓、松を配しました。
 江戸時代の料理で、つまみ菜と里芋を入れた汁を「柳に鞠」と呼びました。また、素
 麺ソウメンに団子を入れた地方料理「柳に蹴鞠」があります。
 
△燕子花・杜若カキツバタ
 カキツバタ(燕子花・杜若)の花・茎・葉などを型取った文様です。
 カキツバタは湿地に生えるところから、水を配して描かれることが多いようです。尾
 形光琳の「八橋蒔絵硯箱」に描かれた燕子花文は特に知られています。
 因みに、「かきつばた」は「書付花カキツケバナ」の変化したもので、昔は花の汁で布を染
 めたところから云われます。
 
△菖蒲ショウブ
 ショウブ(菖蒲)の花・茎・葉などを型取った文様です。
 菖蒲革ショウブガワは、小文コモンの藍革(なめし皮を藍色に染めたもの)の一種で、京都の
 八幡の染革が著名であり、菖蒲の文様と解して尚武,勝負に寄せて多く武具に用い、
 尚武革、勝負革とも書きます。
 
△椿ツバキ
 ツバキ(椿)の花、葉、枝などを型取った文様です。
 ツバキは開花後、花全体がぽとりと落ちることを忌み、紋所としては殆ど使われませ
んでしたが、その派手な花は文様として様々に考案されています。
 因みに、ツバキの漢名は山茶、「椿」は春に咲く花木という意味で作られた国字です。
 
△土筆ツクシ
 スギナ(杉菜)の胞子茎を型取った文様です。
 「土筆」は、地下茎が出たスギナの胞子茎が毛筆に似ているところからの名です。
 
△橘タチバナ
 タチバナ(橘)の、葉と実とを組み合わせて図案化した文様です。
 紋所は橘姓(橘諸兄)の紋に始まると云われ、久世・井伊・黒田家などの紋となりまし
 た。
 
△蕨ワラビ
 ワラビ(蕨)の若芽を図案化した文様です。
 特に若芽の巻き上がったような曲線を「蕨手ワラビデ」と云い、古墳時代の銅鐸や太刀
の金銅装具、壁画などに見られ、弥生式前期の浮文・彩文としても用いられました。神輿
ミコシなどの飾り文様としても使用されます。また、ワラビを数本立ち並べたものに水を曲
線であしらった織文を「蕨水ワラビスイ」と呼びます。
 
△水仙スイセン
 スイセン(水仙)の花と葉を種々に型取った文様です。近世になってから文様として
用いられるようになりました。
 
△蒲公英タンポポ
 タンポポ(蒲公英)の花、茎、葉を型取った文様です。
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