24a 茶道陶磁その1
[こ]
香合コウゴウ:室町時代書院台子の茶湯では香炉の飾りに重点が置かれ,また聞香炉モンコウロ
を用いて席中で香を焚くことが屡々行われました。「君台観クンタイカン左右帳記サウチョウキ」
「御飾書」などにも香炉の記事には相当の紙数を割いていますが,香合については,
塗物香合の12種について記述がみられるに過ぎません。当時の書院茶に炉は未だ用い
られておらず,専ら風炉の扱いのみでしたので,今日のように陶磁器の炉用香合は採
り上げられてはいません。香合は台子や棚の上に羽箒ハボウキと共に飾られたりしたに過
ぎません。寧ろ五具足や七具足に附属するものとして扱われていたようです。利休時
代になって炭手前が茶事において必ず行われるようになりますと次第に香合の地位は
上がってきたといえます。炭道具中最も重要な道具となった香合は,唐物のみならず,
和物香合も採り上げられ,次第にその種類も多くなっていきました。また茶匠による
注文品や好み香合も現れるに到りました。
現在は風炉用として塗物・蒔絵・瓢フクベ・貝などの香合が,炉用として陶磁器など
の香合が使用されています。貝の香合などは炉・風炉共に用いられることがあります
が,練香ネリコウを用いる場合は香合を汚さないよう椿の葉を敷いて入れる習わしです。
炭手前が済んだことを表したり省略する意味から,香合を床に飾ることが今日では広
く行われるようになりましたため,一層香合に対する関心は高まったといえます。勿
論香合にも濃茶席に相応しいものと薄茶席用のみのものなどがあり,その区別は個々
について充分考慮する必要があります。
江戸末期に到り,巷間に用いられていました香合について,当時の茶人達はこれを
整理,評価を加えて優劣の判定を下し,その格付を行ったのが,安政2年(1855)刊
の「形物香合相撲番付表」です。
香合の分類
ア 焼物香合(形物香合から)
@交趾コウチ − 黄,緑,青,紫,白檀塗
A青磁 − 砧,天竜寺,七官
B染付 − 古
C呉須 − 藍
D祥瑞ションズイ − るり
E赤絵 − 呉須
F志野・黄瀬戸
G織部 − 赤,青,鳴海
H京焼 − 仁清,乾山,粟田・清水・音羽
I島物 − 西欧各窯,宋胡録スンコロク
イ 塗物香合
@錫椽スズブチ − 丸・角・長角,蒔絵 − 蒔絵
A鎌倉彫 − 彫物
B根来ネゴロ塗 − 朱・黒
C堆朱ツイシュ・堆黒・堆黄・紅花緑葉コウカリョクヨウ・ハシカ彫・存星ゾンセイ・蒟醤キンマ −
彫物
D青貝・螺鈿ラデン
E貝・卵
F古材・竹・篭地 −藍胎ランタイ
ウ 石・銀・鉄・モール等による香合
エ 好物香合 − 素材は上記に準ず
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