08c 生素地の装飾その2
W 練上げ
異なった土を重ね合わせて揉み込むと,意外性の美しい文様が生まれますので,こう
したことを装飾技法としたのが練上げ手です。本格的な鶉ウズラ手のほか,揉込み,木理
手,網代アジロ手,墨流し,市松手などがあります。
1 鶉手
(1) 鶉手の素地土
鶉手の素地土調合例
原料 白 赤その1 赤その2
信楽土 100 70〜60 80
黄土 − 30〜40 20
紅柄 − − 2〜5
黄土や紅柄の量が多くなると収縮率が大きくなり,またこれらの量の加減により濃手,
中手,薄手などの色合いができます。
(2) 鶉手の作り方
@2色の粘土を別々に揉んで,やや大きめの塊を作ります。
A所定の厚さに切って土板("へご"又は"たたみ"という)を作ります。
B各土板の表裏に泥を塗って,交互に積み重ねてしっかり密着させます。
Cこれをビニール袋に入れて2〜3日間室に置いて寝かします。
Dたたみを取り出して厚さ15o位の鈍刀(木製)で切ると,切断面に鶉手文様がで
きます。鈍刀の厚さによっていろいろな鶉手文様を作ることができます。
E鶉手文様のたたみを型に被せて成形します。
(3) 亀裂を防ぐ方法
@素地土は柔らかめがよいようです。
A2種のたたみ土を重ね合わせたとき,接合面に凹凸を付けて泥を塗り,摺り合わ
せるようにしてよく押さえます。
B2種の土と泥などの水分が均一になるように,重ね合わせたたたみ土をビニール
袋に入れて2〜3日間室に置いて寝かせます。
C成形後の作品も室に入れるなどして,徐々に乾かします。
2 市松手
市松イチマツ手は鶉手と共に練りみの代表的な技法です。
@まず鶉手のように,白と赤(又はいろいろな色)のたたみ土を作って,交互に重
ね合わせます。
A重ね合わせたたたみ土を横にして,へご板を当てて切糸で所定の厚さに切ります。
B切ったたたみ土を一コマずつずらして,同様な方法で積み重ねます。
C積み重ねた状態で,再びへご板を使って所定の厚さに切ります。
D出来上がったたたみ土(市松手)を所定の石膏型に入れて,形を作ります。
練上げ手に施す釉薬は,土味を活かすために一般に透明釉を使いますが,白赤土の練
込み文様のときは,淡い鉄釉(飴釉)を施しますと,重厚な格調の作品が焼き上がりま
す。
X 磨き(朱泥・烏泥・黒陶)
磨きは古来,土器づくりの共通した手法の一つです。この技法は元々装飾よりも,水
漏れを防ぐもくてきで土器の表面を磨いてなめらかにし,焼成の折に燻しイブシを掛けて
煤煙を滲み込ませ,表面を布や木の葉で磨いて滑らかにするなど,高温度の焼き締めや
施釉技術を知る以前における,緻密なやきものを作る技術でした。こうした技術を実用
と装飾面で活かしたものに常滑の朱泥や烏泥があります。
朱泥とは,鉄分の多い粘りのある粒子の細かい粘土(朱泥土)で成形し,七分乾きの
頃合に素地面を椿の葉にように厚い滑らかなもの(薄いビニール板など)で丁寧に磨き
ます。これを乾燥さらた後に,SK6〜8で無釉の酸化炎OFにより徐々に焼き上げたもので
す。
紫泥とは朱泥を還元炎RFで焼いたもの,烏泥とは鉄分のほかにマンガンの含んだ土を
用いたものです。
茶の湯で用いる白泥の土風呂は,磨きと燻しの技法によるものです。きめ細かい白土
を成形し,七〜八分乾きの頃合に瑪瑙メノウで磨き,ときには部分的に雲状の燻し文様を付
け,あまり高くない温度で焼き上げます。
Y 練込みに用いる色素地
色素地の調合例と色合い(信楽土の場合)
着色材(商品名) 無釉のとき 土灰釉を施したとき
1% 5% 10% 20% 1% 5% 10% 20%
酸化銅 灰色 黒灰色 − − ヤヤ黒織部 濃黒灰色 − −
二酸化マンガン 灰白色 灰褐色 − − ヤヤ黒クリーム 灰黄褐色 − −
酸化クロム 淡灰色 鼠色 − − 淡褐色 帯黄鼠色 − −
酸化ニッケル 淡茶色 鼠色 − − 淡茶色 茶色 − −
酸化コバルト 淡灰青色 孔雀色 − − 淡青色 暗青色 − −
陶試紅 − − 淡桃色 桃色 − − 淡桃色 濃桃色
ピンク − − 帯桃白色 灰色 − − 帯桃白色 淡桃白
クリ゙ーンヒワ − − チョコレート色 同左 − − チョコレート色 同左
大正黒 − − 灰黒色 黒色 − − 灰黒色 黒色
バナジウム黄 − − 淡黄色 − − − ヤヤ黒黄色 −
チョコレートB7 − − 灰茶色 − − − 茶色 −
赤茶 淡灰茶色 − − − 帯乳淡茶色 −
ピーコックA − − 孔雀色 − − − 孔雀色 −
トルコ青 − − 淡トルコ青 − − − トルコ青 −
黄 No.100 − − 淡黄色 − − − 黄色 −
チタン黄 − − 灰橙色 − − − 橙色 −
色素地の調合例と色合い(信楽土の場合)続き
着色材(商品名) ガラス釉を施したとき マット釉を施したとき
1% 5% 10% 20% 1% 5% 10% 20%
酸化銅 ヤヤ黒織部 灰黒地 − − 帯黄灰色 濃灰黒色 − −
結晶 銀結晶
二酸化マンガン 淡黄褐色 褐色 − − ヤヤ帯乳 − − −
淡黄色
酸化クロム 褐色 濃褐鼠色 − − 褐色 濃鼠色 − −
酸化ニッケル 茶色 濃褐色 − − 帯乳茶色 同左 − −
酸化コバルト コバルト色 濃青色 − − 帯乳青色 同左 − −
陶試紅 − − 淡桃色 桃色 − − 桃色 濃桃色
ピンク − − 帯桃白色 淡桃白色 − − 帯桃白色 淡桃灰色
クリ゙ーンヒワ − − チョコレート色 同左 − − チョコレート色 黒味チョコ
大正黒 − − 黒青色 同左 − − 灰黒色 同左
バナジウム黄 − − 淡茶黄色 − − − ヤヤ黒黄色 −
チョコレートB7 − − 茶色 − − − 帯乳茶色 −
赤茶 淡茶色 − − − 帯乳茶色 −
ピーコックA − − 帯青孔雀色 − − − 濃孔雀色 −
トルコ青 − − 灰トルコ青 − − − トルコ青 −
黄 No.100 − − 橙色 − − − 黄色 −
チタン黄 − − 黒味橙色 − − − 帯乳橙色 −
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