07d 生素地の装飾その1
10 指描き・打ち掛け
福岡県の二川焼の捏鉢コネバチはこの指描き技法を用いています。化粧泥を生素地に施し
て,乾かないうちに指先で文様を描くものです。
また化粧技法とは違う,生素地に水打ち粘土やサビ土の泥を指頭に付けて,窪みを付
けないで絵唐津のような文様を描く方法もあります。
打ち掛けとは,小鹿田(前掲)の窯などの民窯でよく用いられる技法で,化粧泥を藁
刷毛などに浸して,生素地めがけて水を打つように浴びせ掛けるものです。化粧泥を布
に包んで軽く打つ方法や,色化粧泥を用いることもあります。
11 いっちん描き・筒描き
"いっちん"という描画用具に化粧泥を入れて,絞り出しながら高盛りの線文様を描き
ます。いっちんとは,柿渋を引いた和紙を袋状にして真鍮性の細い口金をつけた,スポ
イト状ののものです。
友禅にも関係していた久隅守景(別名一陳斉)という人が古九谷の絵付師として下絵
付けの仕事に,友禅の染糊線の技法を応用したことから,"いっちん"という言葉が生ま
れたと言われています。
いっちん白化粧泥の調合例
原料 割合 備考
天草石 30
蛙目粘土 40以下
長石 10
蝋石 20〜30 泥の収縮が大きくて素地からめくれるようであれば,蝋石を増
します。
※上記の調合物に水と布海苔液を加えます。
また高盛りの線描きのものとしては,丹波の立杭焼の筒描きがあります。これは底に
孔の空いた竹筒に化粧泥を入れて線描きするものです。
[次へ進む] [バック]