07b 生素地の装飾その1
 
  (4) 溶化化粧土
 前述の化粧土は非溶化化粧土といい,通常,化粧土の上に釉薬を施します(アンダー
スリップといいます)。溶化化粧土は釉薬と同じような性質を持った化粧土で,化粧即
ち釉薬ということになります。
  溶化化粧土はヨーロッパでは盛んに用いられてきましたが,東洋ではあまり意識して
使っていません。しかし,古くからの民窯で見られる黄土や来待石の"赤どべ"を塗った
甕や擂鉢は,全く溶化化粧土そのものです。
 SK9の場合の溶化化粧土の調合例では,粘土(カオリンなど)40%以上,長石15%以
上,それに石灰石1%位とします。
 
  (5) 色化粧土
 白化粧土や黄土,来待石などの赤色化粧土のほかに,白化粧土に着色材を加えた色化
粧土があります。しかし着色材を加えますと,斑点が出たり,着色材と白化粧土の成分
が熔け合って"ぶく"が出たりしますので,活発に活動しない着色材を用いて下さい
 
 ○色化粧土の調合例(SK9〜10,白化粧土100に対して:釉薬は石灰透明釉)
  着色材   添加量 色合い
 酸化コバルト    1〜10 酸化・還元焼成とも2%位では明るい青色,8%位で暗い青色。
           また還元の方が全般に濃い色合いとなります。
 酸化クロム  5〜10 酸化・還元焼成とも5%位では明るい緑色,それ以上では暗い緑
           色。還元の方が全般に濃い色合いとなります。また化粧土や釉
           薬にマグネシャや亜鉛が含まれていると変色します。
 酸化ニッケル   2〜10 焼成の条件や化粧土,釉薬によって灰色又は灰色を帯びた緑か
           ら土色に変化します。2%位では明るい色,10%になると暗い色
           になります。
 二酸化マンガン  5〜20 5%位では明るい褐色,20%近くなると暗い褐色になります。
 紅柄     5〜15 紅柄を加える量を増すに従って黄色〜黄赤色〜赤褐色〜黒色と
           なります。また温度が高く,還元焼成では暗色から黒色になり
           ます。
 ※青色を出すには,酸化コバルト2と酸化クロム5を組合せまです。
 
  (6) 化粧泥の調整
 白絵土を採掘したときは,水に浸けて砂気のものを捨てて,これを100目位の篩に通
し,布海苔を加えて用います。
 調合して作るときは,指頭で原料を撫でてみて"ざらざら"しない細かさのものですと,
ボールミルに水と共に入れて12時間位磨り,その泥を100目の篩で通し,布海苔を加えて
用います。
 なお色化粧土のときは,白化粧土と着色材とは別々に磨り,また着色材はよく磨りま
す。
 
 4 化粧掛け
 化粧掛けの方法にはどっぷりと浸し掛ける方法,杓で注ぎ掛ける方法,噴霧器で吹き
掛ける方法や,刷毛や筆で素地に塗り付ける方法,また印花や彫りの凹部に筆などで叩
き付けて埋める象嵌化粧法などがあります。
 化粧土は素地に対して"濡れ"がよいことが必要ですので,これは布海苔液による"腐ら
し"が効果的です。また,布海苔液の代わりに無水炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)を化粧
土に対して0.5〜1%,又は水ガラス(珪酸ソーダ)か硼砂を1.0%位を添加します。
 よい泥の状態というのは,杓から流した泥が糸を引くように切れない状態のものです。
これを曳糸性エイシセイといい,水分が少なくて粘りがあるため,生素地のときでも素地に水
廻りがしないので素地が壊れません。また水分が少ないということは,乾燥したときの
収縮も少ないので,素地から剥がれる割合も少なくなります。
  (1) 湿った素地に施す場合
 成形した直後に化粧掛けする方法で,例えば轆轤成形で水引きして削り仕上げをする
前の,素地の表面の水気が引いた頃合いに化粧掛けします。化粧土と素地との馴染み合
いということでは最もよい条件ですが,作品が薄手のときは形が壊れることがあります。
 
  (2) やや湿った素地に施す場合
 土物ツチモノのときは,轆轤の削り仕上げの終わった時期で三〜五分乾きの頃に化粧掛け
します。一般にこの方法が用いられ,化粧掛けとして最も実際的で安全な条件といえま
すが,砂気の多い素地には不向きです。
 
  (3) 完全に乾燥した素地に施す場合
 化粧土の水分が滲透して素地が壊れたり,化粧がめくれたりしますので注意して下さ
い。
 
  (4) 素焼き素地に施す場合(安南掛けとも)
 前記(3)より危険率は少ないのですが,広い部分に化粧掛けすると,焼成したときに素
地から化粧が剥がれることがあります。
 また,生掛けのときは焼き上がったとき素地と馴染み合って"しっとり"とした色合い
になりますが,濃い白さは得られません。この点,素焼き素地に施しますと化粧の白さ
は濃くなります。また三島などの化粧象嵌の沈み彫りの部分に化粧を埋め込むときに適
しています。
 素焼き素地に化粧掛けする要領は,まずスポンジで素焼面を軽く水拭きするか,或い
は"さーっ"と作品を水に浸して表面を湿らし,素早く化粧掛けしますと,化粧土と素地
との馴染みがよくなります。
 
 5 化粧掛けに起こる欠点
  (1) ピンホール(化粧面に小さい穴跡が出ること)
 素地面が荒いとき,素焼き素地に施したとき,一度に厚く施したときなどにピンホー
ルがよく出ます。これは素地に対して化粧泥の"濡れ"が悪いことが原因です。
 布海苔液を十分に加えた少し薄目の化粧泥を,筆か刷毛に着けて素地面に叩き付ける
ようにして地塗りをした上で,更に平均に化粧掛けをします。
 またピンホールは化粧泥の中に泡があるときにも起こりますので,化粧泥は作ったら
直ちに使わず,少し熟成させてから用いて下さい。
 
  (2) 亀裂・めくれの原因
 亀裂は化粧掛けした後,化粧が乾こうとする時期に起こり,そのまま焼成したり,又
は亀裂の部分を指頭で撫でて修整しただけで焼成したりすると,"めくれ"が出てきます。
これは表面的な修整では直りません。
 これらの原因は,@乾燥素地や,素焼き素地に施したとき,A濃い目の化粧泥を一度
に厚く施したとき,B化粧土の調合に粘着材である蛙目粘土や白木節粘土が多く,化粧
土の乾燥収縮が大きいとき,C前記とは逆に化粧土の粘着材が少ないとき,D長石や石
灰石,石灰釉などの融着材が足りなくて化粧土が素地に融着しないとき,などです。
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