07a 生素地の装飾その1
3 化粧土の調合
良質の白絵土が少なくなり入手が困難ですので,オリジナル(自分流)な化粧土の作
り方をご紹介します。
(1) 原料の扱い方
a 化粧土の基本原料
化粧土の原料は白色で,適当な粘りが必要です。
やきものの原料には土と石しかありませんが,カオリンは土で,天草石は石に属しま
す。土には粘りがあり,石には粘りがありません。長石や珪石には粘りがありませんが,
天草石などの陶石には若干の粘りがあります。
b 融材となる原料
粘りのある原料でも,焼いたとき素地に融着せずに剥げ落ちることがあります。この
ため,カオリン,白木節粘土,蛙目粘土,蝋石などには,融着材として長石又は石灰石,
或いは化粧土の上に施す釉薬に石灰釉などを少し加えます。
天草石の場合は融着材を加える必要はありません。
c 殺粘材と化粧土の白さを助ける原料
基本原料の粘りがあまり強いと,作品が乾燥したとき収縮が大きすぎて素地からめく
れ上がることがありますので,このようなときには殺粘材として蝋石,珪石(又は長石
や石灰石など)を加えます。これらの殺粘材は同時に白さを補います。
d 粘着材となる原料
素地に付着しにくく,めくれ落ちるようなときは,蛙目粘土や白木節粘土などの粘着
材を補います。
蛙目粘土には鉄分やチタンが含まれていますので,あまり多く加えると白さが損なわ
れますが,黄味の化粧を指向したいときはやや多く加えることがあります。
また布海苔液フノリエキも化粧土の粘着材として欠かせません。
化粧土は,"ねっとり"とした白さで素地や釉薬とよくなじませたり,布海苔を十分に
加えて"腐らし"をして粘りを出させてり,またよく風化した白色粘土を探し出したり,
などの工夫をして下さい。
(2) 白化粧土のオリジナル調合例(SK9〜10のとき)
@カオリンが元原料の例
性質 原料 A B C D
基本原料(粘土) カオリン 70 70 70 70
殺粘土と白色材 珪石 20 − − −
〃 蝋石 − 20 − −
融着材 長石 10 10 10 −
〃 石灰石 − − − 10
粘着材 蛙目粘土 − − 20 −
〃 白木節粘土 − − − 20
※カオリンにはあまり強い粘りがありませんので,粘着材を加える必要があります。
A白木節粘土が元原料の例
性質 原料 A B
基本原料(粘土) 白木節粘土 70 70
殺粘土と白色材 珪石 20 −
〃 蝋石 − 20
融着材 石灰石 10 10
※白木節粘土は粘りが強いので,殺粘材を更に多く用います。
B天草石が元原料の例
性質 原料 A B C
基本原料 特上天草石粉末 100 80 80
粘着材 カオリン − 20 −
〃 白木節粘土 − − 20
C白色度を増す調合例
原料 A B
特上天草石 80 80
カオリン 20 −
酸化錫 2〜5 − ※白色材
白木節粘土 − 20
珪酸ジルコニウム − 2〜5 ※白色材
※白色材を加え過ぎますと,白ペンキのようになり,色合いとしては好ましくありま
せん。
(3) 化粧を施す時期とその調合(SK9のとき)
化粧は,生乾き素地に施す場合,完全に乾いた素地に施す場合,また素焼きしてから
施す場合があります。色合いとか,"めくれ"とかを考慮し,その施す時期によって調合
の加減をする必要があります。
@化粧する素地の状態と化粧土の調合例(1)
性質 原料 生乾素地用 乾燥素地用 素焼素地用
白色粘土 カオリン 60 30 30
殺粘材 蛙目粘土 10 10 10
〃 珪石 20 40 40
融着材と殺粘材 長石 10 20 20
泥の分散材 炭酸ソーダ 1 1 1
※収縮が一応終わっている素焼素地には,収縮率の大きいカオリン・蛙目粘土・木節
粘土などの粘着材は極端に少なくします。
A化粧する素地の状態と化粧土の調合例(2)
性質 原料 素焼用1 同2 乾燥用 生乾用1 同2
白色粘土 カオリン 20 − 20 60 40
白色の土化した石 天草石 20 60 60 20 60
融着材と殺粘材 長石 60 40 20 20 −
B化粧する素地の状態と化粧土の調合例(3)
性質 原料 素焼・乾燥1 同2 生乾1 同2 同3 乾燥・素焼1 同2
粘着材 カオリン 20 − 60 20 40 10 10
半粘着材 天草石 30 60 30 60 60 30 40
殺粘材 蝋石 − − − − − 50 30
融着材と殺粘材 長石 50 40 10 20 − 10 20
a カオリンを主とする調合
一般的な化粧土の調合方法です。また生乾きの素地に施す化粧土として適しています。
b 天草石を主とする調合
カオリンに次いで一般的な調合方法です。生乾き素地にも,完全に乾燥した素地にも,
また素焼きした素地にも適すると言えます。
c 蝋石を主とする調合
カオリンや天草石などと比べて粘りがありませんので,完全に乾燥した素地とか,素
焼きした素地に用いますが,良質の蝋石は少なくなりました。
d 長石を主とする調合
特殊な方法で,熔化質の化粧土の調合方法と言えます。完全に乾燥した素地や素焼素
地には適しますが,生素地の化粧土としては不向きです。
e 蛙目粘土を主とする調合
特殊な方法ですが,鉄分やチタンを含んでいるので黄味の色合いとなり,また生乾き
素地用として用いられます。
序でに,素地の収縮率の合ったもの,つまり石などの多い素地には石質の原料を元に
した化粧土,粘土分の多い素地には粘土質の原料を元にした化粧土を調合することにし
ましょう。
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