04c やきものはあなたの手で〈形をつくる〉
 
   〈ロクロづくり〉
   
    ロクロは,一般の人は右利きですので右回りに回転させます。初
   心者はあまりゆっくり廻しますと,気持ちがはやって粘土を真円に
   誘導できませんので,ある程度の速さで回転させて下さい。
    傍に,前記の道具のほか,手を拭く布(タオル),水を入れた小
   桶,なめし皮,スポンジ,切り糸(一方に結び目のないもの)など
   も用意します。
    それでは茶碗を作ってみましょう。
    ①菊練りした粘土3㎏を円錐状に形を整えて,ロクロの回転盤の
     中心に置きます。周囲をたたいてしっかり据えます。この粘土
     の量では,抹茶茶碗ですと5,6個は作れます。粘土の硬さの
     目安は,指紋がつく程度ともいわれています。
    ②初めはロクロをゆっくり回転させます。掌に水をつけて両手で
     押さえ真円の円錐体に導いていまきす。このとき,粘土がなか
     なか中心に誘導されていかないときは,ロクロを廻しながら粘
     土の外周を人差し指で真円に切ります。そして回転の速度を上
     げて,円錐体に誘導していきます。掌がいつも滑らかに保つよ
     うに,水を切らさないようにして下さい。
    ③両手に力を入れますと,円錐が段々高くなります。今度は円錐
     の上部を右手で向こう側へ少し押し続けますと,低くなって元
     の円錐体に戻ります。これを2,3回繰り返します。そうしま
     すと粘土は完全な真円の円錐体になります。
    ④円錐体の上部の粘土(茶碗1個分500g程度)をこけしの頭のよ
     うに丸く特定し,左親指で上から2,3㎝の凹をつけます。続
     いて凹に水を足し,今度は両親指で底辺を少し広げます。底に
     は常に水が少し残っている程度に濡らしておきます。
    ⑤左手は水で濡らして滑らかにして作品の外側を支え,右手は,
     人差し指を内側,親指を外側にして,作品の底から上へ成形し
     ていきます。2,3回で一気に成形を完成させます。数を繰り
     返しますと,粘土が軟らかくなって形が崩れてしまいます。
    ⑥口辺をなめし皮で滑らかにし,スポンジで内外の余分な水分を
     すっかり吸い取ります。
    ⑦内側の底面より2㎝程度下部のところで切り離します。要領は,
     その外側に人差し指で切り目を入れ,一旦ロクロを止めて,切
     り目に切り糸を当てて1回転させて,さっと水平に切り糸を抜
     きますと完全に切れます。
    ⑧両手の人差し指と中指を鋏みのようにして,作品を両側から持
     ち上げて,亀板に移します。
    ⑨大きな作品は持ち上げられませんので,このようなときは底を
     糸で切ったままにして,半乾きになるまで放置します。
    ⑩この後は高台削りとなりますので,ある程度固く(半乾燥)な
     るまで数時間(~一昼夜)放置します。
   
   〈削り〉
   
    ロクロづくりをした作品などを,いろいろな道具を使って,外形
   を整えたり整形したりします。そのために削りの道具があります。
    削りの中で最も大事に作業は,高台削りです。
    高台削りとは,例えば茶碗では,腰から下の高台脇,高台際や高
   台外,竹節,そして兜巾トキン,高台内,畳付などを削り出すことで
   す。
    ①鉋カンナ:仕上げ用鉋は,長さ15~20㎝,幅1.5~2.5㎝,厚さ0.5
     ~1㎜ほどのもので,鉄板で作ります。端を直角又は丸みをつ
     けて曲げ,さらに形を三角や丸状にして外側から鑢ヤスリなどで刃
     をつけます。
     土を削りますと刃はすぐ減っていきますので,ときどき砥石で
     研いだり,また数種の異なった鉋を準備しておきます。
     このほか削りの道具として,掻き篦ベラなども使います。
    ②削りべら(篦):竹や松の木で作った篦ヘラです。先端を鋭く削
     ったり,湾曲させたりしたものです。
    ③湿台シッタ(削り台):粘土を成形して生乾き又は素焼きにしたも
     ので,ロクロ(卓上ロクロを含む)の上に固定し,その上に作
     品を載せて削ります。
    続いて茶碗を例に,高台部の削り仕上げをしてみましょう。茶碗
   のときは,特別に湿台を使わなくても削ることができます。
    ①半乾燥した作品をロクロの中心に置きます。中心を決めるには,
     ロクロをゆっくり廻しながら,掌で突いて徐々に中心に寄せて
     いきます。
    ②直径2~3㎝の粘土の紐で茶碗の周りを囲み,紐をしっかりロ
     クロに付着させ,茶碗を固定します。
    ③ロクロを回転させ,直角の鉋の角を利用して,高台を削ってい
     きます。
    ④続いていろいろな鉋など用いて,高台脇や腰なども削りながら
     整形していきます。
    ⑤ときどき叩いてみて,その音で作品の厚さを感じとり,削り具
     合を確かめます。
   
   〈その他の作り方〉
   
    ①板作り:2~3分の厚さの粘土の板を数枚作って,その外周を
     やや立ち上げて四角い皿,木の葉風の皿などを作ります。
    ②既製の型:あらかじめ既製の皿などを型にして,それに粘土板
     を載せて同じ型の作品を複製します。
    ③石膏型:始めに原型を粘土で作り,それに石膏を流し込んで型
     をとり,その石膏の型に粘土を押し込んで,沢山の複製作品を
     作ることができます。
     なお,石膏は水に流れず沈殿しますので,残余の石膏を下水に
     捨てるときは十分注意して下さい。
    ④市松模様:2種類の粘土の板を交互に重ね,それを縦にして板
     に切り,それを90度交叉して積み上げて市松模様の板にし,い
     ろいろの作品を作ってみて下さい。
    ⑤玉つくり:任意の大きさの粘土を算盤玉の形にして,手ロクロ
     の中心に置き,手で延ばしながら作るもので,やきものづくり
     の本当の面白さはこの方法です。
     抹茶茶碗,香合,一輪挿しなど,あなたのお好きな作品を作っ
     てみて下さい。
              参考:「やきもの製作の実際」理工学社

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