03b やきものはあなたの手で〈やきもののできるまで〉
〈粘土の作り方〉
やきものに向く土として,適当な粘りがあり成形の容易なもの,
乾燥中や焼成中にひび割れや破損が少なく,焼き締まりのよいもの,
焼いた土味の面白いものというような,いろいろな条件を満たす土
を手に入れるのは,なかなか難しいものです。
粘土を焼くと色がつきますのは,土の中の鉄分のためで,赤味の
度合いの強いものほど鉄分も多く,耐火性も弱いものです。また粒
子が細かく粘りが強いと成形は容易ですが,乾燥中や焼成のときに
傷ができやすいものです。足りないものを補足するため,いろいろ
な土を混合して適当なものをつくる訳です。手に採って見てざらつ
く土よりも,柔らかくて餅のように粘りのある土が良い土です。耐
火度の点でも,土を見つけましたら,一旦乾燥させてから水の中に
入れてみて,水に早く溶ける土は耐火度が強い土ですし,また色の
変化の少ない土ほど良い土です。
実際に焼いてみれば,耐火度の高低や色の見当はつきますし,耐
火度の弱いときや粘りのないときには,蛙目ガイロメ,木節粘土の類を
加えれば大抵の土は使えます。
次に成形しやすくすることが必要です。山から掘ってきたままで
すと,粗い分子や塵が入っていますので,そのままつくりますと「
きず」もできやすく,つくりづらいものです。土拵ゴシラえには,篩
フルイ土と水簸スイヒ土とがあります。
△篩フルイ土
原土は,適当に砕いて充分天日で乾燥させ,さらに細かく砕きま
す。原土の量が多いときは臼などで砕きだきますが,少量なら木槌
を用いて砕きます。次に50目位の篩を通して,塵や粗い分子を取り
除いて下さい。篩を通した粉末に,適当に水を加えて練り合わせま
す。
ざっと練り合わせた土は,そのまま容器に入れて,10日位は放置
しておきます。これは土の粘りを出して使いやすくするためです。
粘土を一定期間貯えておくことを「ねかし」といい,なるべく長い
期間寝かしておくのがよいのです。ねかしは一種の熟成で,これに
より粘土中の有機物を分解し,バクテリアを繁殖させ,気泡を分散
させるなどして均一の使いやすい状態にするのです。
貯蔵は風通しのよくないところの方がよく,少量でしたにビニー
ルなどに包んでおいても構いません。
△水簸スイヒ土
原土を充分乾燥させ,細かく砕いておきます。容器に水を張り,
その中に細かくした土を入れて,そのまま一晩置きます。それをよ
く撹拌カクハンしてどろどろの状態にし,その泥漿デイショウを篩(50〜80
目)を通して別の容器に移します。2〜3日そのまま放置しますと,
土が沈んでうわ水が溜まります。うわ水を捨てて,土を石膏や素焼
きした鉢などに移して,適度に固くします。これらの容器は水分を
吸収しますので,早く固まります。ある程度固くなったら小さな塊
にし,板の上に移して天日乾燥させます。一部分だけ固くならない
ようにときどき向きを変えて下さい。水分が多過ぎる軟らかめの粘
土は,太さは直径3〜5p,長さは20〜40p程度の棒状にして,ア
ーチ型に曲げて板の上に立て,天日に当てて乾燥させます。このと
きも,ときどき向きをかえたり,練り直したりして下さい。
・・・・
・・・・・・
・・ ・・棒状の粘土をアーチ型にして板の上に
・・ ・・立てる
・・ ・・
・・ ・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・板
固くなった粘土,成形に失敗した粘土,削りかすの粘土などの再
生についても,水簸土の同じようにしてつくり直します。
〈やきものの製作プロセス〉★
やきものづくりのプロセス,つまり粘土での成形から窯カマ入れま
での工程に入ります。一つのやきものが出来上がるまでには,極め
て多くの工程と時間を要します。粘土で形をつくるということで半
分,釉掛けや焼成が半分です。
@土を乾燥,粉砕して,篩土又は水簸土の粘土をつくる
Aその粘土を貯蔵しておく
B粗アラ練り,菊キク練りをして成土をつくる
C手づくり,ロクロづくり又は型を使って成形する
D成形してまだ生乾きのものに,彫刻,釉の化粧掛け,掻き落と
し,象嵌ゾウガン,刷毛ハケ目などの加工,装飾をする
E加工した成形のものを完全に乾燥させる
F窯に入れ,750℃前後で素焼きする
G素焼きしたものに,下絵付け,刷毛目,蝋引きなどを施す
H次に,浸し掛け,流し掛け,吹き掛け,刷毛塗り,釉流しなど
の釉掛けをする
I楽焼きのときは,このまま窯に入れて700〜900℃で焼く
J本焼きのときはHの後,窯に入れ,陶器は1180〜1300℃前後,
磁器は1250〜1300℃前後で焼く
K本焼き後に上絵付けをするときは,上絵付けをして700〜850℃
で焼く
L素晴らしいやきものが完成する
参考:「やきもの製作の実際」理工学社
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