03 やきものはあなたの手で〈やきもののできるまで〉
やきものはあなたの手で〈やきもののできるまで〉
〈やきものの原料〉
〈粘土〉
やきものづくりについて昔から,一焼き,二土,三細土といわれ
ています。これは一番大切なのは焼成であり,次いで土の選択,三
番目は形をつくることや絵を描いたりすることである,という意味
合いです。色とか焼く温度を限定しなければ,大抵の土はやきもの
になります。ただ白いやきものをつくるとなると,地球上には鉄分
が相当沢山あり,これがどんな鉱物にも多少含まれていますので,
鉄分の入らない白い土は,そうざらにありません。土にはそれぞれ
個性がありますので,どんな成形をするか,どういう釉薬ユウヤクを掛
け,どんな焼き方をするかが決まります。やきものは土から始まる
ともいえますし,その土の選択が非常に大切な訳です。
特にやきものは,良い原料を使わなければ良いものは出来ません。
白い土や,赤味,青味,黒味を帯びた土など様々ですし,粗い土
や細かい土,粘りのあるもの,収縮の大きいもの小さいもの,耐火
度の強いもの弱いものなどいろいろな性質の土があります。一般に
土は,土,砂,岩石と区別できますが,地質学では大きさや固さに
関係なく,これらを岩と称します。
石と土とを,表面の感覚で異質にみえているものでも,科学的に
はその成分が同じものがあるからです。例えば,粘土は,珪酸ケイサン
とアルミナが主成分ですが,これらを含む岩石が長い年月の風化作
用により変質してできたものです。このようにしてできた粘土が,
同じところに残留し続けているものを一次粘土といい,白色のカオ
リンという粘土があります。雨や風などによって移動したものを二
次粘土といい,比較的鉄分などを含んでいます。ほんの少し移動し
たものとして蛙目ガイロメ粘土,二次粘土の代表的なものとして木節
キブシ粘土というものがあります。
△カオリン:蛙目ガイロメ粘土,木節キブシと同質の耐火粘土です。可塑
性は少ないですが,鉄分を含まず,白色の耐火度の高い土です。白
色のやきものにはなくてはならないものです。また釉薬や化粧土と
しても用います。
△蛙目ガイロメ粘土:一次粘土であるカオリンの移動したもので,カオ
リンに比べて幾分不純物を含んでいますが,比較的白く可塑性に富
んでいます。原土に多量に含まれた珪石の粒が,湿っているときは
蛙の眼のように光るので,美濃途方の方言で「がいろめ」と呼んだ
ことから出た名称です。やきものの可塑性原料としては重要な地位
を占めています。
△木節キブシ粘土:水流で遠いところへ押し流されて沈積したため,
細かく可塑性は非常に大きいものです。亜炭層から主に出ますので,
亜炭及び炭化していない木節を含んでいます。従って木節粘土と呼
ばれているのです。鉄分がいくらか含まれているため,高温で焼き
ますと灰色系になります。外観によって白木節,青木節,黒木節な
どに分け,それぞれ産地名を付して呼んでいます。
〈長石その他〉
やきものの主要な原料は天然の鉱物で,岩石や土壌の状態で算出
されます。粘土のほかに岩石鉱物である珪石,長石というものがあ
ります。これらを適当に調合してつくるときもあり,単味でつくる
ときもあります。この粘土の珪石や長石がやきものの主原料です。
成形できる性質を持つ粘土類を可塑性原料,珪石の類を非可塑性原
料,長石類を溶媒原料といい,このほかに釉薬の原料があります。
△珪石ケイセキ:珪石は,珪酸塩といわれるやきものの珪酸源として重
要な原料です。珪酸は火山岩の中に石英の形で豊富に入っています。
従って,火山岩の分解物である粘土の中にも珪酸が含まれています。
純度が他の原料に比べて良いので,製品の色を白くしたり,焼き腰
を強くしたりする働きをします。粉砕の度合いにより耐火度を高め
たり,温度により融剤として作用したりします。やきものの素地だ
けでなく,釉薬にも重要なものです。
△長石チョウセキ:粘土は長石の分解生成物であり,ほとんどすべての粘
土の中には未分解の長石が残っています。長石は最も重要な媒溶剤
でほとんどすべてのやきものに使われています。粘土,珪石を溶か
しガラス化を容易にする溶剤です。種類も非常に多く,性質も複雑
です。長石もまた,釉薬の主原料でもあります。
△陶石:磁器の原料は,ほとんど珪石,長石,粘土を混ぜ合わせて
つくります。珪石は耐火度を高め,長石は珪石と粘土を融和させ,
粘土は可塑性と適度の耐火性をもたらせるのです。これらが適当量
に配分され,自然のままで磁器になるのがあり,これらを一般に陶
石と呼んでいます。天草陶石や泉山陶石が有名です。
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