02c やきものはあなたの手で〈やきものとは〉
 
   〈やきものづくりの楽しさ〉
   
    国宝や重要文化財になっているやきもの,陶芸家の作品の展示会
   など,また,やきものの本や図書なども沢山出版されています。一
   方,それを享受する側においても,産地の見学,民芸品の買い物旅
   行や収集,展示品などの鑑賞,また,自分で焼いたりする人も少な
   くありません。やきものはこれまで,一部の限られた人達の独占で
   ありましたが,現在では,多くの人達がやきものの美しさに感動し,
   自分の手でつくりたいという欲望にかられて,ごく自然にやきもの
   を始められ得ることは,大変幸福なことであると思います。
    やきものの世界においては,やきものを焼くということが一番難
   しいことで,例えば「焼く」ということを採り上げてみても,昔は
   薪で長い時間をかけて焼き上げました。窯を築き,焼き上げること
   の技術を持った者がプロと呼ばれていました。現在では電気やガス
   を用いますので,誰でもつくれるものです。ものを生み出そうとす
   る創造意欲と,そして手さえあればいいのです。自分の心を形にし,
   それを生み出すのがやきものなのです。沢山の数の作品の中から,
   今までに多くの人々によって選び出されて今日あるのです。
    そして,今日あるものの外見をただ真似るだけでなく,自分自身
   のものをつくり出す喜びを充分に味わい,楽しんでいただきたいも
   のです。確かに技術は必要です。技術なくしてはどんなものも表現
   できません。しかし技術がいかに優れていても,良いものがつくれ
   るとは限りません。なにげなくつくったときや,自分が思うような
   ものをつくろうとすれば,素晴らしいものが生まれたり,とてつも
   ないものが出来上がったりするものです。
    粘土で形をつくり,それが火という偶然性の強い中をくぐり抜け
   て初めて作品になります。つくるときは作者ですが,作品を視ると
   きは第三者として視なければなりません。自分の予期しないものが
   生まれ,嬉しがったり驚いたり,がっかりしたりするその度合いが,
   やきものほど大きいものは他にはないでしょう。「やきもの」づく
   りの一番大きな魅力はここにあります。
   
               参考:「やきもの製作の実際」理工学社

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