65a 言語・諺を詠める和歌
 
△童謡ワザウタ
いはのへにこさるこめやくこめたにも たげてとほらせかましゝのをぢ
                        (童謡 日本書紀 二十四皇極)
 
みえしぬの えしぬのあゆ あゆこそは しまへもゆき あくるしゑ なぎのもと せ
りのもと あれはくるしゑ(其一)
おみのこの やへのひもとく ひとへだに いまだとかねば みこのひもとく(其二)
あがごまの いゆきはゞかる まくずはら なにのつてこと たゞにしえけむ(其三)
                        (童謡 日本書紀 二十四皇極)
 
△雑載
あはれてふことこそつねのくちのはに かゝるや人をおもふなるらん
                     (後撰和歌集 十六雑 よみ人しらず)
 
[諺]
 
「網の目に風たまらず」
おもはんとたのめしことはあみのめに たまらぬ風のこゝろなりけり
                             (散木葉謌集 七恋)
 
「毛を吹けば疵求む」
なほききにまがれる枝もある物を けをふききずをいふがわりなさ
                      (後撰和歌集 十六雑 高津内親王)
 
「恋すればやすからぬもの」
古ムカシより 言ひ継ぎくらく 恋すれば 安からぬものと 玉緒の 継ぎては云へど 処
女等ヲトメラが 心をくだき そを知らむ よしの無ければ 夏麻ナツソ引く 命ミコトをつみて
かりこもの 心もしのに 人知れず もとなぞ恋ふる いきの緒にして
                             (萬葉集 十三相聞)
 
「痛き傷には辛塩を注ぐ」「重い馬荷に表荷を打つ」
霊タマきはる 内の限りは 平らけく 安らけくもあらむを 事も無く 無くもあらむを
世間の うけくつらけく いとのきて 痛き瘡キズには から塩を 潅ソソぐちふがごとく
益々も 重き馬荷に 表荷ウハニ打つと いふことのごと 老いにてある 我が身の上に 
病ひをら 加へてあれば(下略)(萬葉集 五雑歌)
 
「重荷に小附」
山人のこれるたき木は君が為 おほくのとしをつまむとぞ思
御かへし
としのかずつまむとすなるおもにゝは いとゞこづけをこりもそへなむ
                            (後撰和歌集 二十賀)
 
「老学問」
よろづよにまにまにみえむあしたづも ふりにしことはわすれやはする
                            (空穂物語 蔵開上一)
 
「短い物の端を切る」
飯ひ炊事カシグコトもわすれて ぬえ鳥の のどよひをるに いとのきて 短き物を 端き
ると 云へるが如く しもととる いとらがこゑは 寝やどまで き立ち呼ばひぬ(下
略)(萬葉集 五雑歌 山上憶良)
 
「木をはなれる猿」
たよりなき猿とはわれぞおもひつる 木をはなれたる猿もなくなり(赤染衛門集)
 
「上見ぬ鷲」
またはよもはねをならぶる鳥もあらじ うへみぬ鷲の空のかよひぢ
                            (新撰六帖 二 行家)
 
「鵜の真似をする烏」
おほゐがは井ぐひにきゐる山烏 うのまねすともうをはとらじな
                     (夫木和歌抄 二十七烏 権僧正公朝)
 
「とりもなからむしまにては此かはほり」
人もなくとりもなからむしまにては 此かはほりもきみもたづねん
                             (和泉式部家集 五)
 
[謎]
 
わが事はゑもいはしろのむすび松 千とせをふともたれかとくべき
                        (拾遺和歌集 九雑 曽禰好忠)
 
かひなしや社のみしていのること なくてみそかに成にけるかな
返し
みそかまでいのる社のかひなくば 神無月とやいふべかるらん(讃岐入道集)
 
秋またぬいねかと見しはなよ竹の したばにねざすこにこそありけれ
                     (夫木和歌抄 二十八竹 よみ人不知)
 
いかでもと思ふ心のみだれをば あはぬにとくる物とやはしる(散木葉謌集 七恋)
 
小倉山峯より出て行月も あふ坂まではくまなかりけり(散木葉謌集 十雑)
 
春は花夏は卯のはな秋楓 冬は氷のしたくゞる水(後奈良院御撰何曽 しきがは)
おとゝひもきのふもけふもこもりゐて 月をも日をもおがまざりけり(同 御神楽)
おもふ事いはでたゞにややみぬべき 我にひとしき人しなければ(同 おしき)
みやつかひかひこそなけれ身を捨て しはさかさまに引は何ぞも(同 八はし)
もろこしにたのむ社のあればこそ まいらぬまでも身をばきよむれ(同 唐紙せうじ)
 
秋風のはらへば露の跡もなし 荻の上葉もみだれてぞ散る(翁草 五)
 
我ことはえもいはしろのむすび松 千とせをふとも誰かとくべき
おくていねの今はさなへとおひたちて 待てふるねもあらじとぞ思
いそのかみふるめかしかのするものは 花橘のにほふなるべし
東路のしづの垣ねの卯花は あやなくなにととふぞはかなき
たのめつゝなつくよもなしほとゝぎす かたらふことのあらばこそあらめ
うつくしと思ひにしかば撫子の 花はいづれの秋かわすれん
今こむといひしばかりを命にて 杉のこずゑといふぞわりなき
あさりせし浦を見しかばわたつうみの 磯のはまぐり色こかりしを
千早ぶる神のやり水よどなれて けふみかはぢのおそろしき哉
はき物もふたつならべてつとめこし つくつくほうしいづこ成らむ
弓はりのかたとの月を山のはに そらつはものゝいるかとぞみる
                           (小野宮右衛門督家歌合)

[次へ進む] [バック]