65 言語・諺を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
「言語は、コト又はコトバと云ふ。凡そ言
語には古言あり、今言あり、雅言あり、俗言
あり、方言あり。又人の性質に依りて多弁な
るあり、寡言なるあり、巧に諧謔カイギャクの言
を弄し、或は好で荒誕コウタンの談を為すありて、
一ならず。而して言語は往々過誤を招くを以
て、古来之を戒飭カイチョクせしもの少なからず」
「出鱈目」を言う人は信用できるが、「嘘
」を言う人は信用できない。一方、「嘘」を
上手に表現する作家は信用されるが、「出鱈
目」を書く作家は信用されない。とSYSOPは思
っています。
△言語
あまはせずかひ ことの かたりごとも こをば(古事記 上)
葦原の 水穂国ミヅホノクニは 神カンながら 言挙コトアゲせぬ国 然れども 辞挙コトアゲぞ吾れ
する 言幸コトサキく 真福マサキくませと 恙ツツみ無く さきくいまさば 荒磯浪アリソナミ 有
りても見んと 百重モモヘ浪 千重チヘ浪しきに 言上コトアゲする吾れ
反歌
しき島の倭国は言霊コトダマの たすくる国ぞまさきくありこそ
(萬葉集 十三相聞 柿本朝臣人麿)
思はんとたのめし人はありときく いひしことのはいづちいにけん
(後撰和歌集 十恋 右近)
やましろのつゝきのみやにものまをす わがせをみればなみだぐましも
(日本書紀 十一仁徳)
ちゝのみの ちゝのみことは たくづぬの しらひけのうへゆ なみだたり なげきの
たばく(下略)(萬葉集 二十)
△方言(磯辺オシベ・オスヒ)
駿河のうみおしべにおふるはまつゞら いましをたのみははにたがひぬ
かつしかのままのてこながありしかば ままのおすひになみもとどろに
(以上、萬葉集 十四東歌)
同(母アモ(シシは父か))
たびゆきにゆくとしらずてあもししに ことまをさずていまぞくやしけ
(萬葉集 十四)
同(心なくケケレナク)
かひがねをさやにも見しがけゝれなく よこほりふせるさやの中山
(古今和歌集 二十東歌)
△訛(ゆがむシタダミ)
あづまにてやしなはれたる人の子は したゞみてこそ物はいひけれ
(拾遺和歌集 七物名 よみ人しらず)
△談話
磯の上に根はふ室木ムロノキ見し人を いかなりと問はば語りつげむか
(萬葉集 三雑歌 太宰帥大伴卿)
△無言
いくそたびきみがしゞまにまけぬらん ものないひそといはぬたのみに
かねつきてとぢめんことはさすがにて こたへまうきぞかつはあやなき
(源氏物語 六末摘花)
うき身にはしゞまをだにもえこそせぬ 思あまればひとりごたれて(拾玉集 一)
△とはずがたり
つゝめどもたえぬおもひに成ぬれば とはずがたりのせまほしき哉
(千載和歌集 十一恋 大納言なりみち)
△睦語
むつごともまだつきなくに明ぬめり いづらは秋のながしてふよは
(古今和歌集 十九乙女 凡河内みつね)
埋火のあたりに冬はまどゐして むつがたりすることぞ嬉しき
(堀河院御時百首和歌 冬 阿闍梨隆源)
△耳語ササヤク
向峯ムカツヲに立てる桃の樹成りぬやと 人ぞ耳言ササメキし汝ナガ情ココロゆめ
(萬葉集 七雑歌)
△後言アトウガタリ
今こんといひしばかりを命にて まつにけぬべしさくさめのとじ
(後撰和歌集 十八雑)
△倒語(梨アリノミ)
をきかへし露ばかりなるなしなれど 千代ありのみと人はいふ也(相模集)
△妖言オヨヅレゴト・枉言マガゴト
玉梓の 人ぞ言ひつる およづれか 吾が聞きつる 枉言か(下略)
(萬葉集 三挽歌)
たまづさの 使いのくれば うれしみと あがまちとふに およづれの たはこととか
も(萬葉集 十七)
△強言シヒゴト
いなと云へど強ふるしひのが強語シヒコトを このころ聞かで朕ワレ恋ひにけり
いなと謂へどかたれかたれとのればこそ しひいはそうせ強ひこととのる
(萬葉集 三雑歌)
△誡言語
光をばさしかはしてやかゞみ山 峯より夏の月は出らん(十訓抄 二 俊頼)
△呼ヨバフ
しもととる さとをらがこゑは 寝やどまで き立ち呼ばひぬ かくばかり すべなき
ものか 世間ヨノナカの道(萬葉集 五雑歌)
△嘯ウソブク
衣手の 常陸国の ふたなみの 筑波の山を 見まくほり 君が来ますと あつけきに
汗かきなけき きねとりする 嘯ウソブき登り岑上ヲノウエを 君に見すれば(下略)
(萬葉集 九雑歌 大伴卿)
△謡ウタフ
あさぼらけきりたつそらのまよひにも 行すぎがたきいもがかどかな 「とふたかへり
うたひたるに云々」(源氏物語 五若紫)
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