64 夢を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
「夢はイメ、又はユメと云ふ。夢は睡眠中
に発する精神の作用にして、偶々前徴を為す
ことあるに由り、古来夢を以て吉凶を判せし
こと少なからず云々」 SYSOP
真野マノの浦のよどの継橋ツギハシ情ココロゆも 思ふや妹がいめにし見ゆる(下略)
(萬葉集 四相聞 吹黄刀自)
あきさればこひしみいもをいめにだに ひさしく見むをあけにけるかも(中略)
おもはずもまことありえむやさぬるよの いめにもいもがみえざらなくに(中略)
(以上、萬葉集 十五)
まどろまぬかべにも人を見つる哉 まさしからなん春の夜のゆめ
(円珠庵雑記 後撰恋一)
まどろまぬかべにも人をみつるかな まさしからなん春の夜の夢
(後撰和歌集 九恋 するが)
衣手のけさはぬれたる思ひねの 夢ぢにさへや雨のふるらん(躬恒集)
住の江の岸による浪よるさへや 夢の通ひぢ人めよくらん
(古今和歌集 十二恋 藤原としゆきの朝臣)
あはぬよもあふよもまさしいをねらば 夢のたゞちはなれやしぬらん(躬恒集)
恋わびて打ぬるなかに行かよふ 夢のたゞちはうつゝならなん
(古今和歌集 十二恋 藤原としゆきの朝臣)
故郷にかよふたゞちはゆるされん 旅ねの夜半の夢の関守
(新拾遺和歌集 九羇旅 前大僧正実超)
春の夜の夢のうき橋とだえして 嶺にわかるゝよこ雲の空
(新古今和歌集 一春 藤原定家朝臣)
舗妙の枕にだにもふさばこそ 夢の玉しひ下にかよはめ(素性法師集)
春のよの夢にあへりとみえつれば 思ひたえにし人ぞまたるゝ(円珠庵雑記 伊勢集)
思ひつゝねいればみえつ春のよの まさしきゆめにむなしからずな(同 兼盛集)
春のよの夢はわれこそたのみしか 人の上にて見るがわびしき(同 六帖第五)
年くれぬ春くべしとは思ひねに まさしくみえてかなふ初ゆめ(同 西行法師山家集)
廻りきて遂にすむべき月影の しばし陰るを何嘆くらん(吉夢 太平記 六)
むすびあげて五十鈴の川の川水の 久しき代々をなほや仰がん
(霊夢 伊勢大神宮神異記 上)
我が心と望み念へば新夜アラタヨの 一夜も落ちず夢に見えけり
(萬葉集 十二古今相聞往来歌)
わぎもこがいかにおもへかぬばたまの ひとよもおちずいめにしみゆる
(萬葉集 十五)
おもひつゝぬればかもとなぬばたまの ひとよもおちずいめにし見ゆる(中略)
(萬葉集 十五)
君をのみ思ひねにねし夢なれば わが心からみつる成けり
(古今和歌集 十二恋 みつね)
夢にても夢としりせばねざめして あかね別の物はおもはじ(安法法師集)
夢さめてねざめの床のうくばかり こひきとつげよ西へ行月(更級日記)
ときのまもなぐさめつらむ君はさは 夢にだに見ぬわれぞかなしき
(大鏡 二 左大臣時平 先坊)
御返事
恋しさはなぐさむべくもあらざりき ゆめのうちにも夢と見しかば(同 大輔)
おもひきや夢のなかなるゆめにても かくよそよそにならんものとは
(栄花物語 二十七衣珠)
世をしれとひきぞあはする初春の 松のみどりも住よしの神
(霊夢 夢想記 豊臣秀吉)
唐も夢にみしかば近かりき 思はぬ中ぞはるけかりける
(古今和歌集 十五恋 けんせい法し)
吾妹児に恋ひてすへなみ白たへの 袖かへしゝは夢に見えきや
吾が背子の袖かへす夜の夢ならし 真も君にあへりしがごと
(萬葉集 十一古今相聞往来歌 問答)
[次へ進んで下さい]