62 心を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
いで人は事のみぞよき月草の うつし心は色ことにして
                     (古今和歌集 十四恋 よみ人しらず)
 
君ををきてあだし心をわがもたば 末の松山浪もこえなん(古今和歌集 二東歌)
 
山はさけ海はあせなん世成とも 君にふた心我あらめやも(金槐和歌集 述懐)
 
たをやめのけふぬぎかふる衣手の ひとへごゝろは我身なりけり
                            (新撰六帖 一 光俊)
 
ちらさじとおしみをきけることの葉を きながらだにぞけさはとはまし
                               (蜻蛉日記 上)
 
あしびきの山下水のこがくれて 滝つ心をせきぞかねつる
                      (後撰和歌集 十二恋 よしの朝臣)
 
いせの海にはへてもあまるたくなわの ながき心は我ぞまされる
                      (後撰和歌集 九恋 よみ人しらず)
 
いでいかにねもころころに利心トコゴロの 失ウスるまで念ふ恋ふらくの故
                        (萬葉集 十一古今相聞往来歌)
 
あさよひにねのみしなけばやきだちの とごころあればおもひかねつも
                          (萬葉集 二十 藤原夫人)
 
心ねのほどを見するぞあやめぐさ 草のゆかりにひきかけねども(和泉式部集 五)
 
忍ぶ山しのびてかよふ道もがな 人の心のおくも見るべく(伊勢物語 上)
 
人はかる心のくまはきたなくて 清きなぎさにいかで行けん
                        (権中納言兼輔卿集 前編九古)
 
まがなしみぬればことにづさねなへば こころのをろにのりてかなしも
                             (萬葉集 十四東歌)
 
恋そめし心の色のなになれば おもひかへすにかへらざるらん
                   (千載和歌集 十四恋 太皇太后宮小侍従)
 
みちのくのあだちのはらのしらま弓 心こはくも見ゆる君かな
                     (拾遺和歌集 十四恋 よみ人しらず)
 
つれなきを今は恋じと思へども 心よはくもおつる涙か
                   (古今和歌集 十五恋 すがのゝたゝをむ)
 
今ははや打とけぬべき白露の 心おくまで夜をやへにける
                         (倭訓栞 前編九古 後撰集)
 
ふかきうみのちかひはしらずみかさ山 心たかくもみえしきみ哉
                 (後拾遺和歌集 十九雑 堀河右大臣藤原頼宗)
 
春日山霞たなびき情ココロぐく 照れる月夜に独りかもねむ
                         (萬葉集 四相聞 坂上大嬢)
 
情ぐきものにぞありける春霞 たなびく時に恋の繁れば(萬葉集 八春相聞)
 
ぬす人といふもことはりさ夜なかに 君が心をとりにきたれば(金葉和歌集 八恋)
 
東人アヅマドののざきのはこのにのをにも 妹が情に乗りにけるかも
                         (萬葉集 二相聞 久米禅師)
 
出ていなば心かるしといひやせん 世のありさまを人はしらねば(伊勢物語 上)
 
おぼつかな曇れる空の月なれば 心やましきよはにもある哉(藤原清正集)
 
もののふの やそとものをの おもふどち こゝろやらむと うまなめて うちくちぶ
りの しらなみの ありそによする(下略)(萬葉集 十七)
 
河舟にのりて心の行ときは しづめる身ともおもほえぬかな
                    (後拾遺和歌集 十七古 大江匡衡朝臣)
 
船とめしみなとのあしまさほたへて 心ゆくらん五月雨のころ
                      (夫木和歌抄 八五月雨 西行上人)
 
いとによる物ならなくに別ぢの 心ぼそくもおもほゆる哉
                       (古今和歌集 九羇旅 つらゆき)
 
たちもとほりゆきみの里に妹を置きて 心空ソラなり土は蹈フめども
                        (萬葉集 十一古今相聞往来歌)
 
心あてにおらばやおらんはつ霜の おきまどはせる白菊の花
                      (古今和歌集 五秋 凡河内みつね)
 
人のおやの心はやみにあらねども 子を思ふみちにまどひぬるかな
                       (後撰和歌集 十五雑 兼輔朝臣)
 
あしびきの 八峯ヤツヲふみ越え さしまくる 情ココロ障らず 後代ノチノヨの かたりつぐべ
く 名をたつべしも(中略)(萬葉集 十九)
 
心がへする物にもかかたごひは 苦しき物と人にしらせん
                     (古今和歌集 十一恋 よみ人しらず)
 
かりそめの心くらべにあふ事の 命もしらぬみとはしらずや(藤原元真集)
 
物思ひの心くらべのかた人に なるともまけじたぐひなき身は
                       (散木葉謌集 九雑 沙弥能貪上)
 
いかでわが心の月をあらはして やみにまどへる人をてらさむ
                      (詞花和歌集 十雑 左京大夫顕輔)
 
しぐれつゝもみづるよりも言のはの 心の秋にあふぞわびしき
                     (古今和歌集 十五恋 よみ人しらず)
 
いろみえでうつろふ物は世中の 人の心の花にぞありける
                        (古今和歌集 十五恋 こまち)
 
小山田の苗代水はたえぬとも 心のいけのいひははなたじ
                     (後撰和歌集 十一恋 よみ人しらず)
 
ながゝらぬ命のほどに忘るゝは いかに短かきこゝろならるん
                           (倭訓栞 中編二十五美)
 
水鶏だにたゝけば明る夏のよを 心みじかき人や帰りし(古今和歌六帖 六鳥)
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