61a 生命を詠める和歌
 
△蘇生
海若ワタツミのおきに持ち行きて放つとも うれもぞ此れが死に還り生かん
                              (萬葉集 三雑歌)
 
いもひにし死にするものに有らませば 千遍チタビぞ吾れは死に変へらまし
                          (萬葉集 四相聞 笠女郎)
 
出ていなばたれか別のかたからん ありにしまさるけふはかなしも(伊勢物語 上)
 
△死
いさな取り 海や死にする 山や死にする 死ねばこそ 海は潮干シホヒて 山は枯れすれ
                         (萬葉集 十六有由縁並雑歌)
 
高照らす 日の皇子ワカミコは 飛鳥の 浄めし宮に 神のまに ふとしきまして 天皇
スメロギの しきます国と 天の原 石門イハトを開き 神カム上がり 上がりいましぬ(下略
)(萬葉集 二挽歌)
 
掛けまくも ゆゝしきかも 言はまくも 綾に畏き 明日香の 真神マガミの原に 久堅
の 天津アマツ御門ミカドを かしこくも 定め賜ひて 神さふと 磐隠れます やすみしゝ
吾が大王オホキミの 聞かし見し(下略)(萬葉集 二挽歌 柿本朝臣人麿)
 
ももづたふ磐余イハレの池に鳴く鴨を 今日のみ見てや雲隠れなむ
太皇スメロギの 命ミコトかしこみ 大荒城オホアラキの 時には有らねど 雲隠れます
留トドめえぬ寿イノチにしあれば敷細シキタヘの 家をば出でて雲隠れにき
                           (以上、萬葉集 三挽歌)
 
などてかく雲かくるらんかくばかり のどかにすめる月もあるよに
                      (後拾遺和歌集 十哀傷 命婦乳母)
 
草ふかき霞のたにゝ影かくし てる日の暮しけふにやはあらぬ
                    (古今和歌集 十六哀傷 文屋やすひで)
 
△辞世
つゐに行道とはかねてきゝしかど 昨日けふとは思はざりしを
                   (古今和歌集 十六哀傷 なりひらの朝臣)
 
かりそめの行かひぢとぞ思ひしを 今はかぎりのかどでなりけり(大和物語 下)
 
我はもよをはりなるべしいざ児ども ちかくよりませよく見て死なむ(泊泊筆話)
 
△死雑載
ねがはくははなのもとにて春思なん その二月のもち月のころ
                      (古今著聞集 十三哀傷 西行法師)
 
△長命
たまきはる うちのあそ なこそは よのながひと そらみつ やまとのくにゝ かり
こむと きくや
たかひかる ひのみこ うべしこそ とひたまへ まこそに とひたまへ あれこそは
よのながひと そらみつ やまとのくにゝ かりこむと いまだきかず
                              (古事記 下仁徳)
 
なゝつぎのみよにまわへるもゝちまり とをのおきなのまひたてまつる
おきなとてわびやはをらむくさもきも さかゆるときにいでゝまひてむ
                           (続日本後紀 十五仁明)
 
△年齢
年ふればよはひはおいぬしかはあれど 花をしみれば物思ひもなし
                        (古今和歌集 一春 藤原良房)
 
「霊」
[次へ進む] [バック]