61 生命を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
                    「生命は、邦語之をイノチと云ひ、霊魂は
                   タマ又はタマシヒと云ふ。霊魂は不滅と信ぜ
                   られ、其人体に存在する間を生と云ひ、其出
                   離したるを死と云ふ。因て又霊魂に生霊、死
                   霊の別あり。上古は霊魂を分ちて和魂、荒魂、
                   幸魂、奇魂の四種と為し、其人体を遊離せん
                   ことを恐れて、為に鎮魂、招魂等の法を修せ
                   しことあり云々」         SYSOP
 
いまこそは ちどりにあらめ のちは などりにあらむを いのちは なしせたまひそ
(下略)(古事記 上)
 
いのちの またけむひとは たゝみこも へぐりのやまの くまかしかはを うずにさ
せ そのこ(下略)(古事記 中景行)
 
おほきみに かたくつかへ まつらむと わがいのちも ながくもがと いひしたくみ
はや あたらたくみはや
ぬばたまの かひのくろこま からきせば いのちしなまし かひのくろこま(中略)
                         (以上、日本書紀 十四雄略)
 
契をきしさせもが露を命にて あはれことしの秋もいぬめり
                       (千載和歌集 十六雑 藤原基俊)
 
年たけて又こゆべしと思ひきや 命なりけりさ夜の中やま
                      (新古今和歌集 十羇旅 西行法師)
 
うち日刺す 宮路ミヤヂを行くに 吾が裳破れぬ 玉の緒の 念ひすてゝも 家にあらま
しを(萬葉集 七雑歌)
 
玉のをよたえなばたえねながらへば 忍ぶることのよはりもぞする
                     (新古今和歌集 十一恋 式子内親王)
 
いきの緒に念へる吾れを山ちさの 花にか君が移ろひぬらむ(萬葉集 七譬喩歌)
 
たゞにあひて見てははみこそ霊剋タマキハル 命に向わが恋やまめ
かくしつゝあらくをよみにたまきはる みじかき命をながくほりする
                             (以上、袖中抄 十)
 
かくのみし恋ひし渡れば霊刻タマキハル 命も吾れは惜しけくもなし(萬葉集 九相聞)
 
△霊魂
尋ね行まぼろしもがなつてにても 玉のありかをそことしるべく(源氏物語 一桐壷)
 
物思へばさはのほたるもわが身より あくがれ出る玉かとぞみる
                   (後拾遺和歌集 二十神祇 いづみしきぶ)
 
恋しなばうかれん玉よしばしだに 我思ふ人のつまにとゞまれ
                     (千載和歌集 十五恋 左兵衛督隆房)
 
たましひはあしたゆふべにたまふれど あがむねいたしこひのしけきに
                        (萬葉集 十五 中臣朝臣宅守)
 
とほ長く仕へむものと念へりし 君しまさねば心神タマシヒもなし
                       (萬葉集 三挽歌 大納言大伴卿)
家さかりいます吾妹ワギモをとゞめかね 山かくれつれ精神タマシヒもなし
                             (同 大伴宿禰家持)
 
たぐへやる我玉しゐをいかにして はかなきそらにもてはなるらん(大和物語 上)
 
玉はみつ主はたれともしらねども 結留めつしたがゑのつま
                          (台記 拾芥抄 上本諸頌)
 
生けるひと遂にも死ぬるものにあれば このよなるまは楽しくをあれな
                              (萬葉集 三雑歌)
 
生き死にの二つの海をいとひ見て 潮干シホヒの山をしぬびつるかも(中略)
                         (萬葉集 十六有由縁並雑歌)
 
ことさらにしなんことこそかたからめ いきてかひなく物思ふ身は(躬恒集)
 
恋しなむ後はなにせんいける日の ためこそ人は見まくほしけれ
                       (拾遺和歌集 十一恋 大伴百世)
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