34b 短歌文法「代名詞・接続詞・連体詞・感動詞」
〈接続詞〉
文節や,文を接続する。
ある-は(或は) または。あるとき。あるものは。「あるいは」とも。例「或は来ん次
のたよりをおそれつゝ・・」「・・さまざまにして或は飛びき」
さ-て 上の文を受けて下の文に続けたり,話題を変えるときに用いる。口語で,そうし
て。ところで,の意。例「・・誠をつくしさて忘れなん」「・・さてこの後ノチは何をなす
べき」
さら-ば 前に述べた事柄を受けて,次ぎに新しい判断をするときに用いる。口語で,そ
れなら。それでは。そうすれば,の意。例「・・雪降るさらば明日も降りなむ」
され-ど そうではあるが。しかし。だが。例「はかなくて別れんされどこの恋は・・」「
(千年のつきひはすぎ行かむ)されど星は地にかへり来コぬ」
され-ば そうであるから。だから。それゆえ。例「君が手もふるへぬさればわが心・・」
「敗乱のことばに寄らむされば今夜・・」
しか-も(然も)@なおその上に。例「(京みやげ)清水焼とよしかも盃」「鶴のとぶを
初めて見たり然もこは・・」
Aそれでいて。それにもかかわらず。例「月照りてしかも雨ふる暁アケを行くや・・」「
(やさしみてわれは思へど)否イナみつつしかも容れつつ人のこころは」
しから-ば(然からば) そうであるなら。それなら。そうすれば。例「思ふこと然から
ば聴かむ言へといへど・・」
しかれ-ども(然れども) そうではあるが。それでも。しかし。例「鉢植の梅はいやし
もしかれども・・」「街上を電車は走る然れども岩山をつたふ・・」「夏休み貰ふ日近し
しかれども・・」
すなはち(即ち・乃ち)@その時に。そこで。そして。例「・・円日エンジツ海にありすなは
ち海へと下りけるかも」
Aしかるに。例「目を閉づれすなはち見ゆる淡々し・・」
また(又・亦) その上。かつ。例「・・湯けむりのぼるそこにまたここに」「・・或いは
嘆きいふまた怒りいふ」「・・またしろがねの繭と思はむ」
〈連体詞〉
体言を装飾する。
あたら 惜しむべき。勿体モッタイない。折角の。立派な。例「みちのくのあたらわか木の
花ざくら・・」
ある(或) はっきりと分からない時・物事・人などを指す。又は特定の時・物事・人
とはっきり限定しないで指す。例「(夏霧は真下の谷にうごき居る)或る時は青々アヲ
アヲとしたる底見ゆ」「或時は事に憤り人を攻むる・・」「・・或る楽章をわれは思ひき」
かかる(斯かる) こんな。こういう。このような。例「かかる目にすでに幾度会へる
ことぞ・・」「わかき身のかかる嘆きに世を去ると・・」「かかる時突きつけられし白き
刃ハの・・」「(菜の花・・)春ごとにかかるきみとの記憶」「・・かかるいとまのかつてな
かりし」「・・日の輝きもかかる色なる」
と-ある 或る。ちょっとした。例「とある夜のしづけさ深くしみ入りて・・」「とある家
の門にねて居てわれを見し犬の・・」「とある日に酒をのみたくてならぬごとく・・」
〈感動詞〉
感動,呼びかけ,応答の意を表す。
ああ 驚き・感動・嘆きを表す。例「嗚呼アアかしこ荒れたる丘の草の上に・・」「ああ嘆
くな石道をゆくわが影の・・」「ああ街は十二月にして喧噪は・・」
あな 喜怒哀楽の感情の高まりを表す。口語で,ああ。あら,の意。多く下に形容詞の
語幹が来る。例「あした見てあなさやけみとゆふべ見てあなゆたけみと(青田廻りす
)」「(牛尾菜シホデ)青きを拾ふあなをしあなをし(惜し)」「(はなびら)落つる
ときあなと云ひしばかりを」「・・あな飲食オンジキの者を遠ざく」「あなしづか父と母と
は一言ヒトコトの・・」
あな-に-やし 強い感動を表す。口語で,ほんとうに。まあ,の意。「あなにゑや」と
も。例「夕あかり合歓の匂ひのあなにやし・・」
あな-や ああ。ああまあ。あらら。例「あなや今背戸はを暗く日も見えず・・」「月見さ
う蕾まもれる幼きらあなやと手たたく(その開く花に)」
あはれ 喜び,賞美,愛情・愛惜,悲しみなどの気持ちを表す。現在はしみじみとした
情感,感慨・嘆息を表すことが多い。例「子を叱るあはれこの心よ・・」「・・あらはれ
たりしまぼろしあはれ」「(東天紅)あはれほろびのわれのまぼろし」「あはれ広く
なる交はりよ生酔ひの幇間ホウカン・・」「・・かぎろひが立ちあはれ閑けし」「山おりてち
またに入ればあはれあはれ・・」
いざ 人を誘うとき,自分が思い立ったときなど,行動を起こすときに「さあ」と弾み
をつける語。例「寧楽ナラへいざ伎芸ギゲイ天女テンニョのおん目見に・・」「こよひこそいざ
見にゆかん東山・・」「偏狂もおほかたにしていざこれより・・」
いで @感動したとき「いやもう」「ほんとうに」と自分に言い聞かせる語。
A決意するときに「さあ」と言う語。例「いでいかに思ひ定めむ流しやる・・」
お-お 思い当たったとき,また,驚いて感動するときに表す。例「・・おお青竹の青き閃
き」
これ(此) 文の語調を調え,また強める語。例「これはこれわが本心か十年の・・」「
これやこのわれとて水呑百姓の・・」
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