34 短歌文法「代名詞・接続詞・連体詞・感動詞」
 
        短歌文法「代名詞・接続詞・連体詞・感動詞」
 
                      参考:飯塚書店発行「短歌文法辞典」
 
〈代名詞〉
 
 事物の名に代えて,直接にそのものを指示して云う語。人代名詞と,指示代名詞の二
種類がある。
 
あ(吾・我) 一人称の代名詞。口語で,わたくし。わたし。われ,の意。例「・・あを
 思ふゆゑにわれすべもなし」「・・我アの中に馴らすかなしみふかき」「口あけて老母ハハ
 も吾が子も吾アもねむる・・」
 
あなた(彼方)@話し手より遠く隔てた方向を指す。口語で,向こうの方。かなた。あ
 ちら,の意。例「・・あなたの町の屋根白くみゆ」「太陽は山の厚みの彼方なれば・・」
 A転じて口語で,以前。昔。今より前,の意。例「・・歳月の彼方に消えし思をぞ恋ふ
 」
 
あれ(我・吾) 一人称の代名詞。口語で,われ。わたくし,の意。例「・・潮もぐり悲
 しき息をこらすや吾アレはや」
 
あれ(彼) 遠くにある物・事・所などを指す。口語で,今の。それ。あそこ,の意。
 例「あれは海の哭くこゑ春の森・・」
 
いづ-かた(何方)@不定の場所を指す。口語で,どこ,の意。
 A不定の方向を指す。口語で,どちら。どっち,の意。例「胸ふかく花さくや霜いづ
 かたに・・」「春塵シュンヂンのいづ方となき日のまぎれ・・」
 
いづ-く(何処) 不定の場所を指す。口語で,どこ。どちら,の意。例「・・生けるしる
 しは何処にかある」「・・何処にか真紅の花々は咲け」「旅恋へばいづくの川とわかな
 くに・・」
 
いづ-こ(何処) 不定の場所を指す。口語で,どこ,の意。例「・・都はいづこ君はいづ
 こぞ」「・・いづこより来し水のながれか」「・・何処に棲むも旅愁ばかり」「いづこに
 も貧しき道がよこたはり・・」
 
いづち(何方・何処) 不定の方向・場所を指す。口語で,どちら。どの方。何処,の
 意。例「ひんがしは何方と見れば背面ソガヒなる・・」「・・恐山いづち四方の雪山」「・・
 いづちを迷ひわれに来りし」
 
いづ-へ(何処辺) いずれの方向。どちら。どのへん。「いづべ」とも。例「・・いづへ
 の海に行きて眠らむ」「母の霊いづべの家に守るべき・・」「我を思ふ母をおもへばい
 づべにか・・」「・・いづべへもわれは逃ノガるるならず」「・・いづべの空にきみを思はむ
 」
 
いづら(何ら) 不定の場所・方向を指す。口語で,どこ。どちら,の意。例「・・いづ
 らかと思ふ少年少女寮」「店のうちのいづらとざさぬ扉ある・・」「(夜空に啼く鷺)
 いづらの水におりむとすらむ」
 
いづれ(何れ・孰れ)はっきりとは決めないで,又は分からないままに,物・事を言う
 のに用いる。口語で,どれ。どこ。とちら。何。いつ,の意。例「視ると聴くとその
 いづれとふいよをかし・・」「ゆめみしはいづれも知らぬ人なりき・・」「・・いづれを見
 ても憎しとおもはず」「・・いま坂をゆく一日の幻マボロシいづれ」「・・黒白コクビャクいづれ
 見るべくもなし」
 
いづれ-も(何れも) 複数のものを指す。口語で,どれも。すべて,の意。例「・・秋の
 ひびきをいづれも立てて」「・・訪はむいづれも葦の青立つ」
 
いまし(汝) 二人称の代名詞。口語で,あなた。おまえ,の意。例「(をさなご・・)
 いまし負オブれば竹群タケムラに来クも」「独り身に病める汝に世の中の・・」
 
おの(己) 一人称の代名詞。口語で,わたくし。自分,の意。例「来し方を思へばは
 かなおのが世の・・」「・・おのがすがたのそのままにこそ」「斯くあるも己オノがさだめ
 と諾ウベナはむ・・」
 
おの-れ(己) 一人称の代名詞。口語で,わたくし。自分,の意。卑下して言うことが
 多い。例「いたりえぬ己さびしみゐしときに・・」「・・殆どおのれ守りかねつつ」
 
か(彼)@話し手にも聞き手にも近くない人・物・事を指す。口語で,あの。あれ。あ
 ちら,の意。例「郊外カウグワイをか往きかく往き坂のぼり・・」「彼の岸に想へる母が吐
 息する・・」
 A「何」「誰」などと対応して,漠然と物事を指す。例「老人のうしろ姿は誰もかも
 ・・」
 
かし-こ(彼処) 話し手から遠く隔たった場所を指す。口語で,あそこ,の意。例「向
 う野山の大きな斜面彼処カシコには・・」「・・おそ桜いまさかりなりここにかしこに」
 
かなた(彼方) 話し手から遠く隔たった場所・方向を指す。口語で,あちら。向こう
 側,の意。例「夕澄みの空のかなたに行きしのみ・・」「・・白く塗りささやかに住める
 かなたに」「窓枠のかなた光を聚アツめたる・・」「渋民の村の街道かなたに見ゆ・・」
 
かれ(彼) 話し手に属しない遠い,また明らかでない事・物・人などを指す。口語で,
 あれ。あの人,の意。例「・・彼のいのちの死せざらめやも」「(くる歳の喪中・・)手
 紙の中に彼の名もあり」
 
きみ(君) 二人称の代名詞。親しい人に用いる。口語で,あなた,の意。例「・・君と
 の道も別れゆくべし」
 
こ(此・是) 話し手に近い事・物をさす。口語で,ここ。これ。この,の意。例「・・
 吉野の宮のこやあとどころ」「あなやこはゆく手もはても薄氷ウスラヒの・・」「・・この風
 のこの寒さには今は堪へ得ぬ」
 
こ-こ(此処・此所)@話し手に最も近い所を指す。口語で,この場所。この国。この
 世,の意。例「・・未来がここにありと思はず」「・・此処の巌間にひそかなるかも」「
 (妻が魂)天翔アマガケり来て今は此所に居む」「ふるさとの沖津オキツ潮騒シホザイこゝにだ
 に・・」
 A話し手が自分に関わりが深い事として意識する事柄を指す。口語で,この事。この
 点,の意。例「・・孤独なるものまたここにあり」
 B現在を中心として過去・未来の時にを限定して言う。例「・・別れゆくここより無限
 に」
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