3301c 短歌文法「助詞」
 
や(間助)@感動,詠嘆を表す。例「・・苦しむことのあはれ愚や」
 A名詞に付いて,口語で,・・の。・・は,の意を表す。例「(・・降る雪の)日のくれぐ
 れやいのちまがなし」
 B語調を調えて,軽い感動の意を表す。例「今朝の朝の露ひやびやと秋草や・・」「こ
 の道や春の埃の風ふけば・・」[以上いろいろの語に付く。]
 
や(係助)@疑い表す。例「(草抜き)不用意に自らのもの摘みしや」「(君が肌)し
 みとほりてや今宵冷たき」「庭の雪にかかりやせむとこの朝げ・・」
 A問いを表す。口語で,・・の意。例「・・人をまことのわれと思ふや」「・・その遠き音
 になにのひそむや」「この歌を読むらん人の誰ありや・・」
 B反語の意を表す。口語で,・・の意。例「愚かとしただに言はめや自らの・・」「・・浅
 黄の空を凡オホにし見めや」[以上いろいろの語に付く。]
 
や-も(終助) 係助詞「や」の間投助詞「も」が連なったもの。反語を表す。口語で,
 ・・であろうか,いやそんなことはない,の意。動詞,助動詞の已然形に付く。例「・・
 堪へられめやもそを思ふものは」「・・母なるものを恋ひざらめやも」「・・わがなき父
 にまたあはめやも」
 
ゆ(格助)@動作の時間的・空間的起点を表す。口語で,・・から。・・より,の意。例「
 あらためていははじほがじ今ゆ後も・・」「今日一日妻の手紙ゆジャスミンの・・」「睡
 らむとしてみどり子はその口ゆ・・」
 A移動する動作の経過点を表す。口語で,・・を通って。・・から,の意。例「わが胸ゆ
 海のこころにわが胸に海のこころゆ・・」
 B比較の基準を表す。口語で,・・よりも,の意。例「崖下の人家ジンカの上に岬ゆも・・
 」[以上体言に付く。]
 
よ(間投)@詠嘆,感動を表す。口語で,・・の意。例「いのちなき砂のかなしさよさら
 さらと・・」「・・われを罵る舌の紅さよ」
 A呼びかけを表す。口語で,・・の意。例「・・雪よ林檎の香のごとくふれ」
 B強く指示する。例「・・つかひ古したる顔よなげきぬ」[以上いろいろの語に付く。
 ]
 C命令の意を強く確認する。動詞,助動詞に付く。例「あたたかく照れよ冬の日たま
 たまに・・」
 
よ(格助)@動作・作用の時間的・空間的な起点を表す。口語で,・・から,の意。例「
 この山の杉の木の間よ夕焼の・・」「仰ぎ見る低き細枝よさきがけて・・」
 A動作・作用の経由する場所を示す。口語で,・・を通って,の意。
 B手段・方法を示す。口語で,・・で,の意。[以上体言,活用語の連体形に付く。]
 
より(格助)@動作・作用の起点を表す。口語で,・・から。・・以来,の意。例「ながれ
 よりかなしみ来るながれより・・」「(乳房)癌の組成を何時よりと知らず」「帰り来
 て腕より腕にわたされし(幼な子)」
 A動作・作用の経過地点を表す。口語で,・・を通って,の意。例「沖べより吹きとほ
 し来るうしほ風・・」
 B動作・作用の手段方法を表す。口語で,・・で,の意。例「電車よりその折々にこほ
 しみし・・」
 C比較の基準を表す。口語で,・・よりも,の意。例「昨日よりけふ一山の冴えて見ゆ
 ・・」
 D即時の意を表す。口語で,すぐに,の意。例「・・を見しより」[以上体言及び用言,
 助動詞の連体形に付く。]
 
ろ(間助)@感動を表す。口語で,・・よ,の意。文末の終止形や命令形などに付く。例
 「よみにあり人思はずろうつそみの・・」
 A「ろかも」の形で感動を表す。口語で,・・よ。・・なあ,の意。体言及び形容詞の連
 体形に付く(接尾語又は終助詞とする見方もある)。例「・・うかべし舟は羨トモしきろ
 かも」「・・美濃のやきものかなしきろかも」
 
ゑ(間助) 嘆息の混じった詠嘆を表す。口語で,・・よ,の意。文節の末に付く(終助
 詞とする見方もある)。例「(牛肉と刺身を食べる)一人のみしたるおごりさびしゑ
 」「・・おもはむ時に吾は楽しゑ」
 
を(間助)@文中にも用いるが,多くは文末に用いて,感動,詠嘆を表す。口語で,・・
 なあ。・・なのになあ,の意。例「(雨)降りひびくかも酒尽くるころを」「(水仙)
 たまねううべきひまのあらまし」
 A体言を受け,形容詞語幹に接尾語「み」の付いたものに続いて,「・・を・・み」の形
 で原因,理由を示す。口語で,・・が・・ので,の意。例「海照す月を涼しみ灯の見ゆる
 ・・」「針尾山ハリヲヤマ風をいたみか降りおける・・」
 
を(格助)@動作の対象を示す。例「後背の似たるを追ひて(幾年か街に)老母のおぼ
 ろしきを見き」「・・ざつくばらんのもの言ひをする」
 A動作の起点を示す。例「家を出て五町ばかりは用のある・・」
 B経過する場所を示す。例「・・眼マナコ光らせ雑踏を来る」
 C持続する時間を示す。例「三十年を貧しき絵描きに添ひし母が・・」「花どきを何に
 こもるときくな君・・」「・・このまま夜をなに舞はむ」
 D格助詞「に」の動作,感情の対象を表す用法と同じ。口語で,・・に,の意。例「ま
 こと人を打たれむものかふりあげし袂・・」[以上体言,活用語の連体形に付く。]
 
を(格助)@上の句に対して矛盾していることを表す。口語で,・・のに,の意。例「死
 にければ人は居らぬを過アヤマちて・・」「かがまりて見はれば荒き地ツチなるを・・」
 A下の句に対する理由,原因を表す。口語で,・・ので,の意。例「努めても努めても
 事は終らぬを・・」
 B上の句と下の句を結ぶ。口語で,・・と,の意。例「蝶の飛ぶ春なるかなと見てをる
 を小鳥ぞといふに・・」[以上活用語の連体形に付く。体言に付くこともある。]
 
を-ば 格助詞「を」に係助詞「は」が連なって濁音化したもの。物事の対象を強く示す
 意を表す。体言,活用語の連体形に付く。例「・・六十ムソヂの世をば負ひ持ち死なむ」
 「おのれをば鍛ウちなほさまくと腕組むや・・」
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