33 短歌文法「助詞」
 
              短歌文法「助詞」
 
                      参考:飯塚書店発行「短歌文法辞典」
 
〈助詞とは〉
 
 助詞は,語と語との関係を示し,また,語に一定の意味を添える働きをします。その
働きにより,次の6種類に分けられます。
  
格助詞 体言又は体言に準ずる語(用言・助動詞の連体形)などに付いて,その文節が,
 それを受ける文節に対して,どういう関係に立つかを示します。本稿中(格助)と略
 記します。
 が・の・に・を・へ・と・より・から・にて・して等。
 
接続助詞 用言又は用言に準ずる語などに付いて,それの付いた語の意味を,次の用言
 又は文節に続けます。本稿中(接助)と略記します。
 ば・と・とも・ども・が・に・を・も・て・つつ等。
 
係助詞 いろいろの語に付いて,助詞を含む文節に一定の意味を添え,それを受ける文
 節に特定の約束を加えます。本稿中(係助)と略記します。
 は・も・ぞ・こそ・や・か等。
 
副助詞 いろいろの語に付いて,ある意味を添え,副詞のようにそれを受ける文節を修
 飾します。本稿中(副助)と略記します。
 だに・すら・さへ・のみ・ばかり・など・まで等。
 
終助詞 文末で,いろいろの語に付いて,詠嘆・願望・疑問・禁止などの意味を添え,
 文を終止します。本稿中(終助)と略記します。
 な・がな・がも・か・かな・かも・かし・な等。
 
間投助詞 文節の末で,いろいろの語に付いて,語勢・語調を整え,余情を添え,感動
 を表します。本稿中(間助)と略記します。
 よ・や・し・を等。
 
〈助詞〉
 
いで(接助) 打消の意を表す。口語で,・・ないで,の意。動詞,助動詞の未然形に付
 く。例「・・鮑アハビ取らいで何思モふらむ」
 
か(終助) 詠嘆,感動を表す。口語で,・・だなあ,の意。体言,活用語の連体形に付
 く。例「・・微かに顫フルふわれの心か」「寒けくも降り来る雪か・・」「・・かくある日日
 を楽しといふか」「・・人のいのちはやもあらぬか」「(・・枸杞クコ味噌汁・・)硬きとこ
 ろあり春もたけしか 」
 
か(係助)@疑問,不定を表す。口語で,・・か。・・だろうか,の意。例「雪かおくとお
 どろき見るや窓近く・・」「ありの侭ママにていまか過ぎゆかむ友に・・」
 A疑問の意を表す語を伴い,疑問,不定を表す。口語で,・・か。・・だろうか,の意。
 例「・・ゆく春のかなしさ満てり来よ何か泣く」
 B疑問の意を表す語を伴い,反語を表す。口語で,・・であろうか,いや・・ではない。
 ・・であろうか,いや・・でありはしない,の意。例「あまたあるみそらの星のいづれを
 か・・」
 C並列して疑問,不定を表す。口語で,・・か,それとも・・か。・・だろうか,それとも
 ・・だろうか,の意。例「昔見し人かあらぬか夕ぐれの・・」[以上は文中で用いる場合
 で,体言,活用語,副詞,助詞に付く]
 
 D疑問,不定を表す。口語で,・・か。・・だろうか,の意。例「・・透きとほりつつ冷え
 ゆくらむか」
 E疑問の意を表す語を伴い,疑問,不定を表す。口語で,・・か。・・だろうかの意。例
 「風荒く満ち散らしたる何の葉か・・」
 F打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」に付いて願望を表す。口語で,・・ないかなあ,
 の意。例「・・恐らく今日の我にはあらぬか」
 G体言「もの」に付いて,反問を表す。口語で,・・ものであろうか。・・ことがあろう
 かの意。例「かうもおだやかな心になれるものか・・」「愛情は激しきものか・・」
 H「かも」「かは」の形で反語を表す。口語で,・・だろうか,いや・・ではない,の意。
 例「・・と今日は言はむかも鬼にもなりて」
 I並列して疑問,不定を表す。口語で,・・か,それとも・・か。・・だろうか,それとも
 ・・だろうか,の意。例「死の前か命の前今あるは・・」「・・消なむ心か燃えむ心か」「
 なほ多く悔ゆる日無きか・・」「・・なほ深く心傷つく時のあらぬか」[以上は文末で用
 いる場合で,体言,活用語,副詞,助詞に付く]
 
 J動詞の已然形に付いて疑問を表す。口語で,・・か。・・だろうか,の意。例「日の暮
 れに物を思へかわき知らに・・」
 
か(副助) 並列して,どれか一つを選択する意を表す。体言,活用語の連体形に付く。
 例「・・白鬼か青鬼か餓鬼か餓鬼なら逃すな」
 
が(終助) 軽い詠嘆の意を表す。文末に付く。例「・・荒磯アリソに沿ひて久しかりしが」
 「・・ただよひてしばしやさしがりしが」
 
が(格助)@名詞に付いて,主語を表す。また接尾語「さ」の付いた述語を伴い,その
 主語を表す。例「子の篭手コテを繕ふ妻が灯のもとに・・」「・・歯をくひしばり泣くなる
 兄が」「・・提燈チャウチン祭見るが羨トモしさ」「・・・・つぶさに人といふがかなしさ」
 A名詞に付いて,所有,所属,同格,分量,類似などを表し,下の名詞を修飾する。
 例「ひた走るわが道くらししんしんと堪コラへかねたるわが道くらし」「君が手に我が
 手かさねつ・・」
 B名詞以外のものに付いて,その語が下の名詞を修飾することを表す。例「・・はた悲
 しみを消さむがためか」「熊蜂のうなるが下にかがみたり・・」
 C原因,状態を表す。多くは「ごと」「ごとし」「まにまに」「からに」などが後に
 続く。例「・・断崖キリギシの面オモは愁ふるがごと」「欲るがままに買ひ・・」
 D希望,好悪,能力の対象を表す。例「曖昧をのこすがよしと・・」「友がみなわれよ
 りえらく見ゆる日よ・・」[以上体言,活用語の連体形に付く]
 
が(接助)@場面を与えて,前置きとし,重要な語句を導き出す語。例「ふと立ちて行
 きしがやがて・・」「ためらはず手を振りゐしがたちまちに・・」
 Aある事柄が反対の結果になったり,食い違う事柄に移って行くことを表す。口語で,
 ・・けれど,の意。
 [活用語の連体形に付く]
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