28 布帛を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
「絹布を織成するの術は、神代の時既に之
あり。而して応神雄略の両朝には、外国の工
人来朝し、其子孫には朝廷より地を賜ひて、
之を諸処に安置し、以て専ら此業を営ましむ。
允恭天皇の時、服部連の祖麻羅宿禰を織部司
に任じて、諸国の織部を総領せしめらる。大
宝令の制にも、又織部司を置きて、挑文師、
挑文生をして、錦綾を織ることを掌らしめ、
和銅四年、挑文師を諸国に遣わして、其織法
を伝習せしめし事あり云々」 SYSOP
△織機
(前略)めどりの わがおほきみの おろすはた たがたねろかも(下略)
(古事記 下仁徳)
をとめらが織機オルハタの上ヘを眞櫛マグシもて かゝげたくしま波間より見ゆ
(萬葉集 七雑歌)
ちなにはも人は云ふとも織りつがむ 我がはた物の白麻衣シロアサゴロモ
(萬葉集 七譬喩歌)
古へゆ織りてしはたを此の暮ユフベ 衣に縫ひて君待つ吾れを
足玉アシダマも手珠もゆらに織るはたを きみが御衣ミケシに縫ひあへむかも
(以上、萬葉集 十秋雑歌)
雲鳥のあやとぞ月にみなさまし たなびく雲に初雁の声(鶴岡放生会職人歌合)
(前略)あめなるや おとたなばたの うながせる たまのみすまる みすまるに(下
略)(古事記 上)
ひさかたの あめかなばた めとりが おるかなばた はやぶさわけの みおすひがね
(日本書紀 十一仁徳)
すまのあまの塩焼衣をさをあらみ まどほにあれや君がきまさぬ
(古今和歌集 十五恋 読人しらず)
△裁縫
生ける代にわはいまだ見ず事絶えて かくおもしろく縫へる嚢フクロは
(萬葉集 四相聞 大伴宿禰家持)
住吉スミノエの 波づま君が馬乗り衣 さにづらふ 漢女アヤメをすえて 縫へる衣ぞ
(萬葉集 七雑歌)
橘の島にしをれば河遠み さらさで縫ひし我が下衣(同)
年のへば見つゝ偲べと妹が言ひし 衣キヌの縫ひ目を見れば哀しも
(萬葉集 十二古今相聞往来歌)
情なき人に心をつくし針 みづからなどか思ひそめけむ(七十一番歌合 中)
はりぶくろとりあけまへにおきかへさへば おのともおのやうらもつきたり
はりぶくろおびつゞけながらさとごとに てらさびあるけどひともとがめず(中略)
(以上、萬葉集 十八)
はりぶくろこれはたはりぬすりぶくろ いまはえてしがおきなさびせむ(同)
はりはこのふたつの袖にさしつれど ひとつもみえずおちにける哉
(散木葉謌集 十雑)
から衣うつ声きけば月きよみ まだねぬ人を空にしる哉(紀貫之集 一)
衣うつ碪キヌタの音を聞なべに 霧立空にかりぞ鳴なる(曽禰好忠集)
橡ツルバミの解きあらひ衣キヌのあやしくも ことにきほしきこの暮ユフベかも
(萬葉集 七譬喩歌)
むらさきの色こきことはめもはるに 野なる草木ぞわかれざりける(伊勢物語 上)
(前略)今は我いづちゆかまし山にても 世の憂ことはなほも絶ぬか(大和物語 上)
よりあはせてなくなる声をいとにして 我泪をば玉にぬかなん(伊勢集 上)
はる雲をぬいものにしてきむ人は とぶ雁金を紋につけてよ
(一話一言 一 光広卿撰)
[次へ進んで下さい]