22 植物を詠める和歌[植物総載〜松〜櫻]
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△総載
み吉野の象山際キサヤマキハの木末コヌレには 幾許ココダもさわぐ鳥の声かも
                       (萬葉集 六雑歌 山部宿禰赤人)
 
あしびきのやまのこぬれのほよとりて かざしつらくはちとせほぐとぞ
                        (萬葉集 十八 大伴宿禰家持)
 
吹風も木々の枝をばならさねど 山は久しき声ぞきこゆる
                       (千載和歌集 十賀 崇徳院御製)
 
ひきうゑし木々の梢にとしたけて やどもあるじもおひにける哉
                       (夫木和歌抄 二十九 慈鎮和尚)
 
見渡せば山田のひつぢひこばえて ほに出るほどに成にける哉
                          (倭訓栞 前編二十五 比)
 
黄葉モミヂバのにほひは繁ししかれども 妻梨の木を手折りてかさむ
                            (萬葉集 十 秋雑歌)
 
いもがりと馬に鞍置きて射駒山イコマヤマ うち越え来れば紅葉モミヂ散りつゝ(同)
 
△木
いづみなるしの田のもりの楠の 千枝にわかれて物をこそ思へ
                        (古今六帖 第六 きのらう女)
 
いづみなる信田の森の千枝ながら 玉のうゑ木にかざる白雪
                    (夫木和歌抄 二十九 前大納言隆季卿)
 
△松
松のうへになくうぐひすのこゑをこそ はつねの日とはいふべかりける
                        (拾遺和歌集 一春 大伴家持)
 
霜の後あらはれにけり時雨をば 忍びの岡の松もかひなし
                       (江戸名所図会 十七 道興准后)
 
磐代イハシロの岸の松が枝結びけむ 人はかへりてまた見けむかも
磐代の野中ヌナカに立てる結び松 こころも解けず古ムカシ念ほゆ
                    (以上 萬葉集 二挽歌 長忌寸意吉麿)
 
うへし時契りやしけむたけくまの 松をふたゝびあひみつる哉
                 (後撰和歌集 十七雑歌 藤原もとよしの朝臣)
 
たれをかもしる人にせん高砂の 松も昔の友ならなくに
                     (古今和歌集 十七雑 藤原おきかぜ)
 
しら浪のよりくる糸ををにすげて 風にしらぶることひきの松
                        (夫木和歌抄 二十九松 重之)
 
△杉
味酒ウマサカを三輪の祝ハフリがいはふ杉 手触れし罪か君に遇いがたき
                        (萬葉集 四相聞 丹波大娘子)
 
かみなびのみむろの山にかくれすぎ 思ひすぎんやこけをふるまで
                    (夫木和歌抄 二十九杉 よみ人しらず)
 
古イニシヘの人の殖ゑけむ杉が枝に 霞たなびき春は来ぬらし(萬葉集 十春雑歌)
 
△槙マキ
秋ふかみ朝夕露のもる山の まきのしたえは紅葉しにけり
                      (夫木和歌抄 二十九槙 維順朝臣)
 
△桧ヒ・ヒノキ
かみ山の岩ねのひはら苔むして 木ずゑもしろくとしふりにけり
                      (夫木和歌抄 二十九桧 僧正行意)
 
△側柏コノテカシハ
奈良山の児手柏コノテカシハの両面フタオモに かにもかくにもねしけ人かも
                         (萬葉集 十六有由縁並雑歌)
 
ちばのぬのこのてがしはのほゝまれど あやにかなしみおきてたがきぬ
                      (萬葉集 二十 千葉郡大田部足人)
 
△むろのき
吾妹子ワギモコが見し鞆浦トモノウラの天木香樹ムロノキは 常世トコヨにあれど見し人ぞなき
                       (萬葉集 三挽歌 大宰帥大伴卿)
 
玉はゞき苅り来コ鎌麻呂室ムロの樹と 棗ナツメが本モトとかきはかむため
                         (萬葉集 十六有由縁並雑歌)
 
しほのみつうらに年ふるむろの木の かはらぬ色もしたばちりつゝ
                    (夫木和歌抄 二十九枌ムロ 衣笠内大臣)
 
△栂トガ・ツガノキ
三諸の神名備山カミナビヤマに 五百枝イホエさし しじに生ひたる つがの樹の 弥イヤ継嗣ツギ
ツギに 玉葛タマカヅラ 絶ゆる事無く 在りつつも 止まず通はむ 明日香の 旧き京師
ミヤコは(下略)                 (萬葉集 三雑歌 山部宿禰赤人)
 
△棕櫚シュロ・スロノキ
あさまだきこずえばかりに音たてゝ すろのはすぐるむら時雨哉
                  (夫木和歌抄 二十九すろの木 民部卿為家)
 
△胡桃
夏山のすそ野に茂るくるみはら くる身いとふな行て逢みん(新撰六帖 六 家良)
 
時雨にもぬるゝくるみのかはかずて をのが心となにゝそむらん(同 為家)
 
△楊柳ヤナギ
ももしきの大宮人のかづらける 垂柳シダリヤナギは見れど飽かぬかも
                             (萬葉集 十春雑歌)
 
こひしけばきませわがせこかきつやぎ うれつみからしわれたちまたむ
                             (萬葉集 十四東歌)
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