1903b 学問に関わる和歌
[色紙]
むすびおきて我たらちねはわかれにき いかにせよとて忘れはてしぞ
(空穂物語 蔵開中)
これをだにかたみと思ふをみやこには 業がへやしつるしひしばの袖
(後拾遺和歌集 十哀傷)
[筆]
なびくほどいかゞゆはまし我為は 夏毛の筆のこゝろこはさを(七十一番歌合 上)
聞はやすしろうすやうの折からは いかゞいふべきまきあげの筆(弁内侍日記)
筆つかにきりつゝめたるさゝ竹の 永き夜しらず月をみるかな(七十一番歌合 上)
筆もつびゆがみて物のかゝるゝは 是も難波の悪筆アシデなるらん(塵添埃嚢抄 五)
葦手
いとこなせの君(中略)梓弓 やつたばさみ ひめかぶら やつたばさみ 宍シシ待つと
吾が居る時に さを鹿の 来立ち歎かく にはかに 吾ワは死ぬべし 王オホキミに 吾れは
仕へむ(中略)吾が毛をば 御筆ミフデのはやし(中略)(萬葉集 十六有由縁并雑歌)
いたづらにかきもつくさぬ水ぐきは あとをつけてもかひやなからん
(亀山殿七百首 恋 侍従大納言)
いくたびかさてもかきやる水茎の あはれとだにもいふ人のなき
(為尹卿千首和歌 恋)
[硯]
つたへゆく硯の石のよはひもて 世々にのこらむ言葉ぞこれ(桃源遺事 二)
海はあれど君が御影をみるめなき 硯の水のあはれかなしき
わが後は硯の箱のふたよまで 取伝へてしかたみとも見よ(風のしらかみ 中)
人心これやうき世のさが石の 筆もすみをもつくしはてつゝ(為尹卿千首和歌 恋)
かきのから月かげみれば土左石の ほしの光はすくなかりけり(七十一番歌合 中)
れうし舟硯の海に漕出すは 魚のまきゑをするにこそあれ(古今夷曲集 九雑下)
硯箱
をさまれる御代のすさびにあふくまや 此埋木もあらはれにけり(風のしからみ)
行方もしらぬうききの身なれども 世にしめぐらばながれあへかめ
(続世継 十敷島の打聴)
むもれ木の花さく事もなかりしに 身のなる果ぞ哀れなりける(長門本平家物語 八)
[墨]
君が代にたてしそむけば山下の 松の煙はいつかたゆべき
(続詞花和歌集 七賀 良暹)
すみの江のまつのけぶりもよとともに 浪のかずにぞかぞふべらなる
(紀貫之集 七賀)
[書櫃]
尋つと都にかたれ清見がた これぞまことの関のあらがき
返し
人ならで都のつとに清見潟 せきのあらがき松のことのは(正広日記)
たづねつと都にかたれ清見潟 これぞしるしの関のあらがき(宗長手記)
[文車]
例題歌無し
[棚]
例題歌無し
[文匣ブンカウ]
例題歌無し
[草紙挟]
例題歌無し
[文箱・書嚢]
浅みこそ袖はひづらめなみだ河 身さへながるときかばたのまん(伊勢物語)
封をつけ結びし箱の紐なれば 預るうちはとかじとぞ思ふ(後撰夷曲集 九雑 貞林)
[書案フミヅクエ]
袖かけて硯をならしかく文と 人にすみつくゑともならなむ(調度歌合)
耳もおち足もくじけてもろともに 世にふる机なれも老たり
(一話一言 三十八 山東庵京伝)
[文台]
これぞこのむかしながらの橋ばしら 君がためとや朽のこりけん
返し
これまでも道ある御代の浅き江に 残るもしるき橋ばしらかな
今宵しもやそうぢ川にすむ月を ながらの橋のうへにみる哉(源家長日記)
月もなをながらに朽し橋ばしら ありとやこゝにすみわたるらん
(続後撰和歌集 六秋 太上天皇)
[夾算ケフサン]
栞
吉野山去年のしほりのあとかへて まだ見ぬ方の花を尋ん(雅遊漫録 二)
枝折
帰りては重なる山の峯毎に とまる心を枝折にやせ舞(拾玉集慈鎮)
暮れぬさき山を出でむと急ぐ間に 枝折をもせで越えにけるかな(堀川百首伝燈大師)
(茅窓漫録 中)
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