1903 学問に関わる和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
[入学]
おもひやれとよにあまれるともし火の かゝげかねたる心ぼそさを
                       (千載和歌集 十七雑 大江匡範)
 
[試験]
久かたの月のかつらも折るばかり 家の風をも吹せてしがな
                          (拾遺和歌集 菅原道真母)
 
我身には吹べき風もふきこねば 桂の枝もをらずぞありける(仲実)
人しれずけふをしまつと風はやみ 桂の枝の折もよわらず(俊頼)
                             (永久四年百首 雑)
 
[訓点]
夢のあひは 苦しかりけり おどろきて かい探れども 手にも触れねば(巻四)
一重のみ 妹が結びし 帯をすら 三重結ぶべく 吾が身は成りぬ(同)
みづ垣の 久しき時ゆ 恋ひすれば 吾が帯緩ぶ 朝夕毎に(巻十三)
ゆふ去れば 屋戸開けまけて 吾れ待たむ 夢にあひ見に 来むと云ふひとを(巻四)
門カド立てて 戸も閉ぢてあるを 何処ゆか 妹が入り来て 夢に見えつる(巻十二)
                            (遊仙窟類標 万葉集)
 
ならさかをきなきとよます郭公 二四八とこそをちかへりなけ
                           (奥義抄 下ノ下 万葉)
 
[書籍]
いたづらに世にふるものと高砂の 松もわれをや友と見るらむ
                          (拾遺和歌集 八雑 貫之)
 
うつし置あづまかゞみの曇りなき 世のためしをも水茎の跡(海録 一 中野等和)
 
[算術]
かけざんはいづれもおなじ事なれば みじかきかたをひだりにぞおく
                             (新編諸算記上之巻)
くみゝてもそこからすまぬ玉の法 五六二五りし水にはあらねど(参両録中之巻)
はやくともしづかに算を合すべし ちがへば下手といつもいはれん
                             (新刊算法起上之巻)
                               (算話随筆 上)
 
白妙の 袖解きかへて 還り来む 月日をよみて 往きて来コましを(萬葉集 四相聞)
 
滝タギの上の 御舟ミフネの山に 水枝さし しじに生オひたる とがの樹キの 弥イヤ継ぎつ
ぎに 万代ヨロヅヨに かくし知らさん芳野の(下略)(萬葉集 六雑)
 
狗上イヌカミの とこの山なる いさや河 いさとをきこせ わが名のらすな
                         (萬葉集 十一古今相聞往来)
 
朝狩に しゝふみおこし 夕狩りに とりふみ立て(下略)(萬葉集 六雑歌)
 
若草の 新手枕ニヒタマクラを まきそめて よをやへだてむにくゝあらなくに
                         (萬葉集 十一古今相聞往来)
 
きみならで誰かひろめんおくたんと 業あることをかきしふみれば
                         (町見術阿弧丹度用法 続篇)
 
[書]
筆とりてあたまかくかく四十 男なりゃこそなかね平蔵(明良帯録)
 
しるべせし和歌の浦風道たえて 身は捨舟のよるかたもなし(四方之硯 花)
 
かきつくる心はしらずふりつもる 雪には鳥の跡をやはみん(弁内侍日記 下)
 
印シメ結ひて 我が定めてし 住吉スミノエの 浜の小松は 後も吾が松(萬葉集 三雑歌)
 
世間ヨノナカは 常かくのみか 結びてし 白玉の緒の 絶えらく思へば
                             (萬葉集 七譬喩歌)
 
君が代の年の数をば白妙の はまのまさごと誰かしきけん(新古今 貫之)
いく千世もよに住の江や高砂の 筆に八そじのはるもかきぞめ(廉卿)
                         (改正月令博物筌 正月部一)
 
あさか山あさくも人を思はぬに など山のゐのかげはなるらん(源氏物語 五若紫)
 
わびしきに恋にまどへる心には そのことゝしもみえずぞ有ける(信明集)
 
[絵画]
ゑにかける鳥とも人を見てしがな おなじところをつねにとふべく
                       (後撰和歌集 十一恋 本院侍従)
 
きみをおもひなまなまし身をやくときは けぶりおほかるものにざりける
                               (大和物語 上)
 
いかにしてうつしとめけんくも井にて あかずかくれし月のひかりを
くもゐにてすみけん世をばしらねども あはれとまれる月のかげかな
                            (栄花物語 四十紫野)
 
いかにせん池の水なみさわぎつゝ 心のうちのまつにかゝらば
さゝがにのいづこともなくふくかぜは かくてあまたになりにけらしも
                             (蜻蛉日記 下之下)
 
あさがすみひなの長ぢに立にけり すみ絵に見ゆるをちの旅人(清輔朝臣集)
 
鶴ならぬ友はなけれど文みれば 昔の人に逢心ちする(前大納言公任卿集)
 
佐保姫の玉おちにけりから錦 おれる木の葉のうへの白露(藤原長能集)
 
花さかでまだ色どらぬ梢には はるのかすみぞした絵なりける(夫木和歌抄 二春)
 
ちりもせじ衣にすれるさゝ竹の 大宮人のかざすさくらは
                     (新勅撰和歌集 七賀 権中納言定家)
[次へ進んで下さい]