1902 歌集に関わる和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
[歌集]
△撰集法
しらつゆのおくにあまたのこゑすれば はなのいろいろありとしらなむ(後撰)
もろともに山めぐりする時雨かな ふるにかなひき身とはしらずや(玄々集)
(袋草紙 一)
花
うゑおきしきみもなき世に年へたる はなやわがみのたぐひ成らん
(続世継 八源氏の御息所 輔仁親王)
△竟宴
いそのかみふるきをいまにならべこし むかしのあとをまたたづねつゝ
(後鳥羽院御製)
しき島ややまとことのは海にして ひろひし玉はみがゝれにけり(よしつね)
(増鏡 一おどろの下)
△撰者
玉つ島あはれと見ずや我方は 吹たえぬべき和歌の浦かぜ
(玉葉和歌集 十八雑 前大納言為家)
物思ひこしぢの浦のしら波も 立かへるならひありとこそきけ
(玉葉和歌集 八旅 遊女初君)
いかなれば身はしもならぬことのはの 埋もれてのみきこえざるらん
此度はかきもらすとももしほ草 なかなかわかのうらみとはせじ(李花集 下雑)
おくれゐるつるのこゝろもいかばかり さきだつ和歌のうらみなるらむ
御返し
おもへたゞ和歌の浦にはおくれゐて 老たるたづのなげく心を(大納言為世)
(増鏡 十四春の別)
和歌のうらに八十あまりの夜の鶴の 子をおもふこゑのなどか聞えぬ
御返し
雲の上にきこえざらめや和歌の浦に 老ぬるつるの子を思こゑ
(増鏡 十六久米の皿山)
なき影の立やそひけんことしゝも ふるきにかへるわかのうら波
(草菴和歌集類題 雑 頓阿)
いたづらに我よ更ぬとなげきつる こゝろもはれて月をみる哉
(新拾遺和歌集 十八雑 民部卿為明)
△作者
さゞ浪や志賀の都は荒にしを 昔ながらの山桜かな(源平盛衰記 三十二)
石川やせみのをがはの清ければ 月も流を尋ねてぞすむ(長明無名抄 鴨長明)
流なば名をのみ残せ行水の あはれ墓なき身は消る共
ながれての名だにもとまれ行水の あはれはかなき身はきえぬとも
(源平盛衰記 三十二)
いかなれば身はしもならぬことの葉の うづもれてのみ聞えざるらん
このたびはかきもらすことももしほ草 なかなかわかのうのらみとはせじ(李花集)
(新葉和歌集 十七雑 宗良親王)
△辞而不入撰集
はりまぢやすまの関屋の板びさし 月もれとてやまばらなるらん
(袋草紙 二 師俊卿)
白妙の夕つけどりも埋もれて あくる木末の雪になく也(東野州聞書)
△撰和歌所
こと夏はいかゞ聞けん時鳥 こよひばかりはあらじとぞ思ふ(紀貫之集 十雑)
ことなつはいかゞなきけむほとゝぎす このよひばかりあやしきぞなき(大鏡 八)
△職員
神無月はてはもみぢもいかなれや 時雨とともにふりにふるらん(源順集)
なしつぼのむかしのあとに立かへり 和歌の浦わに浪の寄人
(千五百番歌合 十九雑 家長)
沈みにき今さらわかの浦波に よせばやよらんあまの捨舟(十訓抄 十)
色もなきことの葉ながら七十に かゝる七代の跡だにもみよ
今よりは末もさはらじ七代まで 蘆わけきつる和歌の浦舟
返は
かしこしなわかの浦波七十に かゝる七代の松の言のは(東野州聞書)
△食邑
いかにせんをのゝ山柴ことたえて なほたてかぬる宿の煙を
おほけなき身の顔にはあらじかし いつかむすばん細川の水(なぐさめ草)
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