18b 国語に関わる和歌
 
[書簡文]
△名称
うめの花いまはさかりになりぬらん たのめし人のおとづれもせぬ
                  (後撰和歌集 一春 朱雀院の兵部卿のみこ)
 
雲ゐにてあひかたらはぬ月だにも わがやどすぎて行時はなし
                          (拾遺和歌集 八雑 伊勢)
 
天飛ぶや軽カルの路ミチは吾妹児が 里にしあればねもごろに見まく欲しけど(中略)
わたる日の くれぬるがごと 照る月の 雲隠るごと 奥津藻の なびきし妹は 黄葉
モミヂバの 過ぎていにしと 玉梓タマヅサの 使の言へば(下略)
                      (萬葉集 二挽歌 柿本朝臣人麻呂)
 
たまづさのみるになみだのかゝるかな いそこすかぜはきくこゝちして
                              (いざよひの日記)
 
秋風に初雁がねぞきこゆなる たがたまづさをかけてきつらん
                        (古今和歌集 四秋 とものり)
 
かけてこそくとは聞しか玉づさを 書つらねたる秋のかりがね
古へのその玉づさはかけずして あしをふくめる雁の使か
なほざりの玉章をだに待も見ず 雲ゐのかりの三たび来るまで(倭訓栞 前編六下加)
 
△和文書簡
しら雲もいろかはりぬときゝしかば 山びこもいかゞこたへうからぬ
                            (空穂物語 嵯峨の院)
 
はるかにもおもひやるかなしらざりし うらよりをちに浦づたひして
                            (源氏物語 十三明石)
 
君にとてあまたの春をつみしかば つねをわすれぬはつわらびなり
                           (源氏物語 四十八早蕨)
 
忘れにしときはの山の岩つゝじ いはねど我に恋ぞまさらし
打すてゝ別れし人をそことだに しらでまどひし恋はまされり(落窪物語 三)
 
あはれしれ今はよはひも老の鶴の 雲井にたえず子をおもふこゑ(後花園院御消息)
 
名におへるなぎさの真玉ひろふとも やつるゝそでにつゝみあへめや(文苑玉露 下)
 
うれしさはほりかねの井を思ふにも くむ手にあまる水くきのあと(鈴屋集 七文詞)
 
やましろやなに流れたるいは浪の はやくも行てこととひてまし
 
かつゆきてかつかへりこぬ宿なれば いつとちぎりて君をまたまし
けふわかれ明日は雲井のよそにても 雁のたよりにおとづれはせよ
岩がねのこゞしき道をおほろかに おもひなすぎそあしがらの山
伊せの海のおきつ汐さゐあらき日は あつたのわたり舟出すな君
皇神のいがきがもとに行かよひ つかへならさむみあれのゝ原(かりの行かひ)
 
△漢文書簡
こととはぬ きにもありとも わがせこが たなれのみこと つちにおかめやも
                              (萬葉集 五雑歌)
 
△総載
もろともに朝ゆふわかずみそぎせし はやくのせゞにおもひてらるゝ
みそぎせしせゞの滝つせ思ひいでば わがころもてもわすれざらなむ
                             (空穂物語 国譲上)
 
ながむらんおなじ雲ゐをながむるは 思ひもおなじ思ひなるらん
いぶせくもこゝろにものをなやむかな やよやいかにととふ人もなみ
                            (源氏物語 十三明石)
 
をみなへししをればまさるあさ露の いかにおきける名残なるらん
                           (源氏物語 四十九寄生)
 
△日附
ひかりいでん暁ちかく成にけり 今ぞみしよのゆめがたりする
                           (源氏物語 三十四若菜)
 
△表書
いのちあらばそれともみまし人しれず 岩ねにとめし松のおひすゑ
                           (源氏物語 四十五橋姫)
 
△竪文タテブミ
かけきやは川瀬の波もたちかへり 君がみそぎのふぢのやつれを
                           (源氏物語 二十一乙女)
 
いたづらにわけつるみちの露しげみ むかしおぼゆる秋の空かな
                           (源氏物語 四十九寄生)
 
名にたかきすぎぬるよはにてりまさる こよひの月を君はみじとや
いかでかはふせやにとてもくまもなき こよひの月をながめざるべき
                            (古今著聞集 五和歌)
 
△礼紙ライシ
おりならでつゝみこめける梅の花 心のいろを見するなるべし
返し
色も香もつゝむ袖よりもれ出る 梅にはあらで蓮花なるらむ(源頼朝)(拾玉集 五)
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