14c 和歌のいろいろ
(「家門息災安堵」を冠に置く)
夜梅
かぜならでおどろかれけり春夜の 夢路に通ふ梅の匂ひに
花近簾
もゝ鳥の声さへちかしみすのとの 花の盛の明ぼのゝそら(玄与日記)
(「南無阿弥陀仏」を冠に置く)
南ナげきあまりたゞこのたびのくりごとに となふる御名は南無阿弥陀仏
無ムらさきのくものおましにうつります しるべたゞしき南無阿弥陀仏
阿アりあけのつきもかゞやくにしの空 あまねくてらす南無阿弥陀仏
弥ミゆきしてやすくたのしむくにぞとは きみこそしらめ南無阿弥陀仏
陀タのみこしめぐみおもへば須弥のやま たかくぞあふぐ南無阿弥陀仏
仏フしてねがひおきてねがふもわが君を おもふにはあらで南無阿弥陀仏
(風のしがらみ 中 冷泉為村卿)
△隠題カクシダイ
("桔梗花")
あ"きちかう"のはなりにけりしらつゆの をけるくさばもいろかはりゆく
(奥義抄 上ノ上)
("あら舟の御社")
くきも葉もみなみどりなるふかぜりは "あらふねのみやしろ"くみゆらん
(八雲御抄 一正義)
("ひね"と云う地名)
故郷のた"びね"の夢にみえつるは 恨やすらん又ととはねば(大和物語 上)
("とりかひ"と云ふ院)
浅み"どりかひ"ある春にあひぬれば 霞ならねどたちのぼりけり(大和物語 下)
("公忠キンタダ"と云ふ名前)
から衣ぬぎすてがたみ我や"きん たゞ"目のまへにかけて社コソみめ(公忠朝臣集)
("良因ヨシヨリ"(素性法師の字アザナ))
旅に出てせし言の葉にいひしかど "よしより"思へ心くだけぬ(素性法師集)
("常陸ヒタチ"と云ふ地名、"きみとし"と云ふ名前)
あさにけに見べき"きみとし"たのまねば おも"ひたち"ぬる草枕也
(古今和歌集 八離別 寵)
("うぐひす")
心から花のしづくにそぼちつゝ "うぐひす"とのみ鳥の鳴らん(中略)
(古今和歌集 十物名 藤原としゆきの朝臣)
("さゝ"、"まつ"、"びは"、"ばせをば")
い"さゝ"めに時"まつ"まにぞ"ひは"へぬる 心"ばせをば"人にみえつゝ(中略)
(同 きのめのと)
("すみながし")
春が"すみながし"かよひぢなかりせば 秋くる雁はかへらざらまし(同 しげはる)
("青アヲ借りし")
しぐれするいなりのやまのもみぢばゝ "あをかりし"よりおもひそめてき
(袋草紙 四)
("紅梅コウハイ")
うぐひすのすつくる枝をおりつれば "こうはい"かでかうまんとすらん
(拾遺和歌集 七物名 読人不知)
("かのえさる")
"かのえさる"舟まてしばしこととはん おきのしら波まだたゝぬまに(中略)
(同 すけみ)
("四十九日")
秋かぜのよもの山よりをのが"じゝ ふくにち"りぬるもみぢかなしな (同 すけみ)
("きりぎりす")
秋は"きりきりす"ぎぬれば雪ふりて はるゝまもなきみやまべのさと
(千載和歌集 十八雑 待賢門院堀川)
("くり"、"しゐ"、"もちゐ")
"くり"返しいのる心を"しゐ"てなを 神は"もちゐ"よ杜のしめ縄
(新拾遺和歌集 二十雑 左近中将具氏)
("くつ"、"したうず"、"まり")
ゆ"くつ"きもかげ更にけりかぢ枕 "したうつ"なみのよるのと"まり"は
(同 よみ人しらず)
("しやう"、"ふえ"、"ひちりき"、"こと"、"びは")
う"しやう"し花にほ"ふえ"だに風かよ"ひ ちりき"て人の"こと"と"ひは"せず (同)
("ひだりまきのふぢ"、"ふち"、"きりひをけ"、"頼政ヨリマサ")
水"ひたりまきのふち""ふち"おちた"ぎり ひをけ"さいかに"よりまさ"るらん
(同 従三位頼政)
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