14d 和歌のいろいろ
("宇治河"、"藤鞭"、"桐火桶"、"頼政")
"宇治川"のせゞの"淵々"落た"ぎり ひをけ"さいかに"寄まさ"るらん
(源平盛衰記 十六)
("としより")
卯花のみな白髪ともみゆるかな 賎が垣ねも"としより"にけり
(長明無名抄 俊頼朝臣)
("よき")
あしきだになきはわりなきよの中に "よき"をとられてわれいかにせん
(宇治拾遺物語 三)
("ひちりき")
めぐりくるはるはるごとにさくらばな いくた"ひちりき"人にとはゞや(同 十二)
("からはぎ")
つら"からばき"しべの松のなみをいたみ ねにあらはれてなかんとぞおもふ
(続世継 三虫の音)
("独鈷トコ")
草枕さこそかりねの"とこ"ならめ けさしもおきてかへるべしやは
(同 六旅寝の床 大納言宗通)
("義朝ヨシトモ")
下野は紀伊守にこそ成にけれ "よしとも"見えぬあげづかさ哉
(平治物語 三 長田四郎忠宗)
いにしへのいぬきがかひしすゞめの子 立あがりしやうしと見るらん(井蛙抄 六)
たび人のあさたつそでもしほるなり きりほしわぶるのぢのさゝはら(花園院御記)
("きつね")
夏は"きつね"になく蝉のからころも おのれおのれが身の上にきよ
(北条五代記 六 北条氏康公)
("琵琶ヒハ")
うしやうし花にほふ江にかぜかよひ 散きて人のことゞ"ひは"せず
(風のしがらみ 下 御水尾帝御製)
("瘧ワラハヤミ")
まぐさかる野べの"わらはやみ"ち遠く 我が住里に帰り行覧(翁草 一)
("品川シナカハ")
梅の花咲き"しなかは"にかど出しつ 都のさくら盛見むとて
(遊京漫録 上 藤原為相卿)
(庚申狂歌)
食物も女も好ける季鷹の 得ざる物こそ酒にしありけれ
かへし
耳はいと千蔭に見ゆれど蘆若の 江去舟とや遠ざかるらん
難波潟こげど小舟は蘆若の 江去程こそ久しかりけれ(傍廂 前編)
("なら"、"とち"、"きり"、"しきみ"、"かき"、"しい"、"まつ"、"すぎ"、"柚ユ"、"桑
クハ"の十木)
かならずとちぎりしきみがきまさねば しいてまつよのすぎゆくはうし
(視聴草 九集十 幽斎公)
("きす"、"たひ"、"かつを"、"はえ"、"み"、"しひ"、"こち"、"ふか"、"こひ"、
"たち"の魚名十)
ぬきすたひはきあかつをはえしもみす しひこちいふかかしこひとたち
(泊泊筆話 一 賀茂真淵)
(阿波、安芸、摂津(津)、隠岐、紀伊、出羽、壱岐ユキ、安房、志摩、駿河の国名十)
あはれあきの草につゆおきつきいては ゆきてあはましまちもするがに
(草野集 十二雑 枝直)
(麻、藍アフ、蘭ニ、薦、藺、独活、羊歯シ、菱、水葱ナキ、藜アカサの草名十)
あさましやあふひもしらにこもりゐて うとしさひしとなきやあかさん(同)
(栗、柏カヘシ、柿、楠、桃、桧ヒ、栂トカ、郁ムベ、榎エ、櫨ハシの木名十)
くりかへしかきつくすとももゝひとの みやとかむべきえやはしのばむ(同)
(鵜、鷺サキ、雁、鳰ニホ、郭公ホトトキス、鳶、鶴、鶸ヒハ、鴫シキ、鴨の鳥名十)
うの花のさきのさかりにほとゝきす とひきつるひはめつらしきかも(同 古道)
△廻文歌クワイブンカ
むらくさにくさのなはもしそなはらばなぞしもはなのさくにさくらむ
(奥義抄 上ノ上)
むらくさにくさのなはもしそなはらばなぞしもはなの咲に咲らん
をしめどもつゐにいつもと行春はくゆともつゐにいつもとめじを(悦目抄)
しらなみのたかきをとすらなかはまはかならずとをきかたのみならし
しげるもはかざしていはまやみくだくみやまはいでじさかもはるけし
ながきよののもはるかにてそまくらくまそでにかるはもののよきかな
はらあけるふねなるたなはいをとるとをいはなたるなねぶるけあらば
しなたまもをかしなまひもまてしばしてまもひまなしかをもまたなし
(藤原隆信朝臣集 上)
ながきよのとをのねぶりのみなめさめなみのりふねのをとのよきかな
(日本風土記 五文辞)
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