材(ざい)大(だい)なれば、用を為(な)し難し。 解釈:材木が大き過ぎると利用しにくい。人間もあまり優れていると、世に 用いられないものである。しかし、世に合わないのは偉大過ぎるためだから、 悲しむことはないということ。 類義:杓子(しゃくし)は耳掻きにならぬ。 反義:大は小を兼ねる。 賽の河原(さいのかわら)。 解釈:死んだ子供が行くあの世の、三途(さんず)の川の辺(ほとり)にあ る河原。親に先立って死んだ子供が、ここで父母の供養のために石塔を積もう とすると、鬼が来て崩すという。転じて、いくら積み重ねても無駄な努力のこ と。 盃に孑孑(ぼうふら)が湧く。 解釈:早く飲むようにと酒を薦める言葉。酒を入れたまま何時までも置いて おくと、盃の中にボウフラが湧くという意。 類義:盃は畳の模様ではない。 下がり蜘蛛(ぐも)があれば、人が来る。 解釈:天井や壁から蜘蛛が下りてくると、客があるという古来からの俗信。 類義:鳥影(とりかげ)が刺せば人が来る。左手の掌(てのひら)が痒(か ゆ)ければ、待ち人が来る。 鷺(さぎ)と烏。 解釈:正反対なことのたとえ。 類義:水と油。雪と墨。 先の雁(かり)が後になる。 解釈:雁が飛んでいく様子から、後輩が先輩を追い越す意。 類義:後の雁が先になる。 鷺(さぎ)を烏。 解釈:白い物を黒と言い張るように、明らかに誤っている物を正しい(正し い物を誤っている)と主張して言いくるめること。 類義:柄の無い所へ柄を挿(す)げる。烏を鷺。鷺を烏と言いくるめる。鹿 を馬。白を黒。雪を墨。 桜折る馬鹿、柿折らぬ馬鹿。 解釈:桜は枝を折ると枯れやすいが、逆に柿は枝を折った方が翌年新しい枝 を伸ばし、よく実がなることをいう。 桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿。 解釈:桜は腐らないように枝葉切らず、梅の枝は花を咲かせるために切るの がよいという剪定(せんてい)の教え。 桜三月、菖蒲(しょうぶ)は五月。 解釈:桜の見頃は三月、菖蒲の見頃は五月である。時季の花を言った言葉。 桜は七日(なぬか)。 解釈:桜の花は僅か七日ほどの短い寿命である。花の儚(はかな)さを言っ た言葉。 類義:花七日。 桜は花に顕る(あらわる)。 解釈:花が咲くまでは、桜の木と分からないように、普段は特に変わったと ころがない人でも、何かの折に優れた才能を現すこと。 類義:紅(くれない)は園生(そのう)に植えて隠れなし。 雑魚(ざこ)の魚(とと)交り(まじり)。 解釈:つまらない小魚が大きな魚の中に混じっているように、力の弱い者が、 強い者の中に混じっていること。また、高い身分や能力のある者の中に、不相 応な者が混じっていること。 類義:鰯俵(いわしだわら)も俵の中(うち)。蝦の鯛交り。ゴマメの魚交 り。目高も魚の中。 雑魚も魚鰭(うおびれ)。 解釈:小魚でも大きな魚並に鰭を持っているところから、大小の違いはあっ ても道具立ては変わらないたとえ。 栄螺(さざえ)に金平糖(こんぺいとう)。 解釈:栄螺にも金平糖にも角があるところから、どちらも劣らず、理屈っぽ い、角(かど)のある人同士であることのたとえ。 笹の葉に鈴。 解釈:お喋りな人の形容。また、そわそわしていること。 砂上の楼閣(さじょうのろうかく)。[我想] 解釈:砂の上に建てられた高い建物のこと。基盤がしっかりしていないため に、崩れやすいたとえ。また、実現不可能なこと。 鯖の生き腐り(ぐさり)。 解釈:鯖は痛みやすく、外見が新鮮に見えるうちから腐っている。新しいも のでも、食べると中(あた)る場合があるので、注意せよということ。 鯖を読む。 解釈:計算を誤魔化すこと。 参考:語源については諸説ある。@「鯖読み」には、二つずつ数えるという 意味があり、魚市場では、鯖や鰯などを「ひとやひとや、ふたやふたや……」 と早口で二つずつ数えては箱に放り込んでいた。しかし、ちゃんと数えると数 が違っていることが多いことから出たという説。A「魚市読(いさばよみ)」 が略されてできたとする説。B鯖は腐りやすいので早く数えて売りさばいたこ とからとする説。 五月雨(さみだれ)は金(かね)を溶かす。 解釈:梅雨が長々と続くのを、金属でさえ溶けるほどであると形容した言葉。 類義:五月雨は腹の中まで腐らせる。 五月雨は腹の中まで腐らせる。 解釈:長雨が続いてじめじめした梅雨時の不快さをたとえた言葉。 類義:五月雨は金(かね)を溶かす。 猿が髭(ひげ)揉む(もむ)。 解釈:つまらぬ小物が人真似をして威厳を繕(つくろ)う様を嘲っていう言 葉。 類義:猿が稗(ひえ)揉む。猿の人真似。 猿が仏を笑う。 解釈:小賢しい者が、深い知恵のある人の本当の考えや偉大さが分からずに、 嘲笑することのたとえ。 猿知恵。 解釈:小賢しい知恵。利口そうに見えるが、浅はかで間の抜けている知恵。 類義:猿かしこ。猿利口。 猿に烏帽子。 解釈:猿に烏帽子を被せるように、取るに足らぬ人間が柄(がら)に似合わ ず、偉そうな装いをしたり、言動をとること。 類義:猿に冠。猿の烏帽子、狼の十徳。 反義:馬子(まご)に温袍(おんぽう)。 猿に絵馬(えま)。 解釈:取り合わせのよい物のたとえ。猿と馬を取り合わせた図柄が多いが、 これは猿を厩(うまや)の守護とする信仰からきているという。 類義:梅に鶯。牡丹(ぼたん)に唐獅子(からじし)。 猿の木登り。 解釈:無駄なことをするたとえ。木登りの上手い猿に、木登りを教えること。 類義:孔子(こうし)に論語。釈迦に経(きょう)。 猿の尻は真っ赤。 解釈:決まりきったことのたとえ。 猿の尻笑い。 解釈:自分の至らぬ点に気付かず、他人の欠点を馬鹿にすることのたとえ。 類義:五十歩百歩。熟し柿がうみ柿を笑う。人の一寸、わが一寸。不身持ち の儒者が医者の不養生を謗る(そしる)。目糞、鼻糞を笑う。 猿の水練、魚の木登り。 解釈:することが逆なこと。見当違いのことをするたとえ。 猿の空虱(そらじらみ)。 解釈:猿は時々虱を取るような仕草をするが、実際は虱を取っているのでは ないこと。用事や仕事がある振りをしながら、実際は何もしないことのたとえ。 猿の花見。 解釈:酔って顔が赤い様をいう。 猿の人真似。 解釈:自分の考えなしに、人のことをそのまま真似する者を嘲っていう言葉。 類義:猿が人真似。猿真似。 猿は人間に毛が三筋(みすじ)足らぬ。 解釈:猿は人間によく似ているが、人間より毛が三本少ないから知恵も浅い ということ。 猿回しの長刀(なががたな)。 解釈:不要な物のたとえ。昔の猿回しは長い刀を差していたが、それは単な る飾り物に過ぎなかった。 類義:猿使いの長刀。猿引きの長刀。 猿も木から落ちる。 解釈:木登りの上手な猿でも、時には失敗して落ちることがある。その道に 秀でた人でも、失敗することがあるというたとえ。 類義:河童の川流れ。弘法にも筆の誤り。釈迦にも経の読み違い。 騒ぐ烏も団子一つ、騒がぬ烏も団子一つ。 解釈:騒いでも騒がなくても結果は同じということ。どうあがいてみても、 一生は一生であるというたとえ。 類義:泣いても笑っても一生。 三月の花見虱(はなみじらみ)。 解釈:春先の暖かさに虱が湧くこと。三月とは旧暦の三月のこと。 類義:三月虱に羽生える。虱の花見。 三月比目魚(ひらめ)、犬も食わぬ。 解釈:旧暦三月頃のヒラメは、味が落ちるという意。 類義:三月比目魚、貰っても食えぬ。 山椒(さんしょう)は小粒でもぴりりと辛い。 解釈:身体が小さくても、才能が優れていて侮ることができないたとえ。 類義:山椒は小さいほど辛い。小さくとも針は呑まれぬ。 反義:大男、総身に知恵が回りかね。 山椒目の毒、腹薬(はらぐすり)。 解釈:山椒は興奮する成分が含まれているので、目にはよくないが、逆に回 虫駆除にはよく効く。 類義:山椒は血の毒目の薬。 |