棄犬(すていぬ)に握り飯。 解釈:骨折り損なだけで無駄なことのたとえ。野良犬に握り飯をやっても、 食べたら逃げていくだけで感謝もされない。 類義:溝(どぶ)に金を棄てる。 棄子は世に出る。 解釈:誰も構わい手のない者が、意外な出世をするということ。 類義:憎まれ子、世に出ずる。憎まれ子世に憚る(はばかる)。 酢でも蒟蒻(こんにゃく)でも。 解釈:どうにもこうにも手に負えないことのたとえ。 類義:四(し)の五も食わぬ。酢でも蒟蒻でも食えぬ。煮ても焼いても食え ぬ。 棄物は拾い物。 解釈:人が投げ捨てて顧みない物は、拾った人の拾い得だということ。昔は、 拾い物を神が授けて呉れた物だと考えていたところから。 棄てる神あれば、助ける神あり。 解釈:世の中はよくしたもので、見捨てて相手にしてくれない人もいるが、 助けてくれる人もいる。だからくよくよする必要はないということ。 類義:棄てる神あれば、拾う神あり。倒す神あれば、起こす神あり。月夜も 十五日、闇夜も十五日。渡る世間に鬼はなし。 棄てる子も軒の下。 解釈:子に対する親の愛情の深いことのたとえ。たとえ我が子を捨てるにも、 雨露がかからないように軒下を選ぶ。 砂の底から玉が出る。 解釈:ありふれた物が沢山ある中に、たまに値打ちのある物が混じっている たとえ。 類義:珠玉(しゅぎょく)の瓦礫(がれき)に在る如し。砂の中の黄金(こ がね)。藪に黄金。 砂原(すなはら)は三里行けば、二里戻る。 解釈:砂地は歩きにくいということ。 類義:砂道歩く如し。 脛(すね)一本、腕一本。 解釈:自分の身体一つのほかに、何も頼りになるものがないということのた とえ。 脛に疵(きず)持つ。 解釈:心にやましい事があること。過去に悪事を犯したことを隠していて、 それが弱みとなっていること。 類義:足に疵。 脛に疵持てば、笹原走る。 解釈:悪事を犯して弱みのある者は、道を歩くのにもびくびくして落ち着い ては歩けない。笹原を行くとき痛さに跳び上がって走ったり、葉音にびくつい たりするように、の意。 類義:落武者は芒(すすき)の穂にも怖(お)ず。心の鬼が身を責める。 参考:「走れぬ」ともいうが、意味は結局同じで、道を堂々と歩けないとい うこと。 拗者(すねもの)の苦笑い。 解釈:変わり者にも、上には上があるというたとえで、臍曲がりな人が、自 分より上手の臍曲がりがいるのに閉口して、苦笑すること。 素引き(すびき)の精兵(せいへい)。 解釈:理論には詳しいが、実際の役に立たない者のこと。「素引き」は、弓 を射る形だけして、矢を放たないこと。 類義:畳の上の水練。木馬の達人。 全ての道は、ローマに通ず。 解釈:一つの真理はあらゆる事に通用するということ。また、ある目的を達 するには手段は沢山あるということ。ローマ帝国が隆盛の頃、世界各地からの 道がローマに通じていた。 類義:百川(ひゃくせん)海に朝(ちょう)す。 参考:All rords lead to Rome.の訳語。 滑り道と御経は、早い方がよい。 解釈:滑りやすいぬかるみの道は、人より先に歩く方がよく、お経は早く読 む方が人から歓迎されるということ。 類義:滑り道と観音経は早い方がよい。 参考:続けて「雪道と魚の子汁(じる)は後(あと)ほどよい」という。 図星(ずぼし)を指す。 解釈:相手の急所を突くこと。真相を正しく言い当てること。「図星」は、 弓矢の的(まと)の中心の黒点。 すまじきものは宮仕え。 解釈:人に仕えるということは、気苦労が多く束縛されるものだから、する ものではないということ。 類義:致すまいものは宮仕え。さすまいものは宮仕え。させまじいは宮仕え。 住むばかりの名所。 解釈:都会に住んでいる人は、他国の人から見れば、如何にもよさそうだが、 実際は羨まれるほどよいこともなく、ただ都会に住んでいるというだけのこと であるという意。 住めば都。 解釈:不便な土地でも、長く住んでいれば住みよくなる。都と同様に自分に とって一番よい場所になるものである。 類義:地獄も住家(すみか)。住めば田舎も名所。住めば都で、花が咲く。 住めば都の風が吹く。都も旅は憂(う)し、地獄も住家。 参考:It is a capital if it lives. (住めば都) 相撲が違う。 解釈:桁違いに差があること。 類義:役者が違う。 相撲に勝って、勝負に負ける。 解釈:相撲で相手を倒す力がありながら、ほんの弾(はず)みで負けてしま うこと。 相撲に負けて、妻の面(つら)張る。 解釈:外で上手くいかない事があると、家に帰って腹いせに、妻に八つ当た りするたとえ。 類義:内弁慶(うちべんけい)。 素矢(すや)を引く。 解釈:当てが外れること。約束したのに、すっぽかされること。「素矢」は、 的(まと)を外れた矢の意。 類義:素矢を食う。 擂粉木(すりこぎ)で芋を盛る。 解釈:不可能なことのたとえ。 類義:杓子腹(しゃくしばら)。擂粉木で腹を切る。 擂粉木で重箱(じゅうばこ)洗う。 解釈:大まか過ぎて、細かく隅々まで行き届かないことのたとえ。 反義:重箱の隅に楊枝(ようじ)で穿る(ほじる)。 擂粉木で腹を切る。 解釈:とてもできない事のたとえ。 類義:杵で頭を剃る。蒟蒻(こんにゃく)で石垣を築く。竿の先で星を打つ。 大海を手で塞ぐ(ふさぐ)。豆腐の角(かど)で頭を割る。 擂粉木に注連(しめ)。 解釈:似合わないことのたとえ。「注連」は、注連縄(しめなわ)のこと。 類義:杵に弦(つる)。 擂粉木に羽が生える。 解釈:ある筈のないことのたとえ。 擂粉木を食わぬ者なし。 解釈:味噌汁を飲まない者はいないということ。擂粉木は味噌を擂り潰す度 に擦り減るが、その減った分は、皆が味噌汁と共に食べているもだという意。 擂鉢(すりばち)へ灸(きゅう)を据える。 解釈:ちっとも感じないことのたとえ。昔は灸据え日の行事として実際に擂 鉢に灸を据えた。 類義:土に灸。 駿河(するが)の富士と一里塚(いちりづか)。 解釈:違いがあり過ぎて、到底比較にならないことのたとえ。 類義:提灯と釣鐘。月と鼈(すっぽん)。 参考:「一里塚」は、、昔、街道沿いに一里毎に土を盛って築いた塚。 するは一時(いちじ)、名は末代(まつだい)。 解釈:するべき事はきちんとしなさいということ。厭な事でも一時我慢すれ ば済む。するべき事をしなければ、不名誉は永久に残る。 類義:するは一時、なさぬは末代。 寸善尺魔(すんぜんしゃくま)。 解釈:少しよい事があると、次に大きな悪い事が起こり勝ちだ。よい事には 悪い事や邪魔が付き纏うものだということ。 類義:一寸の善には、一尺の魔が伴う。好事(こうじ)魔多し。月に叢雲 (むらぐも)、花に風。 寸鉄(すんてつ)人を刺す。 解釈:短いが適切な言葉で、人の急所や要点を突くことのたとえ。「寸鉄」 は小さい刃物。転じて警句や警語、風刺(ふうし)のことをいう。 類義:寸鉄、人を殺す。 寸をマ(言偏+出)げて、尺を伸ぶ。 解釈:小さな利益は譲って、大きな利益を取ることのたとえ。 類義:尺を枉(ま)げて、尋(じん)を直(なお)くす。 |