有為転変(ういてんぺん)は世の習い。 解釈:移り変わりの激しいのは、この世の常である。 憂いも辛いも食うての上。 解釈:不幸を並べるのも、衣食に不自由がないからで、真に苦しいときには そのような不幸は云わないものである。 類義:衣食足って礼節を知る。 飢えては食を選ばず。 解釈:ひもじいときは、どんな物でも選り好みしないで食べる。 類義:空腹にまずい物無し。 上な見そ。 解釈:身のほどを知り、上を見てうらやむなという戒め。 類義:上を見るより下見て通れ。 飢えに臨みて苗を植える。 解釈:必要に迫られてから準備するのでは、間に合わないことのたとえ。 類義:軍(いくさ)見て矢を矧(は)ぐ。渇して井をうがつ。盗人捕らえて 縄綯(な)う。 上には上がある。 解釈:一番上だと思っても、まだその上があるということ。 類義:上見ればきりなし。上を見れば方図(ほうず)が無い。 参考:下には下がある。 上を下へ返す。 解釈:人で混雑する様子。 類義:上よ下よ。上を下への騒動。 上を見れば方図(ほうず)が無い。 解釈:「方図」とは、限度・際限。 類義:上には上がある。 魚心(うおごころ)あれば水心(みずごころ) 解釈:そちらの出方によって、こちらの気持もそれに応じる。行為を示され れば、それに応える。 類義:網心あれば魚心。君心あれば民心あり。水心あれば魚心あり。 魚の木に登る如し。 解釈:不可能な事をしようとすること。手も足も出ないことのたとえ。 類義:魚の水を離れたよう。 魚の釜中(ふちゅう)に遊ぶが如し。 解釈:目前に滅亡が迫っているのも知らずに呑気に暮らしていることのたと え。 類義:風前の灯。釜中の魚。 魚も食われて成仏す。 解釈:魚は人に食べられて成仏するのだから、食べてやることが功徳(くど く)であるという。仏教の殺生戒(せっしょうかい)を破る言い訳の言葉。 魚を得て筌(せん)を忘る。 解釈:目的を達すると、それまで利用していたもののことは忘れてしまうこ と。「筌」は魚をとるための竹製の道具。 類義:咽元(のどもと)過ぎれば熱さを忘れる。 うかうか三十きょろきょろ四十。 解釈:これということもしない間に一生が過ぎてしまうこと。 類義:少年老い易く、学成りがたし。 反義:三十の尻(しり)括(くく)り。 浮き沈み七度(ななたび)。 解釈:一生のうちには何度か、よい時期も恵まれない時期もあるので、人生 の安定しないことをいう。 浮世の苦楽は壁一重(ひとえ)。 解釈:この世での苦労や楽しみは隣り合っているようなもので、変わりやす く、悲観する必要もないが、楽観も禁物だ。 類義:楽あれば苦あり。 浮世は衣装七分(しちぶ)。 解釈:とかく世間とは、中身よりも外見で物事を判断しやすいものである。 類義:馬子にも衣装。 反義:衣ばかので和尚はできぬ。 浮世は心次第。 解釈:人生は心の持ち方一つで、よくも悪くもなるものだ。 浮世は回り持ち。 解釈:人の世の盛衰、苦楽、貧富は一つ所にとどまらず、何時どういう思い をするか分らないものである。 類義:今日は人の身、明日は我が身。 浮世は夢。 解釈:この世は一夜の夢のようにはかない。たちまちに過ぎ去った日々を思 うと、まるで夢のようであるという意。 類義:人生夢の如し。夢の浮世。 浮世渡らば豆腐で渡れ。 解釈:世の中を上手に渡っていくならば、豆腐のように、形はきちんと四角 に、中身は柔らかく融通をつけよという意。 鶯鳴かせたこともある。 解釈:若い頃は、男たちの心を惹きつけてちやほやされたこともある。 参考:梅干し婆(ばばあ)はしなびておれど、鶯鳴かせたこともある。 有卦(うけ)に入る(いる)。 解釈:幸運に恵まれること。陰陽家(おんみょうけ)の説によると、人の生 年の干支(えと)により、有卦という幸運に入ると、七年間吉事が続くという。 烏合(うごう)の衆。 解釈:烏の寄り集まったように、統一も規律もなく騒いでいる人々の集まり。 雨後の筍。 解釈:雨の後に次々生えてくる筍にたとえて、相継いで出てくる物事のこと。 兎の登り坂。 解釈:兎は後足に比べると前足が短いので、坂を登ることは得意であること から、よい状況に恵まれて実力を発揮すること。 兎の罠(わな)に狐がかかる。 解釈:思いがけない幸運が舞い込むこと。 類義:鰯網で鯨捕る。 兎も七日(なぬか)なぶれば噛み付く。 解釈:どんなに大人しい物でも、何回もいじめられれば怒ってしまうという 意。 類義:地蔵の顔も三度。仏の顔も三度。 兎を見て、犬を放つ。 解釈:兎を捕まえるのに、兎を見てから犬を追いかけさせても間に合うよう に、失敗してからでも改めるのに遅過ぎるということはないということ。 類義:兎を見て、鷹を放つ。亡羊補牢(ぼうようほろう)。 牛追い、牛に追わる。 解釈:立場が逆さまになること。主客転倒。 氏(うじ)無くして玉の輿。 解釈:女は家柄が卑しくても、その美しさで貴人に近づけば、高い地位に昇 ることができる。 牛に対して琴を弾(だん)ず。 解釈:愚かな者にいくら説き聞かせても、効き目がないことのたとえ。魯 (ろ)の国の人が牛の前で琴を弾いたが、牛はそしらぬ顔で草を食っていた。 次に蚊や虻が音をたてて飛んできたら、尾を振って耳をそばだてたという故事 による。 類義:犬に論語。兎に祭文。牛に経文。馬の耳に念仏。暖簾(のれん)に腕 押し。 牛に乗って、牛を尋ねる。 解釈:尋ねる物事がほんの身近にあるのに、遠くを探すことのたとえ。 類義:背中の子を三年探す。詮索物、目の前にあり。 牛に引かれて善光寺(ぜんこうじ)詣り。 解釈:他の物事や他の人につられて、思いがけずよい方向に導かれることを いう。昔、信濃に住んでいた老婆が、隣家の牛が晒しておいた布を角に引っか けて走っていくのを追いかけていくうちに善光寺に着いてしまった。それがき っかけで老婆は深く信心するようになったという話による。 類義:牛に引かれて善光寺。 参考:一茶の句「春風や牛に引かれて善光寺」 牛の尾は長きがよく、客の長居は短いがよい。 解釈:客の長居は嫌われる。迷惑をかけないように早く退出する方がよいと いう意。 牛の小便と親の意見。 解釈:牛の小便はだらだらと長く肥料にもならない。親の小言も長いばかり では効き目がないということ。 牛の鞦(しりがい)、外れがない。 解釈:牛の鞦(牛の尻に掛ける紐)は存外外れにくい。物事が思ったより確 実なことをいう。 類義:牛の鞦。年寄の言う事と牛の鞦は外れぬ。 牛は牛連れ、馬は馬連れ。 解釈:類を同じくする物が集まること。似た者同士連れ添えば、上手くゆく というたとえ。 類義:馬は馬連れ、牛は牛連れ。同気相求む、同類相求む。似た者夫婦。似 るを友。類は友を呼ぶ。類を以て集まる。破鍋(われなべ)に閉じ蓋。 氏(うじ)より育ち。 解釈:人間にとって家柄や身分よりも、育ち方の方が大切であるということ。 類義:氏より育ちが恥かしい。氏より育て。生まれつきより育ちが第一。兎 角(とかく)育ちは恥かしきもの。人は氏より育ち。 反義:氏素性(うじすじょう)は争われぬ。氏素性は恥しきもの。上知(じ ょうち)と下愚(げぐう)とは移らず。 参考:Birth is much, breeding is more.(生まれも大事だが育ちはもっと 大事) 後ろ髪を引かれる。 解釈:情に引かれて後(あと)に心が残り、思い切ることができない。 後ろ千両、前一文(いちもん)。 解釈:後姿は大変よいが、顔はよくないたとえ。 類義:後姿の前動顛(どうてん)。後ろ千両、前ばったり。後ろ別嬪、前び っくり。後ろ弁天、前板額(はんがく)。後ろ弁天、前不動。 反義:前十両、後ろ三両。後ろびっくり。 後ろに目無し。 解釈:人には後ろに目がついていないので、気づかないことが多いというた とえ。 後ろの目壁の耳。 解釈:自分では隠したつもりでも、他人は気がついている。悪事や密談はば れやすいことのたとえ。 類義:石に口。垣に目。壁に耳。障子に目。天に口。徳利に口。藪に目。 後ろびっくり。 解釈:前姿は美しいのに、後ろは醜くてびっくりすること。 類義:前十両、後ろ三両。 後ろ弁天、前板額(はんがく)。 解釈:「板額」とは、鎌倉時代の勇婦。 類義:後ろ千両、前一文。 後ろ指を指される。 解釈:本人の知らない所で悪口を言われる。 牛を売って、牛にならず。 解釈:人は自分の物は高く評価し勝ちなものであるということ。牛を売って も高値はつかず、もっとよい牛を買うことはできない。 牛を馬に乗り換える。 解釈:都合のよい方へ切り替えること。牛より馬の方が速いことから。 類義:牛売って、馬買う。 反義:馬を牛に乗り換える。 牛を食らうの気(き)。 解釈:幼くして優れた気性のあること。虎や豹の子は、既に牛を食うほどの 気概を備えている。 類義:虎子(こし)、地に落ちて、牛を食らうの気あり。 臼じゃ目は突かぬが、小枝じゃ目を突く。 解釈:石臼やひき臼の目では目を突かないが、小枝では目を突かれる。小さ なことでも油断すると失敗するという意。 類義:芋茎(いもがら)で足を衝く。牝牛に腹突かれる。 嘘から出た実(まこと)。 解釈:始めは嘘のつもりで言ったことが、偶然本当になること。冗談が事実 になること。 類義:一犬(いっけん)虚に吠ゆれば万犬実(じつ)を伝う。嘘は誠の皮。 おどけがほんになる。嘘は実を引く。冗談から駒。冗談からほんまがでる。根 も無い嘘から芽が生える。瓢箪から駒が出る。 参考:Many a true word spoken in jest.(冗談に言った事が本当の言葉と なることがある) 嘘つきは泥棒の始まり。 解釈:平気で嘘をつく者は、それが始まりとなって、ひいては盗みをするこ とさえ恥じないようになるという意。 類義:嘘つきは盗人の苗代。嘘は盗みのもと。 反義:嘘も方便(ほうべん)。嘘をつかねば仏になれぬ。 参考:Lying and stealing live next door to each other.(嘘と盗みは互 いに隣同士) 嘘と坊主の頭はゆったことがない。 解釈:「言う」を「結う」にかけて、嘘は言ったことが無いという強調。 類義:嘘と虎の尻尾は引っぱったことがない。嘘と坊主の髪はいわれぬ。嘘 と牡丹餅(ぼたもち)ついたことない。 嘘と牡丹餅(ぼたもち)ついたことない。 解釈:嘘は言ったことがないの意。餅をつくと、嘘をつくの洒落(しゃれ)。 類義:嘘と大仏の鐘はついたことがない。嘘と坊主の頭はゆったことがない。 嘘にも種がいる。 解釈:どんなことでも材料がなければなすすべがない。いくら嘘をでも、何 か種がなければ言えない。 類義:品玉(しなだま)取るにも種がいる。 反義:嘘はつき放題。 嘘は後(あと)から剥げる。 解釈:嘘は言った後からすぐばれる。 根意義:嘘は一時(いっとき)。嘘は門口(かどぐち)まで。 嘘も方便(ほうべん)。 解釈:事を円滑に運ぶには、時と場合によっては、嘘をつかねばならないこ ともある。 類義:嘘つき世渡り上手。嘘は世の宝。嘘も重宝。嘘も追従(ついしょう) も世渡り。嘘も誠も話の手管(てくだ)。嘘をつかねば仏になれぬ。 反義:偽るなかれ。嘘つきは泥棒の始まり。嘘を言えば地獄へ行く。嘘をつ くと閻魔(えんま)さまに舌を抜かれる。嘘をつくと腹に竹が生える。正直は 一生の宝。 嘘を言えば地獄へ行く。 解釈:嘘を言うと地獄へ落とされて閻魔大王に舌を抜きとられるという仏説 から、嘘をつくなという教え。 類義:嘘つきは泥棒の始まり。嘘をつけば獄卒(ごくそつ)が鉄の鋏で舌を 抜く。 反義:嘘も方便。嘘をつかねば仏になれぬ。 嘘をつかねば仏になれぬ。 解釈:仏も衆生(しゅじょう=人々)を救うためには、その手段として、嘘 をつく。まして人間においては許されることであろう。 類義:嘘も方便。 反義:嘘は盗みの始まり。嘘を言えば地獄へ行く。 がある。 |