悪霊
恐怖は汝を捕えたり、
喇叭の音は早や響き、
墳墓は既に震うなり、
死灰の静けき休みより、
烈火の責を受けん為め、
汝の心は蘇り、
こゝに再び震うなり。
マーガレット
オルガンの響は呼吸を塞ぎ、
讃美歌の声は心の底をも溶かす、
嗚呼、われこゝを去らんかな。
合唱
判官厳かに座に着けば、
犯せし罪の隠れなく、
罰を逃るゝものもなし。
マーガレット
四壁の柱責めよりて、
妾を圧し去らんとす、
穹窿(きゅうりゅう)上に落ちかゝり、
妾を圧し潰さんとす。
悪霊
身を隠さばかくせ、
罪と恥とは纏うべし、
空気と光、そも何の要ぞ、
禍なるかな、マーガレット。
合唱
あゝ、罪ある者は何をか言わん、
あゝ、われ孰れの聖(ひじり)に頼まなん、
正しきものも僅に免がるゝ。
悪霊
栄光に入れるもの、
皆其の顔を汝に背く、
心の清きもの、
皆其の手を汝に引く、
嗟吁、禍なるかな、マーガレット。
合唱
嗟吁、罪あるもの何をか言わん。
マーガレット
(隣席の婦人に向い)
気付たまわれ、頼みます。(卒倒する)
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