GLN町井正路訳「ファウスト」

第二十場 寺院

 寺院の内供養あり、オルガンの音響き讃美歌聞ゆ。
 マーガレットは群集と坐し、悪魔はマーガレット……(印刷不明瞭)……つ。
 
悪霊
 清き心に穢れなく、
 子供心のすさびより、
 神を崇むる心より、
 祈り捧げん為にとて、
 いたく古りにし書をときて、
 この神壇に立ちたりし
 いにし昔に比ぶれば、、
 汝(なれ)が身いかに変りしよ、
 汝が頭脳は今何処、
 あゝ恐ろしの罪悪ぞ、
 心の中に潜むなる、
 汝が祈祷は誰が為めぞ、
 汝が手をもて傷めける、
 母の御霊にさゝげしや、
 誰が血潮の染みたるか、
 紅なせる汝が家の閾(しきい)、
 汝が心の奥深く、
 不安の念を駆り出し、
 おのずと汝を責めざるや。
 
マーガレット
 あゝ悲しきかな、
 味気なの身を千々に刻むなる、
 胸の思いを払わばや。
 
合唱  (オルガンと共に響く)
 嗟吁(あゝ)、彼の怒りの日、
 此の世は灰と消え失せん。

[次へ進んで下さい] [バック] [前画面へ戻る]