GLN町井正路訳「ファウスト」

第六場 魔女の厨房

 魔女輪を消す、ファウスト歩み出る。
 
メフィスト  さあ、直ぐ参りましょう。
 
魔女  そうして其の飲料が、十二分に効能を顕わす様に、影ながら祈って居ります。
 
メフィスト  (魔女に向い) やあ、たいそう厄介になったね、其の埋合せに其方(おまえ)の願は何なりと叶えて やろう、何れワルプルギスの夜に会うから其時云うてくれ。
 
メフィスト  (ファウストに向い) さあ、早く御出なさい、まあ暫く僕の云う通りにして下さいよ、此の有力な液体を全身 に泌み通させるには、発汗させる様にせねばならぬのです、其の後で、貴族的遊惰に 縦する方法を教えてあげますから、兎に角薬が利いて来ると、一種云うに云われぬ面白 さを感じて、頭の先から足の先まで、愛の神の力に浴する様になります。
 
ファウスト  一寸で宜いから、もう一度あの鏡を見せてくれ、あの女の姿は実に立派だった。
 
メフィスト  御止しなさい、直ぐにどんな美人も比較にならん様な実物を御目にかけますから。
 (低い声で) 薬が廻って見ろ、どの女でもヘレンの様に美しく見えるわ。

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