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メフィストフェレスはファウストを無理に輪の中に入れる。 魔女 (語気を強めて其書の呪文を唱え読む。) 汝須らく知るべし、 一より十を作り、 二を捨て、 三を均しくせよ、 然らば汝は富まん、 四は切り捨てよ、 五と六より、 七と八とを作れ、 かく魔女は云う、 然らばそは成れり、 而して九は一、 十は零なり、 これ魔女の九々なり。 ファウスト 婆さんは熱に浮かされて居るのじゃないか。 メフィスト いや此の先がまだ沢山あるのです、此の本は全体が皆この調子です、私は之を読むの に長時間を費しました、と云うのは明白な矛盾は、賢者にも愚者にも斉しく不思議で あるからです、先生、此の算術は古い様でもそう古くは無いのです、三と一、即ち 三位一体の説に依て真理を伝える代り、誤謬を拡めるのが流行でした、こんな工合に、 人々は喋々説き廻り、絶え間なく子弟に教えて居るのだが、誰れがこんな痴漢に関係 するものですか、人間は元来只だ言葉丈を聞くと、其の中には何か意味がなければな らぬと信ずる様に慣れきっているから、誤解に陥るのです。 魔女 (呪文を唱え続ける) 偉大なる哲理の力は、 隠れて見えずなりぬれば、 知る人としては絶えてなし、 求めざれども我れ得たり、 思を焦すこそ益なけれ、 求めざればこそ得たるなれ。 ファウスト 婆め、実に馬鹿気た傲語を吐いて居る、僕の頭は破裂しそうだ、百万の馬鹿者が声を 合せて呶鳴って居る様に聞える。 メフィスト 大儀大儀、えらい占卜女だ、さあ飲物を上げてくれ、波々と注いでくれ、もう飲んで も友人に障る様な事はあるまい、それに此の御方は名ある飲手の一人で、是迄随分色々 な飲料を試みられたのだから。 魔女はそれぞれ儀式を以て杯に注ぐ。 ファウスト之を飲もうとして杯を上げると、軽い焔燃え出る。 元気よくやり給え、さあ直ぐやり給え、直ぐに心地が愉快になります、貴君は悪魔と 親友の間柄ではありませんか、それに火を恐れると云う事はないでしょう。 |
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