千態万様の歩行者城門を出で来る。 職工の一群 君等は何だって其方(そっち)へ往くんだ。 他の一群 猟小屋の方へ往くのさ。 最初の一群 僕等は水車場の方へ往くところなんだ。 職工(一) 僕は君等に勧めるが、川端の居酒屋に往く方が好いぜ。 職工(二) しかし彼方(あっち)は途中が面白くないよ。 他の一群 そんならお前は如何(どう)するんだ。 職工(三) 俺(おいら)は衆(みんな)と一緒に往くよ。 職工(四) ブルグドルフの方にしようじゃないか、彼処には別嬪も居るし、上等のビールも あるし、其の上無類の喧嘩があるぜ。 職工(五) 此の生意気野郎、手前(てめい)は喧嘩がしたくって痒(むず)ついて居やがる んだな、ら真平だ、あんな所は聞いた許りでぞっとすらあ。 下婢(一) いやです、いやです、妾はもう帰りましょう。 下婢(二) でもあの白楊樹の下で必然(きっと)あの人が待って居ますよ。 下婢(一) あの方が居たって仕方がありません、お前さんの身辺(そば)に密着いて、お前さん とばかり舞踏るんですもの、人様のお楽みが何になりますものか。 下婢(二) いゝえ、彼の方一人じゃないんですよ、此間云って居ましたの、今日は美しい髪の 友達と御一緒ですって。 学生(一) しめた、御転婆連が来たぜ、君急ぎ玉え、一緒に散歩しようじゃないか、強い麦酒、 きつい煙草、盛装(きかざっ)た下婢、何れも僕の大好物さ。 市民の娘(一) まあ鳥渡あの美麗(きれい)な学生さんを御覧なさい、本当に恥辱ですね、妾たちの 様な良い連の出来るのに、あんな下女風情の後を追っかけるなんて。 学生(二) そう急ぎ給うな、背後からも立派な綺麗な二人連れがやって来るぜ、ヤ、一人は僕の 隣りの娘だよ、無僕はあの娘が大好きさ、見給え、大層閑雅に歩いて居るじゃないか、 あれでも終(しまい)には僕等を仲間に入れて呉れるよ。 学生(一) 厭だ、君、僕は窮屈が大嫌い、さあ急歩(いそ)ごう、折角の玉を見失ってたまるも のか、君土曜日に箒を握る手は日曜に君を可愛がるよ。 |
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