△人生儀礼のいろいろ
「或る人問う」
さて、人生儀礼について触れてみたい。
@着帯の祝い(帯祝い)
着帯の祝いとは、胎児の健全な発育を願い、妊婦が白布の腹帯(岩田帯)を締め
るお祝いである。
妊娠5ヶ月目の戌(いぬ)の日を選ぶのは、犬のお産が軽い(安産)ことにあや
かりたいという願いからだと云われている。
また、この日に合わせて「安産祈願」を行い、無事な出産を神様に祈願する人も
多い。
一般的に、祈願の際には氏神様に参拝するが、安産の神様として名高い神社など
では、遠方から訪れる人もあると云う。
A初宮詣(お宮参り)
神様のご加護によって無事に出産を終えたことの奉告と、子供の健康と成長そし
て今後のご加護を願い、初めて赤ちゃんとともに神社に参拝することを「初宮詣
(お宮参り)」と云う。
地方により多少違いがあるが、一般的には男児が32日目(又は31日目)、女児は
33日目に行う。
初宮詣のときには、赤ちゃんに祝い着(男児は黒の紋付き、女児は友禅の晴れ
着)を着せ、夫の母(姑)が抱くのが伝統的である。
かつては、妻の家が祝い着を調達していたが、最近ではそう云う仕来りにこだわ
らない人も増えてきた。
また、何日目と云ういうのも一つの基準であって、どうしてもこの日にしなけれ
ばならないと云うものではないから、まず赤ちゃんの健康を第一に考えて日取りを
決めるように。
B七五三
七五三を古くは「髪置(かみおき)」「袴着(はかまぎ)」「帯解き(おびと
き)」のお祝いと云っていた。
髪置きは3歳の男女児が今まで剃っていた髪をこの日から伸ばし始める儀式で、
袴着は5歳の男児が初めて袴を着ける儀式、帯解きは7歳の女児が着物の付け紐を取
り去り帯に替える儀式である。
現在では、その年齢にあたる子供に晴れ着を着せて、11月15日に神社に参拝し、
子供たちの健康と成長を感謝するとともに、今後の健康と更なる成長を祈願する儀
礼となった。
なお、本来は数え年で祝うが、最近では満年齢で行う割合も高くなり、また参拝
の日取りも11月15日にこだわらず、その前後の都合のよい日に参拝する傾向が強く
なってきた。
C成人式
成人となったことを社会から公認してもらい、祝福を受ける儀式が「成人式」で
ある。
国民の祝日として、1月の第2月曜日に「成人の日」が定められており、この日は
各地で新成人たちをお祝いする式典が催されたり、神社でも成人祭が行われ、神様
に成人になったことを奉告する姿が見受けられる。
かつては、「元服(げんぷく)」と云う、現在の成人式に該当する儀式があっ
た。11歳から16歳頃に行われ、男子が成人になった証として髪を結い、成人の装束
を着て冠をかぶった。貴人では、このときに幼名を廃して位を授けられたりした。
室町時代中期頃になると、庶民の間でも前髪を剃ったり袖を短くするなど、成人
したことを示すための様々な儀式が行われるようになった。
D厄年
わが国には、古来から人生の節目を「厄年」として忌み慎む習慣がある。
厄年とは、一生のうち何らかの厄難に遭遇する恐れの多い年齢を云い、医学の発
達した現代においても、なお万事に慎まねばならない年齢として人々に意識されて
いる。
時代によって多少の変化はあるが、厄年とする年齢は、一般には数え年で男性は
25歳、42歳、61歳、女性は19歳、33歳、37歳である。
中でも男性の42歳と女性の33歳は「大厄(たいやく)」と云い、その前後の年齢
も「前厄(まえやく)」「後厄(あとやく)」とされ、特に忌むべき年齢と云われ
ている。
厄年は、現代の生活にもあてはまる人生の転換期であり、肉体的にも精神的にも
調子を崩しやすい年齢と云える。
厄祓の方法としては、神社で祈祷を受けるのが一般的である。
E結婚式
男女二人が結ばれたことを神様に感謝するとともに、平和な家庭を築き、子孫の
繁栄を計っていくことを神前に誓う儀式が結婚式である。
現在、神社以外にホテルなどでも特設の神殿を設けて「神前結婚式」を行う所が
多く見られるが、その契機となったのは、明治33年5月10日、当時の皇太子(後の
大正天皇)と九条節子様(後の貞明皇后)の御成婚であった。
その御成婚の儀は、皇室でも初めて宮中の賢所(神前)で行われたことから、東
京大神宮ではこの慶事を記念し、一般の人々に向けた結婚式を行った。
これが世間の注目を集めて各地へ普及していき、今日のように盛況を呈するよう
になったのである。
神前結婚式が普及する以前の結婚式と云うのは、各家の床の間のある座敷に親族
縁者を招き、神名を記した掛け軸などを前にして行われていた。
F 年祝い
長寿を祝う儀式を「年祝い(算賀)」といい、広い意味で解釈した場合は、幼児
期から始まる人生儀礼も含まれるが、通常は還暦以後のお祝いを指す。干支は60年
で一巡して初めに戻る、つまり暦が元に還るので、これが還暦と云う呼称の由来に
もなっている。
この他にも古稀(70歳)、喜寿(77歳)、傘寿(80歳)、米寿(88歳)、卒寿
(90歳)、白寿(99歳)などがあり、呼称にはそれぞれ次のような由来がある。
まず、古稀は中国の詩人である杜甫の詩の一節「人生七十古来稀なり」から採
り、喜寿は喜の字を草書体に崩した字からつけられ、傘寿は傘の略字である字を分
けると八十と読め、また、米寿は米の字を分けると八十八になり、卒寿は卒の略字
である卆を分けると九十と読め、そして白寿は百から一を取ると白になるところか
ら、白は九十九に通じると云う訳である。
これらのお祝いの年には、神社に参拝して無事に人生を送れたことへの感謝と喜
びを神様に奉告し、家族そろってお祝いするとよい。
「我は想う」
人生儀礼とは、節目節目のときの裏切りにおいて、そのことを祝ったり、神社に
参拝したりすることで、当事者も社会も、そのことを認知し合い、爾後の健全なる
状態を持続させてくれる大切な行事と云えよう。
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